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ベトナム水産、中国シフト鮮明 エビ・白身魚で日本の調達はどう動く

ベトナム水産物加工輸出協会(VASEP)が2026年6月にまとめた集計で、同国の水産輸出が1〜5月で前年同期比11%増の46億7000万ドルに達した。牽引役はエビ(19億ドル、11.5%増)とパンガシウス(9億500万ドル、12.6%増)。目を引くのは仕向け先の変化で、中国・香港向けが40.5%増と突出する一方、米国向けは10%減、EU向けも2.2%減と縮んだ。エビと白身魚を東南アジアから安定調達したい日本の水産バイヤーにとって、この「中国シフト」は供給余力と価格の両面で無視できない動きだ。本記事では検証済みの数値をもとに、日本の調達戦略への影響を読み解く。(為替は2026年6月時点の1ドル=約160円で換算)

目次

起点ニュースの要旨

VASEPによると、2026年1〜5月のベトナム水産輸出は46億7000万ドルで前年同期比11%増。品目別ではエビが19億ドル(11.5%増)で輸出全体の約40%を占め、パンガシウス(ナマズ目の白身魚)が9億500万ドル(12.6%増)と続いた。イカ・タコ、カニ・甲殻類、二枚貝も二桁増を記録した一方、マグロは6%減と振るわなかった。VASEPは2026年通年で8〜10%増、輸出額120億ドル超も視野に入るとの見通しを示している。

なぜ今「中国シフト」が起きているのか

仕向け先の構成が一変した

今回の数字で最も性格を変えたのは仕向け先の構成だ。最大市場に浮上した中国・香港向けは約12億ドルで40.5%増。これに対し、長くベトナム水産の主力市場だった米国向けは6億8900万ドルで10%減、EU向けも4億3560万ドルで2.2%減と後退した。日本向けは0.4%増、韓国向けは4%増とほぼ横ばい、ASEAN向けは16.8%増だった。

需要側の構造変化が押し上げた

中国では外食回復と中間層の水産消費拡大を受け、エビやロブスター、白身魚の引き合いが急増した。ベトナム産エビにとって中国は2025年に最大市場へ浮上し、活ロブスターの輸出も前年から急伸するなど、高単価帯で存在感を強めている。一方の米国は通関や関税をめぐる不確実性が需要を抑え、EUは景気と在庫調整で回復が鈍い。成長市場の中国へベトナムの輸出企業が販路の重心を移したのが、今回の構成変化の中身だ。

市場別データ(検証済み)

VASEP集計(2026年1〜5月、前年同期比)を整理すると、仕向け先で明暗がはっきり分かれている。

仕向け先 輸出額 前年同期比
中国・香港 約12億ドル +40.5%
米国 6億8900万ドル -10%
EU 4億3560万ドル -2.2%
日本 非公表 +0.4%
韓国 非公表 +4%
ASEAN 非公表 +16.8%

品目別では、エビ19億ドル(11.5%増)、パンガシウス9億500万ドル(12.6%増)に加え、イカ・タコ3億400万ドル(18%増)、カニ・甲殻類1億6000万ドル(19%増)、二枚貝1億2200万ドル(22.8%増)と、エビ・白身魚以外の多くの品目も伸びた。半面、マグロは3億7200万ドル(6%減)と落ち込んだ。なお米国向けについては、エビの反ダンピング税率が従来の35.29%から4.58%へ大幅に引き下げられており、年後半は対米輸出が持ち直す余地もある。

現地・業界の受け止め

VASEPは通年見通しについて、中国需要が堅調を保ち、パンガシウスが価格競争力を維持し、エビが競争力を高め、IUU(違法・無報告・無規制)漁業対応や原料のトレーサビリティ強化を進められれば、輸出120億ドル超も射程に入るとの条件を示している。中国需要を取り込めるかが当面の焦点という位置づけだ。

仕向け先の構成が米国減・中国急伸へ動く局面では、加工キャパシティと原料エビの配分が中国の高単価帯に傾きやすい。影響の出方は商材で異なる。価格の振れが大きいエビは数量・価格の条件交渉が先に動きやすく、価格競争力で選ばれるパンガシウスは中国の引き合い次第で日本向けの数量配分が後から効いてくる。中国勢との調達競合がエビ・白身魚で意識されつつある点も、輸入実務の前提として織り込む段階に入った。

日本の水産バイヤーへの示唆

この中国シフトは、日本の調達現場に三つの論点を突きつける。

1. 供給余力の「奪い合い」が始まる

中国向けが40.5%増という速度で伸びると、ベトナムの加工キャパシティと原料エビの一定割合が中国向けに優先配分される可能性が高まる。日本向けが0.4%増とほぼ横ばいなのは、日本需要の鈍さ・価格条件・品目構成の差など複数要因が絡むが、伸びる中国が供給を引き寄せる圧力も働いている。日本のバイヤーは「いつもの数量は確保できる」という前提を一度疑い、年間契約の数量・納期を早めに固める動きが要る。確認すべき軸は具体的だ。

  • エビの加工形態(HLSO・PTO・むき身など)ごとに、必要数量を仕向け先別契約に落とし込めているか
  • サイズ帯(尾数表示の規格)とグレーズ率を発注書で固定し、繁忙期の歩留まり変動に備えているか
  • 納期のリードタイムを通常期と中国需要期で分けて見積もっているか

2. 価格交渉の主導権が売り手に傾く

高単価で買う中国の存在は、ベトナム側の価格期待を押し上げる。スポット中心の調達は、中国の需要が強い時期に値上がりリスクを受けやすい。価格を平準化するには、次のような発注設計が効く。

  • 複数社・複数産地に分散し、1社・1産地への依存度を下げる
  • 中国の需要が高まる繁忙期の前に、年間数量の主要部分を契約で押さえる
  • スポット比率を抑え、固定価格と連動価格の組み合わせで相場変動を緩和する

3. パンガシウスは「白身魚の代替先」として再評価できる

パンガシウスは12.6%増と堅調で、価格競争力が維持されている。タラやスケソウダラなど他の白身魚の相場が高止まりする局面では、用途を絞って代替原料に組み込む選択肢が現実味を増す。

  • フライ・フィッシュバーガー向け:厚みと歩留まりを規格で固定すれば外食オペレーションに乗せやすい
  • 惣菜・煮付け向け:味付けで風味差を吸収でき、コスト訴求の主力にしやすい
  • ASC・BAPなどの認証品を選べば、トレーサビリティを売りにした小売・外食向けの訴求につながる

低排出グリーン米が日本へ初出荷された事例のように、トレーサビリティを前面に出した調達は日本の小売・外食でも通りやすく、白身魚でも同じ発想が応用できる。

業界・市場への波及

世界のエビ産地が中国を奪い合う

中国シフトはベトナム一国の話にとどまらない。エビは世界市場でインド・エクアドルとの競合が激しく、各国が成長市場の中国を狙う構図にある。ベトナムが中国で稼げるほど、対日・対米向けの価格と数量に綱引きが生じる。価格決定の主導権が産地・輸出側に傾く局面では、買い手の交渉余地はその分だけ狭まる。

米中二大市場が同時に伸びるシナリオ

米国の反ダンピング税率引き下げで対米輸出が回復すれば、ベトナムの供給は米中の二大市場に厚く配分される。この場合、日本向けの相対的な優先度がさらに下がる展開もありうる。輸出全体が好調な「成長局面」ほど、買い負けしないための調達体制が問われる。農林水産輸出が5ヶ月で307億ドルに達したことからも、ベトナムの食料輸出全体が勢いづいている現状がうかがえる。日本の加工・外食では、ベトナム一辺倒のリスクを織り込み、他産地・国産との組み合わせでポートフォリオを設計しておく意味が増している。

調達実務のチェックポイント

ベトナム産エビ・白身魚を扱う日本企業が、この局面で点検しておきたい実務項目を整理した。

論点 確認ポイント 対応の方向性
数量確保 中国向け優先で割当が細るリスク 年間契約の数量・納期を前倒しで固定
価格変動 中国需要期の値上がり 複数社・複数産地に分散、繁忙期前発注
品目代替 タラ等の高止まり パンガシウスを白身魚代替に組み込み
産地分散 ベトナム一辺倒のリスク インドネシア・インド・国産を併用
付加価値 価格競争に巻き込まれやすい トレーサビリティ・認証で差別化

優先順位を付けるなら、まず「数量確保」と「価格変動」から着手したい。中国需要が強い局面で最初に効くのが、年間契約での数量・価格の固定だからだ。そのうえで産地分散と品目代替を中期の備えとして組み、認証による付加価値は値崩れを避ける守りの一手として並行して進めると、調達全体の安定度が上がる。

よくある質問

ベトナム水産の「中国シフト」で日本向けの供給は止まりますか

止まる兆候はありません。日本向けは2026年1〜5月で0.4%増とほぼ横ばいを維持しています。ただし中国向けが40.5%増と急伸しているため、繁忙期には数量確保や価格でベトナム側の交渉力が強まりやすく、年間契約の前倒しや産地分散で備える価値があります。

パンガシウスはタラなどの白身魚の代わりになりますか

用途によっては有力な選択肢です。パンガシウスは2026年1〜5月で12.6%増と堅調で、価格競争力が維持されています。フライや惣菜、外食向けの加工原料として、相場が高止まりする他の白身魚の代替に検討する企業が増えています。味や食感は魚種で異なるため、用途ごとの試作で見極めるのが現実的です。

米国向けの減少はベトナム水産にとって痛手ではないですか

1〜5月は10%減でしたが、エビの反ダンピング税率が35.29%から4.58%へ大幅に引き下げられたため、年後半は対米輸出が持ち直す余地があります。米中の二大市場が同時に伸びる展開になれば、日本向けの相対的な優先度はむしろ下がる可能性があり、調達側は注視が必要です。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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