NÔNG NGHIỆP VIỆT NAM — TẠP CHÍ NÔNG NGHIỆP ĐÔNG NAM Á

クアンニンの遊休エビ池で高級魚ハタ5000尾を陸上養殖する実験が始動

ベトナム北部クアンニン省ハイホア村で、採算が落ちたエビ養殖池を海水ハタ(ベトナム名 cá song、英名グルーパー)の陸上池養殖に切り替える実証が始まった。農家のファム・ゴック・チエン氏が5,000平方メートルの池に稚魚5,000尾を放ち、2年で3.5〜4kgまで育てて出荷する計画だ。海に浮かべる生簀ではなく「陸の池」を選んだこと、そして高級白身魚を余ったエビ池で育てるという発想は、台風被害と価格変動に揺れるベトナム水産の調達地図を、日本の輸入業者の目線でも読み替える材料になる。

目次

5,000㎡のエビ池に1尾/㎡でハタ稚魚5,000尾、2年で3〜4kgを狙う

クアンニン省農業推進・森林保護管理センターの支援で進む今回のモデルは、密度を1平方メートルあたり1尾に抑えた低密度養殖だ。同センターによると、放養時に約28gだった稚魚は飼育2か月で全長約25cm・体重約250gまで伸びており、順調なら約2年で3.5〜4kgに達する。平均3kgで計算した場合の見込み収量は池全体で約15トンとされる。数字はいずれも実証中の目標値で、最終的な歩留まりは今後の水温・給餌・病害の管理次第だ。

項目 実証モデルの値
池の面積 5,000㎡(旧エビ池を転用)
放養尾数 / 密度 5,000尾 / 1尾・㎡
放養時の体重 約28g/尾
2か月後 全長約25cm・約250g/尾
飼育期間 約2年
目標体重 3.5〜4kg/尾
見込み収量 約15トン(平均3kg想定)

低密度は成長のばらつきと病気の連鎖を抑えやすく、水質悪化で全滅した過去のエビ池の反省を踏まえた設計にも見える。エビの高回転集約とは逆に、少ない尾数を長く太らせて単価の高い魚に振る組み立てだ。同じクアンニン省でも、年7〜9回転で90日出荷を回すエビ協同組合とは狙いも時間軸もまるで違う。回転で稼ぐエビと、じっくり大きくして単価で稼ぐハタが、同じ土地の別の使い道として並ぶ。

海上生簀でなく池を選んだ背景に、2024年台風ヤギが壊した2,637の養殖経営体がある

ベトナムのハタ養殖は本来、湾内に浮かべる生簀が主流だ。その常識に真正面からリスクを突きつけたのが2024年9月7日にクアンニン省を直撃した台風ヤギ(Yagi)だった。省の被害集計によると、同省では約2,637の養殖経営体が損害を受け、被害が最も重かったヴァンドン地区だけで収穫期換算およそ3万2,000トン、被害総額は2兆2,000億ドンを超えたと伝えられている。流された生簀には、数年かけて育てた4〜5kgのハタが1尾あたり約100万ドン(1円≒170ドンの概算で約6,000円)で数万尾規模で失われた。被災した生簀の多くは竹・木材・発泡スチロールで組んだ在来型で、暴風への耐性が低かった。

陸上の池は、この「一晩で資産がゼロになる」リスクの外に置ける。護岸された池なら暴風でも構造ごと流されにくく、取水・排水や水温もコントロールしやすい。台風リスクへの答えは一つではない。カインホア省では木製筏を捨てて台風に強いHDPE生簀へ切り替える海面養殖が進む。海に残って設備を頑丈にする道と、そもそも海から陸へ退く道。クアンニンのチエン氏が選んだのは後者で、余っていたエビ池がその受け皿になった。

不振のエビと遊休資産、ハタ転用が埋めようとする採算の穴

エビ養殖池は、病害や連作による地力低下で収益が落ちると放置されやすい。塩分の残る池は他作物への転用が難しく、遊休化した資産が農家の負債として残る。海水魚であるハタは、その塩分が残った池をむしろ資源として使える数少ない選択肢だ。作り直すのではなく、今ある池と水をそのまま生かして単価の高い魚に載せ替える。ここに転用の妙味がある。

低収益の土地を別の高付加価値品目に切り替える動きは、ベトナム各地で同時多発的に起きている。フエ省では潟湖の1つの池に5種を混ぜる混養で年商150億ドンを上げる農家が出ており、遊休化した水面をどう作り替えて採算に乗せるかという問いは共通する。クアンニンのハタ単一種・低密度と、フエの多種混養は対照的だが、どちらも「空いた池を眠らせない」という発想では地続きだ。

クアンニン省農業推進センターのブイ・フウ・ソン氏は、このモデルの狙いを効率の落ちたエビ池の有効活用と環境の回復、生産の多角化にあると説明している。単発の成功譚ではなく、同じ悩みを抱える近隣農家が模倣できる型として実証している点が、産地全体の底上げにつながる可能性を持つ。

日本の高級白身魚市場から見たとき、ハタは供給源多様化の的になる

日本の水産市場でハタ類は高値で流通する白身魚だ。同じハタ科のクエは超高級魚として知られ、天然物は通常でも1kgあたり1万円前後、年末には1万5,000円を超える相場がつくこともある。もちろん養殖グルーパーはこれよりずっと手頃な価格帯で、料亭の天然クエと同列には並ばない。それでも、白身の高級魚に安定した需要がある市場だという事実は変わらない。

ベトナムは日本にとって上位の水産調達先で、ハタ・コビア・スズキ(バラマンディ)・フエダイといった高付加価値魚は日本・香港・シンガポールの高級市場を狙って輸出されてきた。日本の輸入業者にとって、産地が海上生簀だけに依存している状態は台風のたびに供給が途切れるリスクを意味する。陸上池という別ルートが産地に加われば、悪天候で相場が乱高下する局面でも調達先を分散させる余地が生まれる。クアンニンの5,000尾はまだ実験段階だが、「生簀が全滅しても陸の池は残る」構図は、供給の安定性を重く見るバイヤーにとって見逃せない論点だ。

陸上池ハタが対日調達に載るには、量・周年性・トレーサビリティの壁が残る

ただし、実験が輸出商材になるまでの距離は短くない。第一に量。1池5,000尾・約15トンでは商業ロットに届かず、複数農家が同じ型で面として広がらなければ安定供給は語れない。第二に周年性。2年サイクルの単発出荷では、通年で引きたいバイヤーの発注に応えにくい。放養時期をずらした複数池の同時運用が要る。第三にトレーサビリティと認証。日本向けの高級白身魚は、飼育履歴・抗生剤の使用記録・水質データが揃って初めて棚に載る。

裏を返せば、これらは産地側の設計で埋められる課題でもある。低密度養殖はもともと薬剤依存を下げやすく、履歴管理と相性がよい。日本の調達担当者が今できるのは、完成した商材を待つことではなく、こうした転用モデルがどの産地で、どんな管理体制で立ち上がりつつあるかを早い段階で押さえておくことだ。産地が海から陸へ受け皿を広げる動きは、次の台風シーズンを前に静かに進んでいる。

参照した情報源

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

目次