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ベトナムのノニ35haがUSDA有機認証で韓国・米国輸出を狙う

ホーチミン市の Trang Linh(トランリン)社が、旧スエンモック県の火山灰土壌で有機ノニ(ベトナム語で nhàu、学名 Morinda citrifolia)の産地化を進めている。自社25haと提携農家10haを合わせた35haで、2026年8月に USDA(米国農務省)の有機認証取得を見込み、韓国と米国への輸出を準備しているという。7月30日付の現地農業紙が同社CEOの証言として報じた。日本の食品メーカーや原料調達の担当者にとっては、機能性素材として位置づけられる熱帯果実の新しい供給元がひとつ立ち上がりつつある、という話になる。

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スエンモックの玄武岩土壌で25ha、提携10haを足したノニ園が輸出を見据える

産地に選ばれたのは、旧スエンモック県(現在はホーチミン市に統合された南部沿岸部)。同社CEOの Phạm Trường Giang(ファム・チュオン・ザン)氏によれば、玄武岩由来の火山灰土壌はミネラル分に富み、台風の直撃を受けにくく、海からの塩分を含んだ霧が自然に土壌を補うという立地条件がノニ栽培に向く。栽培主体は自社農園25haで、ここに契約農家の10haが加わる。苗を植えてから約9か月で収穫が始まり、その後は月に2回のペースで実を採る。

ノニの果実は熟すと白っぽくなり、独特の発酵臭を放つ。生果のままでは日持ちも輸送も難しいため、同社は果汁・冷凍生果・ドライフルーツ・消化酵素・ノニ茶・粉末・ノニ酒の7つの製品ラインを開発中だとしている。原料をそのまま出すのではなく加工に寄せる設計で、これはベトナム農産品全体で広がる付加価値化の流れと重なる。水産分野で 原料輸出から加工へと軸足を移す VASEP の動き を追ってきた読者には、果実側でも同じ発想が広がっていると読めるはずだ。

ノニは古くから民間薬に使われた果実——日本では効能の断定は避けるべき素材

ノニはアカネ科の常緑低木で、ポリネシアから東南アジア、沖縄まで熱帯・亜熱帯に自生する。根・葉・果実などあらゆる部位が各地で民間薬として使われてきた歴史があり、果実にはスコポレチンやイリドイドといった、一般的な果物にはあまり含まれない成分が報告されている。ベトナムでも nhàu は伝統的に親しまれてきた素材だ。

ただし日本市場を前提にするなら、ここは慎重な線引きが要る。国立の健康食品情報では、ノニ摂取による明確な有効性は確認されておらず、肝機能障害など健康被害の報告もあると注意喚起されている。つまり「体に効く」と断定する売り方は景品表示法・薬機法の観点でリスクが高い。調達側が扱うなら、伝統的に使われてきた食素材・風味素材としての位置づけを起点に、機能性表示を打つ場合は科学的根拠と手続きを別途詰める、という順序が現実的だろう。素材そのものの物語性はあるだけに、伝え方を誤ると逆に信頼を損なう。

買取7,000ドン/kgと月2回収穫で組む採算、加工に寄せて価格変動を吸収する

同社が示す栽培・採算の数字は次のとおり。いずれも同社CEOの証言に基づく単一ソースの数値であり、為替換算は1円≒170ドンの概算(断定ではない)で付記する。

項目 数値(同社証言) 円換算の目安
栽培面積 自社25ha+提携10ha=35ha
植栽密度 800本/ha
収穫開始 植付から約9か月
収穫頻度・収量 月2回/1本あたり5kg/回
買取価格 7,000ドン/kg 約41円/kg
月間売上 約5,600万ドン/ha 約33万円/ha
月間利益(優良農家) 2,200〜2,500万ドン/ha 約13〜15万円/ha

注目したいのは、生果の買取単価そのものは高くない点だ。1kgあたり約41円という水準は、生果のまま国際流通に乗せて利益を出すには薄い。だからこそ7製品ラインで加工に寄せる設計になっている。果汁や粉末に転換すれば保存性と輸送性が上がり、原料相場の変動を製品側で吸収できる。ドリアンで 生果は急落しても冷凍加工が単価を押し上げた 構図と同じで、ニッチな薬用果実ほど「どの形で出すか」が採算を左右する。日本側が見るべきは生果のkg単価ではなく、粉末や果汁といった加工品での着地価格と品質の安定性になる。

最大消費地は韓国、次いで米国——日本の機能性原料調達では「隙間」に位置する

同社はノニの世界最大の消費地を韓国、第2位を米国と見て、この2市場への輸出を優先している。日本はこの構図では主戦場ではない。ノニは日本でも健康食品として一定の流通があるものの、市場規模は限られ、原料需要も突出して大きいわけではない。

裏を返せば、これは日本の調達にとって大口の争奪戦になっていないニッチ原料だということでもある。機能性表示食品市場は拡大が続き、健康食品全体に占めるサプリメント形状の機能性表示食品の構成比は2020年度の約18%から2025年度には約33%へと伸びている。主要素材は競争が激しいが、ノニのような伝統素材は、独自の切り口を持つ商品開発や、他素材とのブレンド原料として仕込む余地がある。韓国向けの薬膳・健康素材の流れは、ハティンの巻貝を 薬草仕立てにして韓国へ売る事例 にも見えるとおり、ベトナム側が韓国市場を軸に素材を磨いている点は日本の調達担当も押さえておきたい。韓国・米国向けにUSDA有機で整えたロットは、そのまま日本の有機・自然派チャネルにも転用しやすい。

ベトナム国内では薬用・機能性素材の産地化が複線で立ち上がっており、日本の調達はどの品目がどの加工形態で伸びるかを見極める段階に入っている。ノニは果実そのものを飲料・粉末に加工して売る点で、生薬系の品目とは性格が異なる。

USDA有機は2026年8月に取得予定、調達側が事前に確認したい3点

現時点でこの産地はまだ立ち上げ途上だ。USDA有機認証は取得予定であって取得済みではなく、7製品ラインも開発中の段階。日本側が接点を持つなら、次を確認しておきたい。

  • 認証の実効性——USDA有機の取得時期と対象範囲。日本で有機表示を使うなら有機JASとの関係も別途整理が必要になる。
  • 供給形態と最小ロット——生果ではなく果汁・粉末・ドライのどれで、どの単位から出せるか。加工品での品質規格と残留基準の証明。
  • 表示リスクの切り分け——機能性を訴求するのか、食素材・風味素材として扱うのか。訴求方針で必要な根拠書類が変わる。

ノニは万人向けの大量調達品ではない。だが、有機認証と加工体制を備えた供給元が韓国・米国を軸に育ちつつある事実は、独自性のある健康・自然派商品を組み立てたい日本のメーカーにとって、早めに一次接触しておく価値のある選択肢だ。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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