「A級ばかりが並んだ2〜3年前とは、産地の様子が変わってきた」。ベトナム中部高原ダクラク省で2026年9月、加工大手チャントゥー(Chánh Thu)が開いたドリアン品質のセミナーに、行政・農業普及・企業・協同組合・生産者ら約200人が集まった。収穫量は毎年二桁で伸びるのに、輸出できるA級果の割合は下がる——この逆説をどう抑えるかが議題だった。ベトナム産ドリアンを冷凍・加工や贈答用で扱う日本の輸入者にとっても、どの産地・どの工場と組むかを選び直す材料になる。
ダクラクの工場に200人が集まった理由
会場はチャントゥーのダクラク工場。同社のゴー・トゥオン・ヴィ会長兼CEOは、自社の買付量が2024年の1万8000トンから2025年に3万1000トン、2026年は4万トンに届く見通しだと示した。わずか2年で買付が倍以上になる速さは、産地全体の膨張をそのまま映している。増えているのは量だけで、選別して輸出できる果実の歩留まりは追いついていない、というのが会議の共通認識だった。
チャントゥーは冷凍ドリアンや生果の対中輸出で知られ、原料を農家・協同組合から広く買い集める。買付を増やすほど、畑ごとにばらつく品質を工場側でどうそろえるかが利益を左右する。セミナーが技術セミナーの体裁をとりながら、実際には調達網の立て直しを議論する場になったのはそのためだ。
買付4万トン、全国生産は200万トンへ
数字で追うと膨張の規模が見える。全国のドリアン生産量は2024年の153万3000トンから2025年に約180万トン、2026年は200〜210万トンへ伸びる見込みだ。産地の主役であるダクラクをはじめ、中部高原とメコンデルタで作付けが一気に広がった結果である。
| 指標 | 2024年 | 2025年 | 2026年(見込み) |
|---|---|---|---|
| チャントゥー買付量 | 1.8万トン | 3.1万トン | 4.0万トン |
| ベトナム全国生産量 | 153.3万トン | 約180万トン | 200〜210万トン |
| A級果の平均価格 | 9万ドン/kg | 8万ドン/kg | 7万ドン/kg |
タイの端境期にあたる9〜12月はベトナム産が世界供給の中心に立つ時期でもある。供給の窓が開くこの局面についてはタイ端境と調達の窓を扱った記事で詳しく触れた。量が世界最大級に育ったいま、次の課題は質へ移っている。
A級平均が9万ドンから7万ドンへ下がった
価格の推移が品質の緩みを裏づける。A級果の平均価格は2024年の1kgあたり9万ドンから、2025年に8万ドン、2026年は7万ドンへ下がる見通しだ。7万ドンはおよそ410円(1円=約170VND、2026年9月時点)にあたる。相場全体が下がる中でA級まで値を崩すのは、選別基準がゆるみ、B級・C級が混じったロットが「A級」として出回っているサインだと会議では指摘された。
ゴー・トゥオン・ヴィ氏は、安値での買い付け慣行、産地コード(栽培地の追跡番号)の適用率の低さ、過剰な施肥や不適切な農薬使用、統一された栽培基準の欠如を、品質を崩す4つの要因として挙げた。前農業農村開発相のレ・ミン・ホアン氏は、産地と企業が短期の高値を追ってばらばらに動く構図そのものを見直すべきだと述べ、契約に基づく長期の連携を促した。センサー技術を提案したSCベトナムは、圃場の土壌と気象をリアルタイムで測り、施肥・灌漑を地域ごとの指針に落とし込む仕組みを示した。畑単位のデータで品質を管理する方向は、施肥をそろえてA級比率を8割に引き上げたダクラクの農家の事例とも重なる。
日本の食品輸入は工場のどこを見るか
日本向けの示唆は明快だ。ベトナム産ドリアンの供給量が増えるほど、単価ではなく品質の安定で工場を選ぶ余地が広がる。買い手が確認したいのは、産地コードで畑まで遡れるか、選別基準を工場が数値で持っているか、そして買付量が急増する中でも歩留まりの管理を続けているか、の3点だ。チャントゥーのように買付を年4万トン規模へ広げながら品質セミナーを主催する企業は、量と質を両立させる意思を外に示している供給元と読める。
逆に、相場より明らかに安い提示は、選別のゆるいロットが混じる可能性を含む。冷凍ドリアンや加工原料として日本で扱う場合、A級表示だけを信じるのではなく、産地コードの有無と工場の選別工程を契約前に確かめる工程が、返品や品質クレームを防ぐ最短の保険になる。
対中50%依存が抱えるもう一つの弱点
膨張を支えてきたのは中国市場だ。2025年に中国はベトナムから生果941,000トンを輸入し、タイの920,000トンを史上初めて上回った。中国市場でのベトナムのシェアは2023年の34.55%から2025年に50.37%へ伸び、供給の半分をベトナムが握る構図になった。
ただし対中一極は、検疫の運用が厳しくなった瞬間に出荷が止まるもろさと背中合わせだ。産地はすでに輸出先の分散を進めており、韓国向けの伸びはその一例で、対韓ドリアンが7カ月で188%増えた動きは日本のバイヤーにも示唆が多い。品質を数値で証明できる産地は、中国以外の市場でも通用する。量の膨張と質の管理を同時に進める企業ほど、輸出先を選べる立場に近づく。
仕入れ担当が次に確認したいこと
ベトナム産ドリアンの調達を検討するなら、次の3手が実務的だ。第一に、取引候補の工場に産地コードの管理範囲と選別基準の数値を出してもらう。第二に、買付量が急増する2026年産について、A級の歩留まりが前年からどう動いたかを聞く。第三に、対中依存を下げる出荷計画があるかを確認し、検疫リスクを供給元と分担できる関係かを見極める。量が世界最大級に育ったいまこそ、価格表の一番安い行ではなく、品質を証明できる工場を選ぶ交渉に切り替える好機だ。
参照した現地報道
本記事は農業環境紙(Nong nghiep va Moi truong)の報道をもとに、数値を原文で確認して構成した。