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北部クアンニンのエビ協同組合、8ha12池で年7〜9回転・90日出荷

ベトナム北部クアンニン省カムファ市の「高技術エビ養殖協同組合(HTX Nuôi tôm công nghệ cao Cẩm Phả)」が、約8ヘクタール・12池のハウス養殖でバナメイエビを年7〜9回転させ、約90日で30尾/kgサイズまで育てて出荷する体制を実証した。エビ養殖といえばメコンデルタ、というこれまでの前提から外れる産地の動きで、EU・米国・日本の輸入基準に対応する管理も併せて進めている。日本の輸入エビはベトナム・インドネシア・インドに大きく依存しており、その供給元をどの地域まで広げられるかを考えるうえで、北部の集約型モデルは見過ごせない材料になる。

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8ha・12池で年7〜9回転、90日で30尾/kg——カムファHTXの数字

このHTXは2024年初めに立ち上がり、ハウス・機械・電気設備を含むインフラに約150億ドン(1円≒170ドンで約8,800万円)を投じた。敷地は約8ヘクタール、1池あたり1,000平方メートルの養殖池を12面備え、うち6面を水処理・貯水にあてる。屋根で覆い、自動水処理とIoTによる水質モニタリングを組み合わせることで、天候に左右されずに通年で稼働させる構えだ。

成果として同組合が示すのが回転数で、従来型の露地池が年1〜2回転にとどまるのに対し、ここでは年7〜9回転に達する。1回の養殖はおよそ90日だが、稚エビの中間育成を別の池で回す3段階方式で本養殖池の占有期間を短くしているため、90日サイクルでも同じ敷地で年7〜9回転を積み上げられる。出荷サイズは30尾/kg。年間ではバナメイエビ450〜500トンを市場に供給し、月あたりでならすと約45トンになる。露地の粗放養殖とは生産の考え方そのものが違う。

項目 従来型の露地池 カムファHTXの改良ハウス型
年間の養殖回転 1〜2回転 7〜9回転
1回転の日数 季節・天候に依存 約90日
環境管理 天候まかせ ハウス被覆+自動水処理+IoT水質監視
出荷規格 ばらつき大 30尾/kgに揃える
年間供給量(1組合) 450〜500トン

25日ずつ区切る3段階養殖が90日サイクルを支える

90日という短さは、稚エビの中間育成を分けて管理する三段階方式から来ている。第1段(最初の約25日)はハウス内で稚エビを直接育てる中間育成にあて、水温や水質を厳しく管理して初期の歩留まりを固める。第2段(次の約25日)で餌を増やして成長を促し、第3段で餌量と密度を調整しながら出荷まで持っていく。露地で一気に育てるのではなく、段ごとに池を移し替えて過密を避ける運用が、短い回転と揃った規格を両立させている。

この方式は「改良型ハウス(nhà bạt cải tiến)」と呼ばれ、北部のように冬場の水温低下が避けられない立地で通年生産を狙うための工夫でもある。南部の常時温暖な環境なら露地でも複数回転が可能だが、四季のある北部で年7回転以上を出すには、被覆と水管理の作り込みが前提になる。クアンニン省全体では約7,500ヘクタール、2,250以上の生産拠点でエビが養殖され、年産は約3万トンに及ぶ。1組合の実証が、省全体の高度化の呼び水になりうる規模感だ。

メコンデルタ一極の調達に北部産地が加わる意味

ここからは日本側の視点で読み解きたい。日本のエビ輸入はベトナムが上位を占め、そのベトナム産の大半はカマウ省やバクリュウ省などメコンデルタに集中してきた。カマウの養殖は大規模・低密度の粗放型が主で、価格や環境負荷の面で持続性が問われる一方、収量の年変動や天候リスクを抱える。調達を一つの地域に寄せるほど、洪水・塩害・高水温といった局地的な事象が納入の安定を直撃しやすい。

その点、クアンニン省は地理的にメコンデルタから1,500キロ以上離れた北端に位置し、気候リスクの相関が低い。加えて中国国境のモンカイを抱え、物流の結節点でもある。集約型で回転数を稼ぐカムファ型が北部で育てば、南部の粗放養殖とは異なる特性の供給源が一つ増える。産地の分散は、単価交渉より前に「切らさない調達」を組み立てるうえで効く。実際の産地選定で北部と南部をどう組み合わせるかは、中国が越水産の最大市場に浮上するなか日本の調達が3位でどう動くかを追った記事と併せて読むと輪郭がはっきりする。稲作と組み合わせる別解として、タインホアの稲田でオニテナガエビを混養する事例も同じ「土地あたりの価値を上げる」発想の延長にある。

クアンニン産を試す初回商談で、押さえておきたい3点

ただし、実証段階のモデルをそのまま調達に組み込むには慎重さがいる。まず量の連続性で、年450〜500トンは1組合の規模であり、日本の商社・加工筋が求めるロットに対しては複数組合の束ね方が課題になる。次にトレーサビリティで、EU・米・日向けを掲げていても、養殖池単位の記録や産地コードが実際に発行・維持されているかは個別確認が必要だ。ベトナムは産地コードの取得要件を見直す制度改革の途上にあり、その現状は協同組合要件の撤廃と事後検査への転換をまとめた記事が詳しい。

実務としては、(1)出荷規格30尾/kgが日本の用途(むきエビ・寿司ダネ・惣菜)に合うサイズか、(2)ハウス電力に依存する原価構造が電力事情で振れないか、(3)通年供給の裏付けとなる稼働池数と在池尾数の開示、の3点を初回商談で押さえたい。北部産地は選択肢としてはまだ細いが、南部一辺倒のリスクを薄める一手として、サンプル取り寄せと小ロット試験から始める価値はある。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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