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カシュー111%増で竜果に並ぶ、越の果実輸出が入れ替わる

ベトナムの野菜・果実輸出が2026年1〜8月で58.7億ドルに達し、前年同期を21.8%上回った。8月単月は11億ドルで、前月比1.3%増、前年同月比では14.6%増える。金額の伸びは続いているが、内訳を7ヶ月時点で開くと、輸出を牽引する品目の顔ぶれが去年までと替わり始めている。日本のバイヤーにとっては、総額よりもこの入替のほうが調達計画に直結する。

目次

カシューナッツが前年比111%増で金額上位に浮上した

7ヶ月の集計でカシューナッツの輸出額は3.228億ドルとなり、前年同期の2倍を超えた。伸び率111%は主要品目のなかで突出している。ベトナムは殻付き原料をアフリカやカンボジアから輸入し、剥き身に加工して100カ国超へ再輸出する世界最大のカシュー加工国で、輸出額の増加には原料相場と加工賃の上昇も乗っている。単価が上がっている局面のため、日本側で数量ベースの契約を前提にしていた買い手は、金額と数量を分けて確認しておく必要がある。産地はドンナイなどの畑作地帯に厚く、林床での複合栽培も広がっている(森の山菜ラウニップをカシュー畑の林床で育てるドンナイの副収入)。

パッションフルーツは25.6%増、加工向けが数字を押し上げた

パッションフルーツは1.868億ドルで25.6%増えた。生果よりも濃縮果汁や冷凍ピューレといった加工形態の伸びが大きく、飲料・製菓向けの引き合いが数字を支えている。産地は中部高原に集中し、輸出先は加工用の中国に加えて、日本・韓国・欧州といった高単価市場への切り替えが進む。この市場では選果場基準と残留農薬・検疫要件への適合が取引の条件になっており、価格よりも書類とロットの安定が選定の分かれ目になる。日本の飲料・乳製品メーカーが原料を新規に開拓するなら、生果ではなく加工品の供給ラインから当たるのが実務に合う。

竜果・マンゴー・バナナが前年割れに転じた

これまで金額上位を占めてきた品目は反対に伸びを欠く。竜果(ドラゴンフルーツ)は3.219億ドルで1.6%減、マンゴーは2.65億ドルで2.5%減、バナナは2.571億ドルで0.4%減となった。いずれも減少幅は小さいが、全体が21.8%伸びるなかでの前年割れは、構成比の低下を意味する。中国市場での競合や作付けの頭打ちが背景にあり、これらを主力に据えてきた調達先は、同じ産地の別品目へ資源を移している。竜果を3.219億ドル、カシューを3.228億ドルと並べると、7ヶ月時点で金額はカシューと竜果がほぼ並び、カシュー+111%対竜果−1.6%という勢いの差が品目構成の変化を映す。

ドリアン17.6億ドルは中国需要と第4四半期に依存する

単一品目の首位は依然ドリアンで、7ヶ月で17.6億ドル、47.1%増えた。ただし出荷先は中国への集中度が高く、商工省は残り期間でドリアンが12〜15億ドルを追加で稼ぐと見込む。第4四半期は旧正月とクリスマスに向けて中国・北東アジアの需要が厚くなる時期で、タイのドリアン端境期もベトナムに追い風となる。日本のバイヤーからは直接の調達対象になりにくいが、ドリアンに人手と物流が張り付く数ヶ月は、他品目の出荷キャパや価格に影響が及ぶ。カシューやパッションフルーツの引き合いを進めるなら、この繁忙期を外した交渉が通りやすい。

カシューはアフリカ産原料の再輸出という中身を持つ

カシューの111%増を日本側で評価するときは、原産地表示と加工地の切り分けが要る。ベトナムのカシュー輸出は、アフリカ産の殻付き原料をベトナムで剥き身・焙煎・選別する加工付加価値の産業で、最終製品の品質は工場の選別工程に左右される。北米・欧州のスナックや製菓が剥き身の需要を押し上げており、クリーンラベル志向がこの流れを後押しする。日本の食品メーカーがベトナム産カシューを組み込む場合、原料の出所と工場の選別等級を仕様書で押さえておくと、同じ「ベトナム産」でも品質のばらつきを抑えられる。

ココナッツと冷凍加工が輸出先分散の受け皿になる

果実全体では、生鮮の一極集中から加工品への広がりも進む。ベトナムは殻付きココナッツからココナッツウォーターやミルクへ深加工する工場を増やし、輸出先も中国依存を薄める動きを見せる。トルコをはじめ新規市場をココナッツと冷凍品で開く事例も出ている(ベトナム熱帯果実がトルコ市場を開く、ココナッツと冷凍で挑む輸出先分散)。UHT・無菌充填で常温流通できる加工ココナッツは、日本の飲料・健康食品の棚に載せやすい形態で、生鮮より在庫と品質の管理がしやすい。伸長品目がカシュー・パッション・ココナッツと加工寄りに動いていることは、日本の調達側が加工原料の供給元を見直す契機になる。

産地コードと選果場基準が対日輸出の入場券になる

伸びている品目に共通するのは、産地コードと選果場登録を前提にした輸出体制の整備だ。パッションフルーツもマンゴーも、日本や高単価市場へ入るには栽培地コードとパッキングハウスの登録が条件になり、ドンタップの干しマンゴーは353の産地コードで日本向けの供給を組み立てている(ドンタップの干しマンゴーを日本へ運ぶ353の産地コード)。日本のバイヤーが新規サプライヤーを評価するときは、輸出額の伸びよりも、この産地コードと登録工場の有無を先に確認したほうが、検疫や書類で止まるリスクを避けられる。

8月の数字が示す調達品目の入替シグナル

8ヶ月58.7億ドルという総額は好調だが、その中身は主力の竜果・マンゴー・バナナが頭打ちになり、カシュー・パッションフルーツ・加工ココナッツが金額を押し上げる構成に替わった。ベトナム産の果実を日本で扱ってきた買い手にとって、この交代は取引先の見直しを促す信号になる。既存の生鮮ラインを維持しつつ、加工原料としてのカシュー剥き身、飲料・製菓向けのパッションフルーツ濃縮、常温流通できるココナッツ加工品を供給元リストに加えておくと、産地の作付けが替わっても調達の空白を作らずに済む。数字が伸びている今のうちに、産地コードと工場登録を持つサプライヤーと接点を取っておく判断が、次の一年の仕入れを左右する。


参照元:
Mekong ASEAN「Xuất khẩu rau quả 8 tháng đầu năm 2026 đạt gần 6 tỷ USD」
FreshPlaza「Vietnam’s passion fruit supply expands, putting quality and market diversification in focus」
VOV「Vietnam passion fruit, pomelo gain wider export opportunities」
Vietdata「Vietnam’s cashew industry moves to maintain the world’s top spot」
Nhan Dan「Vietnam improves competitiveness for coconut industry」

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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