財務省の貿易統計によると、2026年1〜7月に日本から輸出されたかまぼこなどのねり製品は6,186トンだった。前年同期の5,650トンから9.5%増えている。ベトナム水産物輸出加工協会(VASEP)が9月25日に、みなと新聞が財務省データを引いて報じた内容として伝えた「9%増」「対ベトナムは2.2倍」は、統計品目番号1604.20-190の数量ベースの数字と一致した。
ただし、そのベトナム向けの絶対量は21.1トン、金額で3,647万円である。世界計に対する数量の構成比は0.34%にとどまる。同じ7ヶ月間に日本はベトナムから1,844トンのいとよりすり身を買っている。ベトナムから水産原料を仕入れる立場でこのニュースを読むなら、完成品が細く流れ始めた話よりも、原料の流れが87倍太いという事実のほうが商談で使える。輸出と輸入の両側を財務省の数字で並べる。
6,186トンは完成品のかまぼこで、冷凍すり身は入っていない
1604.20-190が指しているのは魚肉ソーセージ以外のねり製品
輸出統計品目表の第16類を開くと、1604.20は「魚肉ソーセージ、かまぼこその他のねり製品」(-110が魚肉ソーセージ、-190がその他)と「その他のもの」(-900)に分かれている。今回の6,186トンは-190、つまり魚肉ソーセージを除いた「その他のもの」にあたる。品目表はかまぼこ以外の品名を挙げていないが、実務ではちくわや揚げかまぼこ類がここに入る。VASEPの記事も、原料用の冷凍すり身ブロックはこの統計に含まれないと明記している。
ここを混ぜると調達の話が逆さになる。冷凍すり身は原料で第3類(0304)、ねり製品は完成品で第16類に入る。日本から出ていく6,186トンは日本の練り物工場が使う原料の動きではなく、工場が作った製品が海外に売れた量である。
魚肉ソーセージは487トンのうち440トンが香港向け
同じ期間の1604.20-110(魚肉ソーセージ)は487トン・3.70億円で、440トンが香港向けだった。1〜7月累計ではベトナム向けの計上が2025年も2026年もない。ねり製品の枠でベトナムへ動いているのは、かまぼこ側の1本だけである。なお-900(その他のもの)では対ベトナムが38.9トン・1.37億円あり、こちらのほうが大きい。なお貿易統計は20万円以下の少額貨物を計上しないため、サンプル出荷や小口の実験的な輸出は最初から数字に出てこない。
東南アジアで伸びが目立つのはタイとベトナム、量は米国と香港
米国2,583トンが最大、カンボジアは146倍に跳ねた
| 仕向け先 | 2025年1〜7月 | 2026年1〜7月 | 数量の増減 |
|---|---|---|---|
| 世界計 | 5,650トン/61.1億円 | 6,186トン/69.1億円 | +9.5% |
| 米国 | 2,364トン | 2,583トン | +9.3% |
| 香港 | 1,242トン | 1,112トン | -10.5% |
| 台湾 | 464トン | 803トン | +73.3% |
| ノルウェー | 150トン | 264トン | +76.1% |
| 韓国 | 380トン | 252トン | -33.9% |
| タイ | 24.7トン | 98.3トン | 約4.0倍 |
| ベトナム | 9.7トン/1,993万円 | 21.1トン/3,647万円 | 約2.2倍 |
数量は統計品目番号1604.20-190、金額は通関申告ベース。財務省貿易統計の品別国別表から抽出して算出した。
韓国と香港は前年を割っている
韓国は380トンから252トンへ33.9%減り、香港も1,242トンから1,112トンへ10.5%減った。増えた市場と減った市場が同時に動いた結果が、世界計9.5%増である。増加率が大きいタイ(約4.0倍・98.3トン)とベトナム(約2.2倍・21.1トン)は、いずれも100トン未満という小さな器のなかの倍率にすぎない。倍率だけを抜くと、桁を1つ2つ読み違える。
金額で見ると世界計は61.1億円から69.1億円へ13.1%増で、数量の9.5%増を上回る。平均単価は1,081円/kgから1,117円/kgへ上がった。数量で語るか金額で語るかで「9%」と「13%」が入れ替わるので、社内資料に落とすときは単位を書き分けておきたい。
ベトナム向けの単価は1,732円/kgで、世界平均の1.5倍になる
世界平均より5割以上高い単価はどんな荷なのか
ベトナム向け21.1トン・3,647万円を割り戻すと1,732円/kgになる。世界平均1,117円/kgの1.55倍で、米国向け1,136円/kg、香港向け1,163円/kgよりも高い。なおVASEP原文が米国を「約10%増」と書いた点は、統計では+9.3%だった。輸出額はFOBなので運賃は乗らないが、小分けや個包装、冷蔵を伴う荷は単価が上がりやすい。ただし貿易統計は荷姿も買い手も持っていない。「在越の日系小売や日本食店に入っている」は推測の域を出ないので、ここは言い切らずに置く。
ベトナム国内で輸入水産物の販売が伸びている動き自体は、カナダ産の高級水産が越で2年40%増という別の数字でも見えている。21トンという大きさは、その流れのなかに置くと理解しやすい。
前年の2,062円/kgからは16%下がった
2025年1〜7月のベトナム向けは9.7トン・1,993万円で、単価は2,062円/kgだった。2026年は数量が約2.2倍になった一方、単価は16.0%下がっている。だから金額の伸びは1.83倍にとどまる。「2倍超」と書くときに数量か金額かを添えないと、受け取る側の絵が変わってしまう。
ベトナム向けの通年実績は2025年が22.3トン・4,304万円だった。2026年は7ヶ月で21.1トンに達しており、通年で前年を超える位置にはいる。ただし母数が20トン台では、1コンテナの出荷時期がずれるだけで倍率が動く。
同じ7ヶ月に日本はベトナムから1,844トンのすり身を買っている
いとよりすり身はインド・ベトナム・タイの三つ巴になった
輸入統計品目番号0304.99-993は「いとより(すり身のものに限る。)」で、東南アジアや南アジア産の白身すり身が入る枠である。2026年1〜7月の輸入計は7,798トン・37.2億円。国別ではインドが3,098トンで首位、ベトナムが1,844トン、タイが1,742トンで続いた。前年同期はタイが3,233トンで首位だったので、上位の並びが1年で入れ替わっている。
| いとよりすり身の輸入元 | 2025年1〜7月 | 2026年1〜7月 | 数量の増減 |
|---|---|---|---|
| 輸入計 | 7,482トン/32.1億円 | 7,798トン/37.2億円 | +4.2% |
| インド | 1,693トン | 3,098トン | +83.0% |
| ベトナム | 1,363トン/5.20億円 | 1,844トン/8.18億円 | +35.3% |
| タイ | 3,233トン | 1,742トン | -46.1% |
| パキスタン | 835トン | 912トン | +9.2% |
| インドネシア | 225トン | 102トン | -54.6% |
ベトナムは1,363トンから1,844トンへ35.3%増、金額は5.20億円から8.18億円へ57.4%増えた。単価は381円/kgから444円/kgへ16.3%上がっている。量は取れるが単価は上がる年、というのが数字の形である。
すけそうだらすり身は16.5%減で、単価は7.7%上がった
原料の主軸であるすけそうだらのすり身(0304.94-010)は、1〜7月で47,676トン・204.5億円だった。前年同期の57,065トンから16.5%減り、単価は398円/kgから429円/kgへ7.7%上がっている。輸入元はロシアと米国の2カ国である。
2枚を重ねると、いとよりすり身が4.2%増でほぼ横ばい、すけそうだらが16.5%減という絵になる。この2コードで見るかぎり原料の総量が細るなかで、東南アジア枠の順位が動いた。白身魚の需給の窮屈さは、越産パンガシウスが日本の外食調達に開いた隙間と同じ方向を指している。
ベトナムから原料を買う担当者が商談前に押さえておく数字
品目番号を間違えると原料と完成品が入れ替わる
| 確認する項目 | 具体的な引き方 | 取り違えやすい点 |
|---|---|---|
| 原料のすり身 | 輸入・0304.99-993(いとより)/0304.94-010(すけそうだら) | 魚種で枠が違う。まとめて「すり身」と言わない |
| 完成品のねり製品 | 輸出・1604.20-190/魚肉ソーセージは1604.20-110 | -900は別のもの。合算すると数字が合わない |
| 期間の取り方 | 品別国別表で単一年月を指定し、累計欄を読む | 累計は1月からの積み上げ。当月欄と混ぜない |
| 価格の段階 | 輸出はFOB(本船渡し)、輸入はCIF(保険料・運賃込み) | 輸入単価444円/kgは運賃と保険を含む。ベトナム側の工場出し値ではない |
とくに期間は事故が起きやすい。品別国別表には当月欄と累計欄が並んでおり、累計は1月からの積み上げである。単月の数字と累計を混ぜると、そのまま数倍の誤差になる。
日本のねり製品をベトナムで売るとしたら量はどれくらいか
逆方向、つまり日本のねり製品をベトナムで売る話として見ると、日本からの輸入市場そのものが7ヶ月で21トンである。1社が取りに行ける規模ではない一方、まったく棚がないわけでもない。現地で加工まで持っていく選択肢を検討するなら、ベトナム側の水産加工キャパシティが動いている局面も見ておきたい(米ツナ缶大手の加州工場閉鎖と越の水産加工)。
次の一手として現実的なのは、いまの仕入れ先に対して、0304.99-993の枠でベトナム全体の単価が1年で16.3%上がった事実を示し、2027年分の建値交渉を年内に始めることだ。この444円/kgはCIFなので、工場出し値に直すには運賃と保険を引く必要がある。輸入計7,798トンのうちベトナムが1,844トン、構成比23.7%という位置も、代替先の余地を測る材料になる。
この記事で確認した統計と原記事は次のとおり。