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越のエビ稲19万ha、塩水と真水で年を分ける作付けと調達の時期

ベトナムの水産専門サイト tepbac.com が2026年9月21日、「同時にやる」から「適した時期にやる」へ組み替える技術記事を出した。エビと稲を同じ田で回す「tôm – lúa」を1年を塩水と真水で分ける例として置き、そこから改良粗放の池へ放養時期をずらす提案に広げる構成だ。筆者は Phan Giang、養殖欄の掲載。土台に置く面積は全国で19万1,073ha。ベトナムからエビを引く日本の担当者には、この19万haがどういう土地なのかが月別の数量と品種の見通しに直結する。

目次

エビ稲は全国19万1,073ha、汽水エビ養殖面積の約26%

最初の節に置くのは面積だ。水産局(Cục Thủy sản)のデータをカントー大学の研究が引用した数字として、全国のエビ稲面積は約19万1,073ha、汽水エビ養殖面積の約26%にあたるとしている。26%から筆者が逆算すると汽水エビ養殖の全体は約73万5千haになる。

この19万haは水産局データの二次引用

原文の書き方は「水産局のデータを、カントー大学のある研究が引用した」というだけで、研究名も発表年も、何年時点の面積かも示されていない。省別には2023年と明記があるのに全国値だけ年次が付かない。数量の前提に使うなら年次を自分で確かめたい。

2省で18万ha、「アンザン」は今の省域を指す

省別では、アンザン省が2023年に10万6千ha超で7万トン近いエビ、カマウ省が2023年に約7万4,491ha。筆者が足すと18万491haで全国値の約94%が2省に集まる。省名には罠がある。同省の公式ポータルは所在地を「ラックザー(Rạch Giá)坊」と記し、機関にフーコック経済区管理委員会を並べる。今のアンザン省は沿岸部を含む省域で、旧来の省境で地図を引くと産地を内陸側に取り違える。

項目 数値 出どころ
全国のエビ稲面積と比率 約19万1,073ha/汽水エビ養殖面積の約26% 水産局データ・年次記載なし
アンザン省の面積と生産量 10万6千ha超/7万トン近く(2023年) 原文
カマウ省の面積 約7万4,491ha(2023年) 原文
アンザン省の1haあたりエビ 0.66トン前後 筆者の筆算(原文が幅を持つため実際はやや下)

同じ田で塩水と真水を年で入れ替える

記事が言う輪作は区画を分ける話でも品目を減らす話でもなく、同じ面積の機能を季節で切り替える。雨季は塩分が下がって稲に向き、乾季に塩水が戻って田を池としてエビに回す。稲は低い塩分しか耐えず、ブラックタイガー(tôm sú)は適した汽水環境を必要とする。同居させれば塩分が高いと稲の収量が落ち、低いとエビに負荷がかかる。

「1稲作+1〜2エビ作」は固定の公式ではない

記事は作数を決め打ちせず、降雨量、塩水遡上の時期、給排水の能力、地域条件で変わると書く。決めるべきは作数ではなく、どの期間を稲に、どの期間をエビに割り当てるかだ。調達側から見れば「産地ごとに暦が違う」という話になる。カマウ省トイビン県の2018年の現地報道では8月下旬が植え付けの初日で、取材を受けた農家は7月中旬に苗を播いていた。

稲の時期は池の休みになるが、無菌にはならない

エビ作の後は池底に有機物、残餌、排泄物が溜まる。真水を入れて塩を抜き環境条件を入れ替えると、前のエビ作の生態系に断続が生まれる。ただし原文は続けて、この期間で池が「無菌」になることも病原体が完全に消えることもないと書いている。できるのは細菌群や中間宿主、有機物が年中積み上がるのを抑えることだ。稲わらが酸素の少ない条件で過剰に分解すれば池底は悪化するので、輪作は放任ではないと念を押している。

一斉に放つのをやめて順番に入れる提案

ここで記事は改良粗放(quảng canh cải tiến)の vuông に移る。1つの vuông にブラックタイガー、バナメイ(tôm thẻ)、カニ(cua)、オニテナガエビ、魚の一部が同時に入ることがある。記事は混養そのものを否定せず、多くの品目を同じ時点で放すことを問題にしている。

脱皮直後の弱さと、需要の同時ピーク

甲殻類は脱皮直後に殻が柔らかく防御力が落ちる。密度が高く、サイズ差が大きく、隠れ場所が足りなければ競合が強まる。すべてが同じ酸素と天然餌と環境収容力を分け合うので、一斉に放して一斉に増体すれば系全体の需要が同じ時点で頂点に達する。

単作化ではなく「順番のある多品目」

提案は放養の時期を互いにずらすことだ。季節のはじめの条件に合う種を先に入れ、その群が小さい時期を越えて抵抗力がついてから次を足す。原文はこれを「順番のある多品目(đa canh có thứ tự)」と呼び、vuông を単作に変えるものではないと明記している。生物量を段階的に入れるので、成長速度や生残率を見てから種苗を追加できる。

効果は機構の説明で、比較試験の数字ではない

原文は、この組み方で生残率や収量がどれだけ改善したかという実測値を示していない。書かれているのは機構と運用上の目的で、比較試験の結果ではない。省や研究機関の通達でもなく業界メディアの技術論だ。エビ稲の輪作は既に19万haで回っている形で、新しいのは放養順序の提案の部分だ。

「暦ではなく水を見る」が調達の見通しを揺らす

記事の後半は放養の判断基準に向かう。暦は重要だが日付は参考値で、決めるのは実際の環境条件だという整理だ。塩分、水温、酸素、pH、水の動きが今どの種に向くかを示し、雨季が早く来たり長引いたりすれば放養の窓が動く。

100mmの雨は1haの池に約1,000m³の真水

同じサイトが3日後の9月24日に出した別稿が、この「水を見る」を数字にしている。気象区分では24時間で51〜100mmが大雨、100mm超が非常に大雨。別稿によれば、100mmの雨は1haの池に約1,000m³の真水を入れ、水深1.2mなら容量の8%超。塩分20pptの池に完全に混ざれば理論上は約18.5pptまで落ち、水深0.8mなら200mmの雨で20pptが約16pptになる。筆者が再計算すると1ha×1.2m=1万2,000m³、1,000m³は8.3%、混合後18.46pptで別稿と合う。

落ちた値より、落ちる速さ

別稿が強調するのは絶対値より変化の速さだ。コウライエビ(tôm he Trung Quốc)の研究として、1時間で22pptから14pptへ急落させると一部の免疫指標が下がり、潜在感染個体のWSSV量が増えたという結果を引いている。実務では約3〜4ppt/時が警戒の目安だが、全種・全条件へ硬直的には当てられないと付けている。

19万haは日本のエビ調達に何を効かせるか

ここから先は原文に無い調達側の解釈だ。原文はエビ稲の生産技術を扱い、残留農薬、認証、輸出には踏み込んでいない。

稲の期間はエビ池が休んでいる

19万haは1年を真水と塩水で割って使う土地で、稲の期間その区画のエビ池は休んでいる。月別の数量を均等に置いた見積りは前提から崩れる。原文は作数も放養の窓も降雨と塩水遡上で動くと書いているので、産地の月別見通しは固定値ではなく雨の暦に条件づけられた数字として読む。バナメイの集約池を通年で回す供給と同じ数量感で並べない。

1haあたり0.66トン、集約池とは桁が違う薄さ

アンザン省の2023年の数字を割ると1haあたり0.66トン前後で、集約養殖とは桁が違う薄く広い供給基盤になる。トレーサビリティと認証は1社ではなく集団の問題になるので、組合単位のASC認証が調達の通行証として効いてくる。カマウでは養殖組合がASCを取得しており(越エビ養殖組合がASC認証取得、対日EU調達で希少な通行証に)、ダムゾイでは721haのブラックタイガーがASCで動いている(ダムゾイのASCブラックタイガー721ha、日本の水産調達に効くか)。認証の範囲は件数ではなくha数で確認したい。

規格は1回の水揚げで何通りに割れるかを聞く

順番に放つ組み方が入れば、同じ vuông に年齢の違う群が同時にいる。買い手の側では前提が変わる。「このロットのサイズは」と聞くより「1回の水揚げで規格がいくつに割れるか」と聞いたほうが噛み合う。カニやオニテナガエビも同じ vuông から出るので、エビ以外へ手を伸ばすときも同じ暦の制約に当たる(越水産、8ヶ月で80億ドル。カニ34%・貝類約31%増がエビ頼みを崩す)。

見積りの前に、産地の作付けカレンダーを1枚もらう

次にとれる行動は1つ。取引先や候補の産地に、その区画の1年の作付けカレンダーを出してもらう。交渉に入る前にこれを持てば、月別の見通しがなぜ動くのかを同じ前提で話せる。

取引先に聞く5項目

聞くこと 何が分かるか
稲の期間とエビの期間を月で エビが出ない月がどこか
年のエビ作数と、その年の決め方 作数が固定か、雨で動くか
放養は一斉か、時期をずらしているか 同じ池に何世代いるか
塩分と溶存酸素の記録の有無と頻度 放養の窓を数字で管理しているか
認証の対象範囲(ha数・区画・組合単位) 通行証がどこまで効くか

記録がない産地には雨季と乾季で2本の見通しを出してもらう

記録が出てこない産地を外す必要はない。原文は、環境測定と電子日誌の価値が異常時の警報より「いつ何をするかの判断」にあると書く。月別の数量を1本で確約させるより、雨季と乾季で2本の見通しを出してもらうほうが実際の水揚げに近い。

参照元

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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