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アサリ加工大手が明かす、海外バイヤーの「小口注文」転換

ベトナム産二枚貝(アサリ)の加工大手Lenger Seafoods Vietnam(ナムディン省)のグエン・ホー・グエン社長が、海外バイヤーの発注行動に起きている変化を明かした。長期契約でまとめて押さえていた顧客が、市場の動きに合わせて小口の注文を小刻みに入れる方式へ切り替えているという(2026年7月1日報道)。原料コストの上昇が輸出価格に転嫁され、買い手が発注に慎重になっている構図で、貝類を扱う日本のバイヤーにとっても仕入れの読み方に直結する動きだ。

目次

「まとめ買い」から「様子見の小口」へ

グエン社長が示したのは、これまで長期契約でロットを確保していた海外の顧客が、需要を見ながら小さなロットを都度発注する形に移っているという実態だ。年間の必要量を前もって契約で固めるのではなく、店頭の売れ行きや相場を確認してから追加する。買い手が在庫リスクを手元に抱え込まない、慎重な調達スタイルへの移行と言える。

背景にあるのは価格の上昇だ。稚貝の確保が不安定になり、養殖・加工にかかるコストが上がった分は輸出価格に乗る。加えて品質要件は年々厳しくなり、気候変動や水域の環境変化も原料の安定調達を揺さぶる。買い手からすれば、高くなった商品を長期でまとめて握るより、必要な分だけ小刻みに引く方が読みやすい。売り手のLenger側も、それに合わせて供給を柔軟に組み替えている。

数字で見る二枚貝市場──スペインと米国が牽引

発注が慎重化する一方で、市場そのものは縮んでいない。2026年の1〜4月、ベトナムの二枚貝輸出額は約3,800万ドル(約61億円、1ドル≈160円換算)で前年同期比プラス2%。伸びを引っ張ったのはスペインと米国だ。スペインは約1,000万ドルで前年比プラス29%、米国は約600万ドルながらプラス49%と急伸した。伝統的な主力のポルトガルが微減となる中で、需要の重心が動いていることがうかがえる。

市場2026年1〜4月輸出額前年同期比
スペイン約1,000万ドル+29%
イタリア約900万ドル+5%
米国約600万ドル+49%
ポルトガル約500万ドル-2%
合計(二枚貝全体)約3,800万ドル+2%
出典: Nong nghiep Moi truong(2026年7月1日)。1ドル≈160円換算

EUは依然としてベトナム産二枚貝の最大市場で、EVFTA(EU・ベトナム自由貿易協定)による関税の優遇が下支えしている。EUの二枚貝輸入額は2025年の11カ月で約6億5,700万ユーロに達し、金額で9%、数量で7%伸びた。市場は拡大基調にあり、その中でベトナム産の存在感が保たれている。米国は大型サイズの引き合いが強く、供給が追いつかない新興の伸び代として位置づけられている。

なぜ「小口転換」が起きるのか

需要が伸びているのに発注が慎重になる、という一見ちぐはぐな動きは、価格が上がる局面ほど起きやすい。長期契約は数量と価格を先に固定できる反面、相場が変動したときに買い手が不利をかぶりやすい。原料コストが読みにくい今、高値づかみを避けたい買い手は、契約の縛りを緩めて小口で機動的に動く方を選ぶ。

これは貝類に限った話ではない。ベトナム産のフルーツや水産物では、産地の相場が底値でも店頭価格が数倍で推移する場面が繰り返し報じられてきた。相場の振れ幅が大きい品目ほど、買い手は在庫を抱えるリスクを嫌い、分割発注に傾く。供給過剰が生む日本の調達好機を扱った記事でも触れたように、価格変動期の調達は「いつ・どれだけ引くか」の設計が利益を左右する。二枚貝でも同じ力学が働いている。

日本の貝類バイヤーへの示唆

日本の食品バイヤーにとって、この動きは二つの意味を持つ。ひとつは、供給側が小口・分割の発注に応じる体制を整えつつあること。年間契約でロットを固めなくても、需要に合わせて必要量を都度引ける余地が広がっている。少量から取引を始めて品質と物流を見極めたい輸入業者には、参入のハードルが下がる場面だ。

もうひとつは、価格が上昇基調にあるという前提を織り込む必要があること。稚貝の不安定さと品質要件の厳格化はしばらく続く見込みで、安値でまとめ買いできる局面は限られる。日本は貝殻を含む二枚貝の対越取引で衛生・原産地の要件が厳しく、トレーサビリティを整えた加工事業者を選ぶことが調達の安定につながる。Lengerのように技術投資で品質を底上げしている加工大手は、要件をクリアする取引先の候補になりやすい。

ベトナム産水産物では、対米・対中シフトなど市場の重心が動く局面が続いている。水産物の中国シフトと日本の調達を扱った記事と併せて読むと、二枚貝の小口転換が単発の現象ではなく、ベトナム水産全体の調達構造の変化の一部だと見えてくる。

市場への波及──供給の柔軟性が競争力になる

買い手が小口・機動発注に動くほど、供給側には「需要の波に合わせて出せる柔軟性」が求められる。まとめて作って在庫で待つ従来型より、需要を見ながら加工量を調整できる事業者が有利になる。技術投資と品質管理でこの柔軟性を確保できるかが、これからの二枚貝輸出の競争力を分ける。スペイン・イタリア・米国という伸びる市場に、必要な時に必要な量を差し込めるかどうか。ベトナムの加工大手が示す対応は、価格上昇期のサプライチェーンをどう回すかの実例として、日本の調達担当にも参考になる。

参照元

Nong nghiep Moi truong: 海外バイヤーがアサリの小口分割注文へ転換

Vietnam+: Ample room to grow and develop Vietnamese clam exports

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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