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ホーチミン市の漁船95%が電子漁獲日誌へ、日本のいか調達はどう変わる

ベトナムのホーチミン市で、全長12m以上の漁船2,803隻のうち2,665隻が電子漁獲日誌(eCDT)を端末に入れ終えた。9月24日時点で導入率95%。市の農業環境局が公表し、9月25日にNong nghiep va Moi truong紙が報じた。紙の日誌を置き換え、船ごと・航海ごとの漁獲量を管理システムへ直接上げる段取りが一段進んだ。日本の水産仕入れ担当に関わるのは、いか・さば・さんま・まいわしの輸入に旗国政府の証明書が要り、その土台になる記録がこのeCDTだからだ。

目次

2,803隻のうち2,665隻、導入率は船の大きさで割れた

導入は一律に進んだわけではない。市の内訳では全長15m以上24m未満が1,932隻中1,875隻で97%と最も高く、12m以上15m未満は92%、24m以上は87%で止まる。最も高いのは中間の層で、小さい側と大きい側の両方が下がる並びだ。

15m以上24m未満が97%、24m以上は87%で止まっている

船の全長 対象隻数 導入済 導入率
12m以上(合計) 2,803隻 2,665隻 95%
15m以上24m未満 1,932隻 1,875隻 97%
12m以上15m未満 公表なし 公表なし 92%
24m以上 公表なし 公表なし 87%

隻数の内訳が出ているのは15m以上24m未満だけで、残る2区分は率しか公表されていない。ここを推計で埋めて「何隻」と書くことはできない。もう一つ押さえたいのは母数だ。市の漁船は9月15日時点で4,427隻。12m以上の対象は全体の6割強で、残りは95%の外側にいる。基準日が9日ずれるため厳密な引き算にはならないが、1,600隻前後が対象外という規模感だ。

通信費は2026年いっぱい無料、2027年から市の予算へ

費用を漁業者に負わせない設計も動いている。サービス提供事業者が2026年末まで電子日誌を無償で提供し、2027年初めからは市の予算で維持費を補助する方針で、報道はこの政策が合意形成につながり参加を促しているとする。農業環境局のファム・ティ・ナー副局長は、各機関が日々の利用状況を追い、漁業者や漁港から上がった不具合をサービス提供者と詰めたことが数字につながったと説明する。違反のおそれが高い船には、船主の自宅や漁業者の集落まで出向いて説得しているという。

EUの勧告は5分野、越は10月初旬に報告を送る段取り

この重点月間は、欧州委員会(EC)の第5回査察で出た勧告への対応だ。国防省作戦局のブイ・イエン・ティン副局長が9月上旬にホーチミン市で述べたところでは、勧告は法的根拠、船団の管理、船団の監視、水産物のトレーサビリティ、IUU違反の処理の5分野にまたがる。ベトナムは9月末までに総括報告をまとめ10月初旬にECへ送る段取りで、その結果がECが次の段取りを検討する材料になる。

「黄色いカード」は2017年から解けていない

ECがベトナムの漁業に警告としての黄色いカードを出したのは2017年で、EU向け輸出への影響は残ったままだ。査察の実施時期は、同じ媒体の記事のあいだで「3月9日〜18日」と「5月10日〜19日」の二つが出ており、どちらが第5回の日程かを確定できなかった。日付を伴う書き方は避ける。

6m以上の全入出港をeCDTに載せる目標は別に立っている

今回の95%は「12m以上の船に日誌アプリが入った」という意味で、運用の到達点ではない。市が8月に公表した重点月間の計画は、全長6m以上の漁船の入出港を100%eCDTに記録する目標を置く。ティン副局長も、当局が毎日船を確認しているのに一部のデータがシステムに上がりきらない状態を挙げ、eCDTがあってはじめて管理が成り立つと述べた。導入率と運用率は別に読む必要がある。

eCDTに有効なデータが無い船の原料には確認書を出さない

調達側にいちばん効くのは、同じ計画の次の一行だ。市は、eCDTにデータが無い船、有効でないデータしかない船の原料には、漁獲原料の確認書を発行しない方針を明記した。港では実際に陸揚げした数量をeCDT上で申告させ、船・漁港・行政機関・買い付けと加工と輸出の企業まで通した突き合わせを求める。加工業者に「確認書は出ますか」と聞いたときの答えが、どの船から買ったかで変わる構えだ。

日本のいか輸入には旗国政府の証明書が要る

日本側の要求は法令で固まっている。特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律(水産流通適正化法)は、特定第二種水産動植物の輸入にあたり、適法に採捕されたことを証する外国政府機関の証明書などの添付を義務づける。施行規則が挙げる品目はさば、さんま、まいわし、いかの4つ。VASEPが輸出品目群として集計する「いか・たこ」のうち、いかはこの4品目に入る。ベトナム側の確認・証明が詰まれば日本側の輸入手続きも止まる。

証明書には採捕漁船の情報を書く欄がある

確認する点 内容 根拠
輸入時の対象品目 さば・さんま・まいわし・いか 水産流通適正化法施行規則 第3条
添付書類 採捕漁船の旗国の政府機関が発行した証明書 同法 第31条/施行規則 第49条
記載事項 発行政府機関/採捕漁船/品目/資源管理措置/輸出者/輸送/輸入者 施行規則 第49条
違反した場合 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 同法 第35条
ベトナム側の前段 eCDTに有効なデータが無い船の原料には確認書を出さない ホーチミン市の重点月間計画

記載事項に採捕漁船の情報が入る点が、今回のニュースと直接つながる。船を特定できない原料は書類のどこかで引っかかる。裏返せば、船単位の記録がシステムに載る産地は、同じ品目でも書類の通りやすさで差が出る。関税は協定の選び方で決まるが、書類は別のゲートとして残る。協定ごとの税率差は発効中の貿易協定は世界で384本、越産水産の対日税率は協定ごとに違うで整理した。

8月のEU向けいか・たこは32.4%減、VASEPが挙げたのは書類の要件

ベトナム水産物輸出加工協会(VASEP)の集計では、2026年8月のEU向け輸出は6.2%減。えび23.5%減、まぐろ15.6%減、いか・たこ32.4%減という内訳だ。VASEPは、漁獲由来の品目が漁獲原料の確認書、漁獲証明書、EUのCATCHとの接続要件で引き続き手間取っていると書く。減少の理由を書類だけに帰してはいないが、書類が実務の詰まりとして残ることは示している。

越水産の8ヶ月は80億ドル超、伸びを作ったのは養殖側

同じ集計で、8月単月の水産物輸出は11.4億ドルで前年同月比6.4%増、1〜8月の累計は80億ドル超で11.9%増。えびが8月に4億7,850万ドル・累計約32.8億ドル、パンガシウスが8月に2億490万ドル・累計15.2億ドル。押し上げているのは養殖の2品目で、漁獲側は伸びが鈍い。VASEPは漁獲由来の品目について、IUUとトレーサビリティの書類を原料の買い付け段階から点検するよう促している。

貝類やティラピアはそもそも4品目に入らない

ここは仕入れ設計に落としやすい分かれ目だ。輸入時に旗国政府の証明書が要るのはさば・さんま・まいわし・いかの4品目で、貝類やティラピアはこの枠に入らない。書類の手間という一点では、養殖で回る品目を当てるほうが軽い。ベトナムの養殖貝の実情はベトナムのバイ類養殖が年6,200トン、日本の貝仕入れに使えるかで見た。養殖にも養殖の課題はあり、書類だけで切り替える話ではない。

日本のバイヤーが今の段階で仕入れ先に聞けること

どの漁港・どの上陸地点で水揚げしているか

市が衛星漁港すなわち上陸地点の候補として挙げている地域には、カンジオ(Can Gio)、タンアン(Thanh An)、ビンカン(Binh Khanh)、ロンソン(Long Son)が入る。9月上旬の国防省の視察はカットロー漁港(Cat Lo、フオックタン坊)で行われた。漁船4,427隻という規模は、都市名から思い浮かべる範囲より広い沿岸域をまとめた数字と読める。取引先が「ホーチミン市の船」と言ったとき、どの港・どの上陸地点かまで聞かないと確認書の出方が読めない。

確認書が止まったときの振り替え先を決めておく

市の計画では、航行監視装置(VMS)が動いていない、封印が外れている、シリアル番号が合わない、介入の痕跡がある船は出港させない。VMSが6時間超10日未満切れた案件は農業環境局が扱い、立件から60日以内の処理完了を目標にしている。1隻の不備が数十日単位で書類を止めうる。日本側は同じ規格の代替供給元を2社押さえる、養殖品への振り替え条件を契約に書くといった備えが現実的だ。需要側も一様ではなく、VASEPは2026年7月の日本の家計の魚介支出が約2%増にとどまる一方、価格は9%、生鮮は12.4%上がったと伝えている。棚の動きは魚介類が9%高、家庭の魚介支出は実質6%減で棚は品目で割れたが細かい。

今週できる一手を1つに絞るなら、ベトナムから天然のいかを買う取引先に、原料を出す漁船の登録番号と水揚げ漁港の一覧を出してもらうことだ。番号が出るかどうかで、10月以降に書類が締まったとき耐えられる相手かが見える。出てこないなら、担当が船主と直接つながっていないか、仲買を複数経由して船まで遡れていないかで、どちらも確認書が止まると時間がかかる。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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