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BioMar越工場がアジア拠点で初のASC飼料認証、水産調達の証明は餌から始まる

飼料メーカーのBioMarが、ベトナム・ヴィンロン省(旧ベンチェ省)で操業する合弁会社BioMar Viet-Ucで、ASC(水産養殖管理協議会)の飼料認証(ASC Feed)を取得したと2026年7月22日に発表した。BioMarにとってアジアの生産拠点でこの認証を得たのは初めてで、対象はエビ養殖・魚類養殖向けの飼料になる。餌という川上で国際認証が動いたことは、対岸で認証エビ・魚を仕入れる日本の水産バイヤーや食品メーカーにとって、調達で証明を追える範囲が川上へ一段伸びたことを意味する。なぜ最終製品ではなく飼料の認証が輸出競争力に効くのか、その仕組みを掘り下げる。

目次

ヴィンロンのBioMar Viet-Ucが、BioMarのアジア拠点で初めてASC飼料基準を満たした

BioMarはデンマークに本社を置く養殖飼料の大手で、2021年にベトナムのViet-Ucグループと合弁を組み、メコンデルタのヴィンロン省(合併前はベンチェ省)アンヒエップ工業団地の工場を運営してきた。今回のASC飼料認証は、この工場が環境・労働・調達の面でASCの飼料基準を満たしたことを第三者が確認したという意味になる。BioMarのASC認証済み生産ネットワークは、これで欧州・中南米・オセアニアに続いてアジアへ広がった。

BioMar Viet-Ucのマネージングディレクター、Duong Tu氏は「この認証はBioMar、BioMar Viet-Uc、そしてアジア各地の顧客にとって重要な節目だ」とコメントし、ASC認証を目指す養殖農家を支える力が強まると位置づけた。工場を新しく建てた話ではなく、既にある工場の中身を国際基準に照らして証明した点に、このニュースの意味がある。

ASCエビ・魚を名乗るには、餌までさかのぼる証明が要る

養殖水産物のASC認証は、養殖場だけを見て与えられるものではない。池や生簀に入る飼料まで含めて、原料がどこから来てどう作られたかを追えることが問われる。ASCの飼料基準(ASC Feed Standard)は、大きく次の四つの領域で要件を敷いている。

評価領域 見られる中身
環境への責任 魚粉・大豆など原料由来の環境負荷の管理
労働・社会 強制労働・児童労働の排除、労働者の権利
衛生・安全 製造工程の衛生管理と労働安全
原料の責任ある調達 魚粉・植物原料のトレーサビリティ確保

ここが飼料認証の勘所になる。養殖農家がいくら池の管理を整えても、与えている餌の原料が追えなければ、最終製品のASC認証は成立しにくい。飼料工場がこの証明を先に済ませておくと、その飼料を使う農家は認証取得の一区間を肩代わりしてもらえる。コナベイのエビ種苗Balance Proが川上の品質改良で対日供給を左右するのと同じ構図が、種苗から一歩ずれた「餌」でも起きた。川上のインプット(種苗・飼料)の質の証明が、下流の輸出競争力を押し上げる連鎖である。

日本のバイヤーがASC水産を選ぶとき、飼料工場の認証が効いてくる

日本の量販店や外食チェーンは、サステナビリティ調達方針のもとでASC認証のエビ・白身魚を求める場面が増えている。バイヤーが産地に「ASC認証で」と発注したとき、産地側が詰まりやすいのが飼料の証明部分だ。地元の飼料に認証の裏付けがなければ、農家は認証飼料を遠くから調達するか、認証取得そのものを諦めることになる。

ヴィンロンの工場がASC飼料を供給できるようになったことで、メコンデルタのエビ・魚の生産者がASC認証へ進む際のボトルネックが一つ外れる。結果として、日本のバイヤーが「認証済みで、かつ産地が近い飼料で育った」水産物を選べる幅が広がる。ある水産商社の調達担当は、認証エビの引き合いに対して「餌の証明が取れないと商談が最後で崩れる」と漏らしていた。飼料工場の認証は、その最後の一手を減らす働きをする。

ただし、飼料工場が認証を取っただけでは調達の証明は閉じない。バイヤーが産地の話を詰めるときに確認しておきたいのは、次のような点だ。

  • その養殖場が実際にBioMar Viet-Ucの認証対象飼料を使っているか(工場が認証済みでも、別の飼料を混ぜれば証明はつながらない)
  • 認証の対象範囲と有効期限(エビ向けか魚向けか、どの製品か、いつまで有効か)
  • 養殖場自体のASC認証と、加工・流通のCoC(Chain of Custody)認証まで揃っているか

この動きは、原料輸出から加工・付加価値へ舵を切ろうとするベトナム水産の流れとも噛み合う。カマウでEUとNGOが4年近くかけて『低排出エビ』を調達の証明に変えようとしている取り組みと同じく、今回のASC飼料認証も「作れる」から「証明できる」への移行を後押しする。日本の調達側にとっては、証明の連鎖が産地の川上まで届いたかどうかが、選別の基準になっていく。

De Heusの新工場とは別の話、質を担保する「認証取得」という一手

ヴィンロン省では、飼料をめぐる動きが続いている。オランダ系のDe Heusは同省で沖合養殖向けの飼料工場を新設し、養殖の受け皿を先回りして整えた。ただ、De Heusの話が「工場を建てて供給能力を作った」ことなら、今回のBioMar Viet-Ucは「既にある供給に国際認証という質の裏付けを付けた」ことで、狙う先が違う。

観点 De Heus ヴィンロン工場 BioMar Viet-Uc
主眼 飼料の供給能力の新設 既存供給へのASC認証付与
効く相手 沖合養殖の量的拡大 ASC認証を目指す農家の質の担保
調達への意味 調達先の選択肢が増える 調達の証明がさかのぼれる

供給能力と認証は、どちらか一方では調達の安心につながらない。De Heusが餌を先に建てた沖合養殖の構図と、今回の認証取得は補い合う関係にある。工場が増えても証明が追いつかなければ日本の棚には乗りにくく、証明があっても供給が細ければ量がまとまらない。両方が揃い始めた地域の水産は、対日調達の候補として重みが増す。

認証飼料は、農家のASC取得で詰まりやすい書類を肩代わりする

認証飼料の効き目は、農家の手続きの負担を軽くするところに出る。ASC認証を取ろうとする養殖農家にとって、飼料の由来証明は自力で揃えにくい書類の一つだ。認証済みの飼料を使えば、その部分の証明を飼料メーカー側の監査に委ねられる。Duong Tu氏が言う「農家の認証取得を支える力」は、この負担の肩代わりを指している。

もっとも、飼料が認証済みでも、農家自身の養殖場が水質・薬剤・排水などでASCの基準を満たさなければ最終認証は下りない。飼料認証は必要条件の一つであって、それだけで農家がASCを名乗れるわけではない。現場の養殖関係者からは「餌の証明が地元で取れるのは大きいが、池の管理は結局自分たちの仕事」という冷静な声も聞かれる。日本の調達側が産地を評価するときは、飼料の認証と養殖場の認証を切り分けて確認しておくと、商談後半での取りこぼしを避けやすい。

メコンデルタは、エビと白身魚の両方で日本向け供給の一角を担ってきた地域だ。その川上に位置する飼料工場が国際認証を取ったことは、産地全体の「証明できる度合い」をじわりと引き上げる。日本のバイヤーにとっては、価格や量だけでなく、餌までさかのぼれる産地かどうかを問う材料が一つ増えたことになる。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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