NÔNG NGHIỆP VIỆT NAM — TẠP CHÍ NÔNG NGHIỆP ĐÔNG NAM Á

ダナンの作り手はなぜ素材を「物語」で売るのか

ベトナム中部ダナンで、農産物や水産加工品を「素材そのまま」ではなく、産地の物語と贈答用のパッケージに包んで売る作り手が増えている。ベトナム農業環境メディアが伝えたのは、ナムオー魚醤の老舗がギフト箱への投資で贈答品を売上の約3割まで伸ばし、ホイアンの食品メーカーが瓶詰めをティーバッグや携帯スナックに作り替えてOCOP4つ星を取った、という現場の動きだ。日本で乾燥野菜やOEMギフトを扱う食品関係者にとって、これは「値付けは素材で決まる」という思い込みを崩す事例になる。同じ原料でも、誰が・どんな背景で・どう手渡すかを設計し直すだけで単価が変わる。その具体を読み解く。

目次

起点ニュースの要旨:素材に「新しい服」を着せる作り手たち

報じられたのは、ダナンとその周辺の加工食品メーカーが、農水産物を観光客向け・法人向けの贈答品として再設計している流れだ。中心にいるのが、ナムオー魚醤の老舗ブランド「Hương Làng Cổ(フォン・ラン・コー)」。代表のBùi Thanh Phú(ブイ・タイン・フー)氏は、村の風景や伝統的な魚醤づくりを描いたギフト箱に投資し、贈答用商品が総売上の約3割を占めるまでに育てた。「いまの客はナムオーとダナンの記憶を持ち帰りたがる」という同氏の言葉が、この戦略の核を端的に表している。

もう一社、ホイアンの「Mẹ Mít Food(メ・ミット・フード)」を率いるThái Thị Nhị(タイ・ティ・ニ)氏は、伝統的な瓶入りの茶をティーバッグに、丸ごと一本のスナックを携帯しやすい小さなバーに作り替えた。黒ごまと蓮の実を使った穀物シリアルと薬草茶「thọ mộc trà(トー・モック・チャ)」でOCOP4つ星を取得している。土産専門の「Vigift」を率いるPhan Thanh Hà(ファン・タイン・ハ)氏は、地元の加工品を味・ストーリー・地域性で束ねた贈答セットに編集し、法人や海外の取引先に卸す。観光会社「Glamour Adventure」のTrần Thị Thúy Hường(チャン・ティ・トゥイ・フォン)氏は、欧米・豪州の客向けツアーの土産パックに地元加工品を組み込んでいる。

背景:観光の回復と「OCOP」が後押しする産地ブランド化

この動きが今ダナンで起きているのには、二つの追い風がある。一つは観光の本格回復。ベトナムは2025年も観光振興プログラムを打ち出し、外国人客の取り込みを国策で進めている。土産需要が戻れば、産地の加工品にとって最大の出口が再び開く。もう一つが「OCOP(One Commune One Product/一村一品)」という国の枠組みだ。

OCOPは、各地域固有の農水産加工品を評価・認証し、観光土産として後押しする制度で、1〜100点で採点して3つ星(50〜69点)から5つ星(90点以上)まで格付けする。4つ星は70〜89点に相当し、品質と市場性で3つ星を上回る水準を意味する。2025年7月時点で全国の3つ星以上の認証品は17,068件、最高位の5つ星は126件にとどまる。つまり4つ星は「全国流通を狙えるが、まだ希少」というポジションで、贈答品としての説得力を持たせる肩書きになる。Hương Làng Cổもナムオー魚醤でダナンのOCOP4つ星に認証されており、この格付けが「観光土産」から「贈れる地域ブランド」への橋渡しになっている。

データ・比較:何が単価を動かしたのか

今回の事例で検証できる数値を整理すると、価値の源泉が「素材」ではなく「設計」にあることが見えてくる。

作り手 素材・原料 やったこと(再設計) 成果(裏取り済み)
Hương Làng Cổ カタクチイワシと海塩の魚醤 村の物語を描いたギフト箱に投資 贈答品が売上の約3割に
Mẹ Mít Food 黒ごま・蓮の実の穀物、薬草茶 瓶→ティーバッグ、一本→携帯スナックに刷新 2品目でOCOP4つ星
Vigift 地元の各種加工品 味・物語・地域性で束ねた贈答セットに編集 法人・海外取引先へ卸し

注目したいのは、Hương Làng Cổの魚醤がカタクチイワシと海塩だけを甕で長期発酵させる、原料も製法も変えていない伝統品である点だ。約400年の歴史を持つナムオーの魚醤づくりは国の無形文化遺産に位置づけられている。素材は据え置いたまま、変えたのは「箱」と「物語」と「届け方」だけ。それで贈答が売上の3割を占める柱に育った。Mẹ Mít Foodも原料の素性や自然由来という核は保ちつつ、形状を持ち運びやすく贈りやすい形に変えただけだ。

現地・業界の反応:作り手・流通・観光の三者が同じ方向を向く

現地で語られている声を意訳すると、三者三様だが向いている先は同じだ。作り手側のBùi Thanh Phú氏は「客は味だけでなく記憶を買う」という趣旨を語り、商品を体験の持ち帰り装置として捉えている。Mẹ Mít Foodは「素性が明確で自然由来」という核を崩さずに形だけ変える、という線引きを明確にしている。中身の信頼を担保したまま、贈答の利便性を足す発想だ。

流通側のVigiftを率いるPhan Thanh Hà氏は、贈答セットが成立する条件として「おいしさ・品質・美しさ(ngon, chất lượng, đẹp)」の三つを挙げている。味と品質だけでなく、贈り物としての見た目まで揃って初めて売れる、という現場感覚だ。観光側のGlamour Adventureは、加工品を「地域の文化大使」として欧米豪の客に手渡す位置づけで、観光が地元農産物を国際市場へ運ぶ橋になり得る、と捉えている。作り手が物語を込め、流通が編集し、観光が運ぶ——この分業が回り始めているのが今のダナンだ。

日本の食品関係者への示唆:素材は変えず「文脈」を作り替える

ここからが本題だ。乾燥野菜やOEMギフトを扱う日本の作り手にとって、ダナンの事例は「高単価化=高級素材」ではないことを示している。学べる論点は三つに整理できる。

第一に、原料を変えずに単価を上げる経路がある。Hương Làng Cổが魚醤の中身を一切変えずに贈答3割を作ったように、乾燥野菜なら産地・栽培の背景・作り手の顔を一枚の物語に束ね直すだけで、同じ素材が「贈れるもの」に変わる。京都産の乾燥野菜が持つ土地の文脈は、本来そのまま物語の素材になる。

第二に、形状と単位の作り替えだ。Mẹ Mít Foodが瓶をティーバッグに、一本を小分けスナックに変えたのは、贈る・配る・持ち運ぶという行為に合わせて単位を設計し直したということ。乾燥野菜でも、大袋の業務用と、贈答に向く小分け・詰め合わせとでは、同じ原料でも狙える価格帯と売り場がまったく違う。OEMギフトの引き合いに対しては、中身の品質説明よりも「誰に・どんな場面で渡すか」を起点に単位とパッケージを提案すると刺さりやすい。

第三に、第三者の格付けや認証を「贈れる肩書き」として使う視点だ。ベトナムのOCOPが観光土産から地域ブランドへの橋渡しになっているように、日本でも産地認証や受賞歴は、贈答シーンで相手に渡す安心の言語になる。効能をうたうのではなく、「どこの・どんな基準を通ったものか」という事実を物語に編み込むのが、景品表示の観点でも安全で効果的だ。

業界・市場への波及:観光×加工品は輸出の入り口になる

ダナンの構図は、観光土産が国際市場への助走路になることを示している。Glamour Adventureが欧米豪の客に加工品を手渡し、Vigiftが海外取引先に卸す流れは、まず観光客に試され、評価されたものが越境取引に乗っていく、という順序だ。OCOPの4つ星・5つ星が「全国流通・輸出を狙える」ポジションとして設計されているのも、観光内需を踏み台に外需へ向かう国の意図と一致する。

日本の乾燥野菜・加工食品の作り手にとっても、インバウンドの土産需要は単なる小売ではなく、海外バイヤーや在外の取引先に素材と物語を試してもらう「テストマーケティングの場」になり得る。観光客が持ち帰った一箱が、後の継続発注やOEMの引き合いにつながる経路を、最初から設計に織り込む価値がある。

実用情報・関連リンク

ベトナムの産地ブランド化や加工・輸出の動きは、品目ごとに事情が異なる。物語で素材を売る発想や、加工・輸出の現場感をさらに具体的に知りたい場合は、以下の関連記事も参考になる。

まとめ:次の一手は「同じ素材の物語と単位を作り直す」

ダナンの作り手が教えるのは、高単価化は新しい原料探しではなく、いま手元にある素材の文脈・形状・届け方の再設計から始まる、ということだ。乾燥野菜・OEMギフトの担当者がすぐ動けるアクションは三つに絞れる。(1) 既存の主力品について、産地と作り手の物語を一枚にまとめ、贈答用の小分け・詰め合わせ単位を一案作る。(2) その単位を「誰に・どの場面で渡すか」から逆算してパッケージを設計し、OEMの引き合いに対しても素材説明ではなく贈答シーンから提案する。(3) 産地認証や受賞歴など第三者の事実を、効能ではなく「安心の言語」として物語に組み込む。中身を変えずに売り場と価格帯を一段上げる余地が、たいていの素材にはまだ残っている。

参照元

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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