フエの農家が、水はけの悪い低湿の不良田を蓮(sen)に切り替え、稲作を大きく上回る収益を得ている。フーバイのLe Thi Hoai Uyen氏は蓮の作付けを2haから15ha超へ広げ、家族の年収は約10億ドン(1円≈170ドン換算で約590万円)に達した。稲では実らなかった土地が、実・葉・根茎まで売れる蓮田に変わった——この転換は、蓮の実や蓮茶といった健康素材を探す日本のバイヤーにとって、産地の育ち方を知る手がかりになる。
蓮は稲が苦しむ湛水環境で育ち、不良田を稼ぎに変える
フエ一帯には、地形が低く水が抜けにくいために稲の収量が上がらない田が広がる。蓮は湛水した環境をむしろ得意とし、稲が苦しむ条件で育つ。フォンディエンのTruong Duy Hoa氏は3haの蓮田で年間の蓮の実を約9トン収穫し、1haあたりの利益は約1.2億ドン(約71万円)に上るという。フォンディエン、フーバイ、フオンチャーなど複数の地区で、同じ「稲から蓮へ」の切り替えが進んでいる。
1ha収益50〜90百万ドンで稲作の3〜5倍、一株から複数商品が取れる
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 1作あたり収益(平均) | 50〜90百万ドン(約29万〜53万円) |
| 稲作との比較 | 3〜5倍 |
| 優良農家の利益(Hoa氏) | 約1.2億ドン(約71万円) |
| 蓮の実収穫量(Hoa氏・3ha) | 年約9トン |
フエ農業普及の集計では、蓮の1作あたり収益は1haで50〜90百万ドンが平均で、稲作の3〜5倍にあたる。単価が高いだけでなく、蓮は一株から複数の商品が取れる。実(hạt sen)、花(hoa sen)、葉(lá sen)、地下茎(ngó sen・củ sen)まで、部位ごとに売り先が分かれる。低収益の水田を蓮と観光に振り向ける動きはダナンでも起きており(低収益の水田が蓮と観光に変わる、ダナン・ダイアンの産地づくり)、供給源が一点に依存しない点は日本の調達側にとって安心材料になる。
「フエ産の蓮」で括らず、狙う部位と加工段階を先に決める
日本側から見た蓮の使いどころは三つに分かれる。蓮の実は乾燥品や餡の原料として和菓子・中華素材に、蓮の葉は蓮茶やブレンド茶の素材に、地下茎は食材として、それぞれ入口が違う。とくに蓮の実と蓮茶は健康志向の棚で産地の物語が効きやすく、フエという産地名はそれ自体がブランドとして機能しうる。ただし調達側が確認すべきは、部位ごとに加工の担い手が違う点だ。実の乾燥・脱渋、葉の乾燥・裁断、茎の鮮度保持は、それぞれ別の技術と設備を要する。どの部位を、どの加工段階で買うのかを最初に決めておかないと、供給者選びを誤る。
拡大の壁は季節性、通年供給には加工と集荷の設計が要る
蓮田の拡大は原料の供給量を押し上げる一方、収穫期が限られ、実も葉も鮮度が落ちやすい。日本向けに通年で回すには、乾燥・冷凍といった保存加工と、複数農家をまとめる集荷の仕組みが要る。稲が育たない酸性土をグアバ園に変えたホーチミン近郊の事例(米が実らない酸性土をグアバ園に、ホーチミン近郊のVietGAP転換)と同様、作付転換は「作れるか」より「売り切れるか」で成否が決まる。なお蓮田は花の時期に観光の場にもなり、農家が農産物と体験の両方から収入を得られる。観光収入があるぶん経営が安定し供給の継続性が高まる点は、日本の調達にとって効いてくる。素材を物語で売る売り方も中部で広がっており(ダナンの作り手はなぜ素材を「物語」で売るのか)、蓮はその文脈に乗せやすい。ただし物語が先行して品質管理が伴わない産地もあるため、話の魅力と検査体制は必ず切り分けて確かめたい。
蓮の実か蓮茶に絞り、検査記録と年間供給計画を求める
接点を探るなら、まず狙う部位を一つに絞る。蓮の実なら乾燥度・粒径・脱渋の有無と残留農薬の検査記録、蓮茶なら葉の乾燥条件と衛生管理を確認する。いずれも収穫期が限られるため、年間の作付計画と加工能力を早めに共有してもらうのが安全だ。普及員が販路づくりに関与している地区なら、農家単位ではなく地区単位での相談が近道になる。