2026年9月7日、ベトナム・ラムドン省ダラット市シュアンチュオン地区で、製薬企業のLadophar(Công ty cổ phần Dược Lâm Đồng=ラムドン製薬)が地元農家と連携生産契約を結び、栽培技術の支援と医薬品規格での買い取りを進めている。栽培面積1万m²超のTrương Minh Hoàng氏が育てるアーティチョークは、葉・つぼみ・茎・根をそれぞれ茶やエキス、食品原料に振り分けて出荷される。一つの畑から複数の用途へ値をつける仕組みで、日本の農産物バイヤーや機能性素材の開発担当にとっては、単一部位に頼らない調達設計の実例になる。
Ladopharが連携生産契約で一株を丸ごと買い取る
従来のアーティチョーク栽培は、葉やつぼみといった一部の部位だけを換金し、残りは畑に戻すか安値で流していた。今回の連携生産では、Ladopharが種苗から収穫までの技術を農家に渡し、医薬品原料として使える品質を満たした株を、部位ごとに規格を分けて買い取る。原料調達を担当するNgô Thị Hạnh氏の下で、Ladopharの調達面積は合計50〜60haに達する。買い手が加工の出口を先に握り、栽培段階から品質を作り込む点が、単なる青果の売買とは異なる。
ダラットの気候がアーティチョーク産地を支える背景
ダラットは標高が高く、霧と冷涼な気温、火山性の土壌がアーティチョークの生育に向く。ベトナムでは葉を乾かした茶やエキス(cao)が古くから流通し、老舗の加工企業が茶葉やエキスを日本などへ出してきた実績がある。価格競争力のある産地としてベトナムが選ばれる場面が増えている。薬用植物の産地づくりを行政が後押しする例も出ており、ラオカイ省が薬用植物への支援条例を設けた動きと合わせて読むと、原料の川上を国内で固める流れが見えてくる。
葉・つぼみ・茎・根で異なる出口を作る
一株を用途別に分ける発想が、この取り組みの核にある。部位ごとの主な出口は次の通り整理できる。
| 部位 | 主な加工・用途 |
|---|---|
| つぼみ(花蕾) | 食品・食材 |
| 葉 | 茶、エキス(cao) |
| 茎 | 茶、エキス原料 |
| 根 | 茶、生薬系の製品 |
青果として売れるのはつぼみが中心だが、葉・茎・根に加工の受け皿を用意すると、収穫のたびに複数の売り先ができる。捨てていた部位が原料に変わることで、同じ面積からの手取りが積み上がる。
収穫は葉が約15日ごと、全周期は約1年
アーティチョークの栽培は手間がかかる。葉の収穫はおよそ15日ごとに回り、一つの畑を回しながら年間を通じて原料を出していく。定植から収穫終わりまでの全周期はおよそ1年に及ぶ。農家が最も気を張るのは定植後の1.5〜2ヶ月で、この時期に株が枯れやすく、生き残った株がその後の収量を決める。Ladopharが技術者を張り付け、農家が植え付けから収穫まで株を見続ける体制を組むのは、初期の歩留まりが最終的な原料量を左右するからだ。ラムドン省全体の薬用作物ゾーンは合計2,144haに広がり、アーティチョークはその中心的な品目に位置づけられている。
日本の調達・素材開発への示唆
日本のバイヤーがこの事例から取り出せる論点は三つある。一つ目は、部位別の規格を持つ産地は供給が安定しやすい点。単一部位だけを買う契約より、加工側が全部位を引き取る産地のほうが、農家の離脱が起きにくい。二つ目は、医薬品規格で選別された原料は、健康茶やサプリメント、飲料の素材として日本側の品質要件に載せやすい点。三つ目は、加工企業が栽培から関与する産地は履歴が追いやすく、日本の輸入検疫や表示の準備を前倒しできる点だ。契約栽培で薬草を産地化した例としては、カインホア省で乱獲で消えかけた薬草を契約40haの産地に育てた事例もあり、買い手が入口を設計する型は各地で共通している。
加工前提の産地づくりが他品目へ広がる
一株を用途別に分けて買い取る型は、アーティチョークに限らない。長く採れる薬用作物を軸に据えた産地では、ランソン省が一度植えて10年採れるクチナシで生薬産地を拓いた例のように、収穫の回転と加工の出口をあらかじめ結び付ける設計が進む。青果の相場に振り回されず、原料としての単価と数量を確保する動きは、コーヒーや果実の加工転換とも重なる。日本の素材開発にとっては、完成した茶やエキスを買うだけでなく、川上の栽培から出口を共同で設計する余地が生まれている。
実務での確認事項
実際に調達を検討する場合、確認すべき点は絞られる。買い取り規格が部位ごとにどう分かれているか、医薬品規格と食品規格でどの部位が使えるか、年間の収穫カレンダーと出荷可能量、そして日本向けの残留基準や産地コードへの対応状況を、加工企業側に早い段階で照会しておきたい。エキスや茶葉の形で入れるのか、乾燥原料として入れて日本側で加工するのかによって、必要な認証や納期の組み方が変わる。ダラットの気候に依存する作物のため、天候による収量の振れも織り込んでおく。
まとめ
ダラットのアーティチョークで進む連携生産は、一つの畑から複数の原料を取り出し、加工企業が栽培段階から品質を作り込む型を示している。葉・つぼみ・茎・根に別々の出口を用意し、医薬品規格で買い取る仕組みは、供給の安定と履歴の透明さを同時に高める。日本の農産物バイヤーや機能性素材の開発担当にとっては、完成品を買う交渉に加えて、産地の入口から関与する調達の選択肢が広がっている。
参照元:
Nông nghiệp và Môi trường「Đa giá trị từ cây atiso」(2026年9月7日)