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キャッサバの丘3haをパッションフルーツ棚に、回収は単価で決まる

ダクラク省エアリエン社(xã Ea Riêng)の第7集落で、グエン・ヴァン・コン氏(Nguyễn Văn Công)が3haの丘にパッションフルーツの棚を組んだ。以前はキャッサバとアカシアを植えていた、砂混じりで痩せた傾斜地だ。約2,500株を植え、コンクリート支柱と棚、灌水の配管を入れた。7〜8ヶ月後から採れ始め、ピーク時には1日約2タ(200kg)を収穫する日もある。Báo Đắk Lắkが2026年10月に伝えたこの事例は、作物転換の美談として読むと要点を外す。報じられた投資額と販売価格を割り算すると、この転換で何トン売れば元が取れるのかが、単価しだいで倍違うことが見えてくる。

目次

1haに200〜250 triệu đồng、売値は10,000〜20,000ドン/kg

記事に出ている金額を整理する。バオアン農業サービス協同組合(HTX Nông nghiệp và Dịch vụ Bảo An)の試算では、1haのパッションフルーツの初期投資は約200〜250 triệu đồng。内訳は主に苗、支柱、棚の線材、灌漑システムだ。triệuは100万なので、200〜250 triệu đồngは2億〜2億5,000万ドン、日本円でおよそ122万〜152万円にあたる。

売値は10,000〜20,000ドン/kgで、時期と品質によって動く。円に直すと約61〜122円/kgだ。

この2つを割り算すると、転換の輪郭が出る。粗収入だけで初期投資を取り戻すには、1haから次の量を出す必要がある。

初期投資/売値 10,000ドン/kg(約61円) 20,000ドン/kg(約122円)
200 triệu đồng(約122万円) 20.0トン 10.0トン
250 triệu đồng(約152万円) 25.0トン 12.5トン

表の数字は、初期投資と同額の粗収入を得るのに必要な累積の販売量だ。肥料も農薬も人件費も電気代も入っていない。実際にはここに毎年の変動費が乗るので、手元に利益が残るのはこの量を超えてからになる。

読みどころは、単価が10,000ドンか20,000ドンかで、投資額を回収するまでに売らなければならない量が倍違う点にある。記事はこの作物について、品種選び、棚づくり、樹形づくりが収量を大きく左右するとも書いている。年間収量も変動費も園地の耐用年数も出ていない以上、どちらの寄与が大きいかを比べることはできない。確実に言えるのは、単価が半分になれば必要な累積量が倍になる、という算術のほうだ。

コン氏のピーク時の収穫量は、3haで1日約200kgと報じられている。これは最盛期の1日の数字であって、年間に引き伸ばして計算できる種類の数字ではない。記事にも年間収量は出ていない。

協同組合に入って最初に消えたのは、技術の不安だった

コン氏が転換に踏み切った転機は、バオアン協同組合への参加だった。技術の指導を受け、販路の接続を手配してもらったうえで、効率の低い耕作地をパッションフルーツに切り替えている。本人の言葉として記事が載せているのは次の内容だ。はじめは投資額がかなり大きいうえ、新しい作物なので家族は心配した。協同組合に品種選びから棚づくり、手入れまで指導してもらい、7〜8ヶ月ほどで園地が収穫に入った。日によっては1日約2タを採る時期もあり、以前のキャッサバやアカシアよりずっと効率が高い、と。

氏の経験として挙げているのは、パッションフルーツは土を極端に選ばないが、ふかふかで水はけがよく、水源が確保された土地が要るという点だ。品種選び、棚づくり、樹形づくりが収量を大きく左右する。つるが棚面に届いたら摘心し、健全な枝を3〜5本選んで均等に配置する。同時に弱い枝と病気にかかった枝を絶えず切り落とす。特に雨季は園地を継続的に見回り、糸状菌の病気を早期に見つけて処理しなければならない。

第4集落のグエン・カック・ティエン氏(Nguyễn Khắc Tiến)も、効率の低い丘陵地をパッションフルーツに転換した先行組の一人だ。棚と節水灌漑を入れ、安全な工程に沿って管理している。氏によれば、協同組合に入る最大の利点は、技術から販路まで農家が自分で何とかしなくてよくなったことだという。協同組合が買い取り企業と連携し、車が園地まで来て製品を運んでいく。その代わりに各戸は生産の工程を守り、肥料と農薬を指示どおりに使って果実の品質を確保する義務を負う。

2020年に土地と気候を調べてこの作物を選んだ組合代表がいる

エアリエン社でパッションフルーツを根付かせ、少しずつ広げてきたのがバオアン農業サービス協同組合の代表チャン・バー・ザン氏(Trần Bá Dân)だ。2020年、小規模で分散した生産のやり方を変えたいという考えから、組合員とともに土地と気候の条件を調査し、転換作物としてパッションフルーツを選んだ。現在、協同組合が管理するパッションフルーツは約14ha。社全体では20戸を超える農家が30ha以上で栽培している。

収穫後の果実は、協同組合の連携でザライ省の工場へ運ばれて加工され、いくつかの海外市場への輸出に回る。この産地は生果の売り先ではなく、加工場の原料供給地として組まれている。

項目 内容
場所 ダクラク省エアリエン社(xã Ea Riêng)
転換前の作物 キャッサバ、トウモロコシ、アカシア
土壌条件 砂混じりで痩せた丘陵地
協同組合 HTX Nông nghiệp và Dịch vụ Bảo An(代表 Trần Bá Dân、肩書きの原語はGiám đốc)
協同組合の管理面積 約14ha
社全体 20戸超、30ha超
この作物を選んだ時期 2020年に組合員と土地・気候を調査して決定
1haの初期投資 約200〜250 triệu đồng(約122万〜152万円)
販売価格 10,000〜20,000ドン/kg(約61〜122円)
植栽から収穫まで 約7〜8ヶ月
出口 ザライ省の工場で加工、海外市場へ輸出

エアリエン社人民委員会のト・ミン・マイ副主席(Tô Minh Mại)は、地元の長期的な方向性として、段階的に集中生産地域を形成し、製品の品質を高め、安定した出口を確保するための連携チェーンを構築することだと述べている。

産地の断片化、苗の品質、農薬の使い方という3つの課題に、この村は正面から当たっている

この30haの話は、ベトナムのパッションフルーツ産業が抱えてきた課題と正面から噛み合っている。

公益財団法人中央果実協会が2025年に収集した海外果樹農業情報によると、ベトナムのパッションフルーツは以前は農産物輸出にほとんど含まれていなかったが、現在では主要品目として台頭し、加工品が年間約3億ドルを生んでいる。米国、韓国、タイなどの市場への参入交渉も進行中だ。一方で課題として挙げられているのが、産地の断片化、種苗の品質の低さ、農薬の過剰使用の3つ。克服の提案として、地域区分の見直し、農薬管理の厳格化、小規模生産者の組織化の改善が示されている。

エアリエン社でやっていることを、この3つに当てはめてみる。20戸超で30ha以上を集めて集中生産地域を目指しているのが、産地の断片化への対処。協同組合が品種選びから指導しているのが種苗の品質への対処。各戸に肥料と農薬を指示どおりに使わせているのが農薬管理への対処。協同組合そのものが、小規模生産者の組織化にあたる。提案されている処方箋と同じ形のものが、1つの村で同時に動いている。

ただし、実際に優良な苗が使われているのか、各戸が工程をどれだけ守っているのか、残留農薬の検査でどんな結果が出ているのかは、報じられていない。形が揃っていることと、結果が出ていることは別の話だ。

日本の飲料・乳業・製菓がパッションフルーツの果汁やピューレを使う場合、取引相手は農家ではなく加工場になる。だが残留農薬の検査結果を決めるのは園地のほうだ。工場がどれだけ整っていても、原料の園地で農薬の使い方が揃っていなければ、ロットごとに結果が振れやすい。協同組合が「指示どおりに使う義務」を課している産地と、各戸が自分の判断で散布している産地とでは、工程の揃え方が違う。加工場に問い合わせるときに、原料をどの組織から買っているかを聞く価値はここにある。

痩せた丘の作物転換は、ダクラクだけで起きているのではない

中部の丘陵地で、収益の低い作物から別の品目に切り替える動きはあちこちで出ている。クアンガイではアカシアをやめてレモングラスに切り替え、山の1haで8,000万ドンの利益を出した事例が報じられた。アカシアは植えてから伐採まで数年かかり、その間の収入がない。短期で回る作物に置き換える動機は共通している。

転換後の出口も似た形になりつつある。パッションフルーツがザライ省の加工場に流れるように、ドラゴンフルーツの加工工場が中東向けの輸送期間が3週から4週に延びたことを受けてインドを輸出先の候補に挙げたという動きもある。産地が加工場に紐づき、加工場が輸出先を探す。この構造では、農家の手取りに輸出先の相場が影響する。ただし加工場の歩留まり、品質等級、契約の形、国内の需給も効くはずで、バオアン協同組合の買取価格がどう決まるのかは報じられていない。10,000ドンと20,000ドンの幅が何で動いているのかは、聞いて確かめるしかない。

農家を束ねる側の工夫も進んでいる。胡椒を6つの形態に割って売るバウマイ協同組合のように、同じ原料を複数の規格に分けて単価を取りにいく協同組合も出てきた。バオアン協同組合が同じ道を進むかどうかは、公表された計画からは分からない。

問い合わせるなら、工場と園地の両方を見る

確認したいこと 誰に聞くか なぜ聞くか
原料をどの組織から買っているか 加工場 協同組合経由か個別農家かで工程管理の揃い方が違う
農薬の使用記録が農家単位で残るか 加工場または協同組合 残留農薬の結果の再現性に直結する
契約栽培の面積と戸数 協同組合 必要な量を連続して確保できるかを測る
買取価格の決まり方 協同組合 固定か相場連動かで翌年の作付けの読みが変わる
過去3年の単価の上下 協同組合または加工場 10,000〜20,000ドンの幅がどう動いたかを知る

まとめ

1haに200〜250 triệu đồng(約122万〜152万円)を入れて棚を組み、10,000〜20,000ドン/kgで売る。投資額と同額の粗収入を得るには、単価が10,000ドンなら20〜25トン、20,000ドンなら10〜12.5トンを1haから売る必要がある。単価が半分になるだけで、回収に要する累積の販売量が倍になる。

ベトナム産のパッションフルーツ果汁やピューレを扱っている、あるいは検討している日本側に勧めたいのは、取引している加工場に、原料を協同組合から買っているのか個別農家から買っているのかを聞くことだ。産地の断片化、苗の品質、農薬の過剰使用という3つの課題に対して、組織化は処方箋の1つとして挙げられている。エアリエン社の30haは、その答えが「協同組合から」になる側の産地にあたる。

本文の円換算は1円=164ドン(2026年10月6日時点の実勢)で計算した。

参照元

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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