カントー市タンホア社が、地元の名産マンゴー「カットホアロック」の産地を約30ヘクタールの標準化ゾーンにまとめ、栽培から出荷までの基準を一本に揃える取り組みを始めた。2026年9月9日付のベトナム農業環境紙が伝えた計画で、狙いは仲買人任せの不安定な取引から、加工・輸出企業と生産者団体が直接契約する仕組みへの転換にある。日本の輸入・加工業者にとっては、生鮮でもドライやピューレでも品質と数量を先に約束できる産地を早い段階で押さえられるかどうかを占う材料になる。
3,074haの果樹地帯で、マンゴーだけが伸び悩む理由
タンホア社(xã Tân Hòa)はメコンデルタのカントー市に属する。地元行政によると果樹の作付けは合わせて3,074ヘクタールに達し、そのうちカットホアロック種のマンゴーが約300ヘクタールを占める。栽培に携わる農家は849戸、368ヘクタールの畑で29の栽培ゾーンが登録済みだ。樹齢は10〜25年が中心で、一部は30年を超える古木も残る。
面積だけを見れば十分な産地に映るが、実態は小口の畑が点在し、出荷の質と量がそろわない。畑ごとに収穫の時期や果実の大きさが違い、多くの農家が仲買人に売り渡すため、価格は相場任せで安定しない。生産コストの上昇、気候変動による開花・着果の乱れ、病害虫の圧力も重なり、産地としての交渉力が育ちにくい構造が続いてきた。
約30haの標準化ゾーンが持ち込む「契約の順番」
今回の計画の核心は、約70戸が参加する約30ヘクタールの標準化ゾーンを起点に、協同組合(HTX)を立ち上げて企業と直接つながることにある。参加農家は統一した栽培工程に従い、営農日誌を記録し、使う資材を管理する。将来的には産地コードの取得を目指し、果実の履歴を追える状態へ持っていく。
もう一つの特徴は、契約の順番を逆にする発想だ。従来のように収穫してから売り先を探すのではなく、企業側に果実のサイズ・熟度・梱包・納期といった基準を先に示させ、その基準に合わせて畑を作る。買い手が求める規格が起点になるため、生産者は作る前に何をどれだけ揃えればよいかが分かる。規格に合わせて買い取る発想は、ダラットのアーティチョークを部位別の規格で買い取る事例とも重なる。
| 項目 | これまでの産地 | 約30haの標準化ゾーン |
|---|---|---|
| 販売相手 | 仲買人が中心 | 企業と生産者団体の直接契約 |
| 品質のばらつき | 畑ごとに大きさ・熟度が不揃い | 統一工程と営農日誌で規格を統一 |
| 価格 | 相場任せで不安定 | 基準を満たせば契約ベースで想定可能 |
| 履歴の追跡 | ほぼ不可 | 産地コード取得を目標に整備 |
日本の仕入れ担当が読み取れる三つのサイン
第一に、これは量が増える話ではなく、約束できる産地を作る話である点だ。ベトナム産マンゴーは作付面積そのものは大きいが、日本の店頭やメーカーが求めるのは、大きさと熟度がそろい、いつ何ケース届くかが読める原料だ。標準化ゾーンはその条件を満たす最初の一区画になり得る。
第二に、契約の起点が買い手側の規格にある点は、OEMやプライベートブランドを設計する立場と相性がよい。ドライマンゴーやピューレは、原料の糖度や果肉歩留まりが仕上がりを左右する。規格を先に決めて畑を動かせる産地は、加工側の歩留まり計算を立てやすい。
第三に、産地コードと営農日誌の整備は、輸出時の検疫や取引先監査で問われる履歴管理の下地になる。生鮮で日本に入れる場合も、加工原料として扱う場合も、履歴が残る産地は交渉の入口で有利になる。実際にカントーでは認証栽培の竜眼が相場の倍の買値を得た例もあり、履歴管理は値づけに効く。
生鮮と加工、二つの受け皿をどう見るか
カットホアロックは果肉がなめらかで繊維が少なく、生食に向く一方、ドライやピューレへの加工適性も高い。弊社Agritureでも京都産の乾燥野菜やドライフルーツを扱ってきたが、乾燥・加工品は生鮮以上に原料の均一さが最終品質へ直結する。大きさや熟度がそろわない原料は、乾燥ムラや歩留まりの低下として跳ね返る。
標準化ゾーンのように規格を先に決められる産地は、生鮮の端境期を埋めるドライ原料の供給元としても検討しやすい。ベトナム産果実は輸出先の入れ替わりが進んでおり、越の果実輸出は輸出先が入れ替わっている。買い手を分散させたい産地と、安定調達先を増やしたい日本側の利害は重なりつつある。
仕入れ側が押さえておきたい論点
仲買人頼みの売り方では、良い果実を作っても値段は相場で決まり、まとまった注文が来ても一戸では応じきれない。この構造的な行き詰まりがあるからこそ、収穫物を束ねて企業と直接向き合う協同組合方式に産地が動く合理性がある。
加工企業にとっては、基準を先に示せば畑がそれに応える仕組みは調達計画を組みやすい。ただし標準化ゾーンが約30ヘクタールにとどまる現段階では、確保できる契約数量の規模はまだ小さく、主力調達先というより試験的な一区画と見るのが妥当だ。
日本の仕入れ側は、産地コードと履歴管理が実際に運用されるかを一シーズン見極めてから量を託すのが現実的で、初年度は小ロットで運用実態を確かめる線で臨むのが堅い。
一シーズン後に確かめたい三点
この産地を候補に加えるなら、次の三点を追いかけたい。第一に、約30ヘクタールの標準化ゾーンが計画通り約70戸で立ち上がり、営農日誌と資材管理が実際に回るか。第二に、企業との直接契約が何件成立し、規格と価格がどこまで固定化されるか。第三に、産地コードの取得が具体的な日程に乗るかだ。
まずはサンプル取り寄せと現地視察のタイミングを、次の収穫期に合わせて仮押さえしておくのが現実的だ。生鮮での引き合いが難しくても、ドライやピューレの原料としてなら、標準化ゾーンの果実は最初の一歩を踏み出しやすい。産地が約束できる状態に育つ過程へ伴走できれば、供給網の中で早い順番を確保できる。
参照元: Nong nghiep va Moi truong「Xoai cat Tan Hoa tim duong nang gia tri」(2026年9月9日)