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越ドリアン輸出14.7億ドル、冷凍が生果並みの値で止まる理由

ベトナムのドリアン輸出額は、2021年の1億7770万ドルから2025年のおよそ38億5000万ドルへ、4年で20倍を超えた。2026年も1〜7月で14億7000万ドル、前年同期比44.1%増と伸びが続く。ただし金額の内側を開くと、生果の出荷に依存し、冷凍・加工・ブランドの層が薄い構図が見える。日本の農産物バイヤーにとって、この薄さは調達リスクであると同時に、加工とOEM供給で関与できる空白でもある。

目次

7カ月で14.7億ドル、輸出の中身は生果に偏る

2026年1〜7月のドリアン輸出は14億7000万ドル。うち中国向けが13億8000万ドルで前年同期比49.6%増、市場シェアは9割を超えた。ドリアン単体でベトナムの青果・野菜輸出の約45%を占める。金額は積み上がっているが、その大半は生果を一つの市場へ流す構造に支えられている。買い手が一極に集中し、しかも常温の生果が主力という組み合わせは、価格交渉の主導権が産地側に残りにくいことを意味する。

輸出量はタイに並び、世界首位をうかがう

2026年の作付面積は約20万ヘクタール、うち収穫期に入るのが12万9500ヘクタール、生産量はおよそ208万トンが見込まれる。ベトナムはドリアンの輸出量でタイに並び、世界首位をうかがう位置まで来ている。量の拡大は達成しつつあるが、単価をどう引き上げるかという次の課題が残されたままだ。

冷凍は生果より2割高どまり、価格は積み上がらない

冷凍ドリアンの輸出量は2024年の約4600トンから2025年には9万1000トン超へ、およそ20倍に増えた。2026年第1四半期のドリアン輸出は約2億2170万ドルで前年同期比230%増と、伸びの多くを冷凍が牽引している。ところが平均単価はトンあたり約4302ドル、前年同期比で2割強、生果比でも18〜22%高いにとどまる。凍らせて日持ちと輸送距離を伸ばしても、上乗せは2割前後で頭打ちになっている。冷凍化それ自体は加工ではなく保存であり、ブランドや用途に踏み込まないかぎり単価は生果の延長線から離れない。中国向けの卸値が数量増と裏腹に下押しされた局面は、輸出3割増でも中国で卸値が半減した逆説と市場分散の必要としてすでに表面化していた。

産地では選別・熟成・貯蔵の水準がそろわない

ベトナム側の資料も、保存・加工の技術が「同期していない」と認めている。実態は冷蔵・冷凍と生果輸出に偏り、生産から集荷、一次加工、加工、消費までの連携が緩く、責任と利益を分け合う仕組みが定まっていない。産地ごとに選別基準や熟度管理がばらつけば、同じロットでも品質が振れ、加工原料としての歩留まりが読めない。逆にいえば、圃場単位で品質をそろえられる産地は評価が跳ね上がる。ダクラクでは施肥設計でA級を8割まで引き上げ、キロ6万2000ドンで買われる農家が現れており、品質の平準化が価格に直結し始めている。

マレーシアはムサンキンを品種ブランドで売る

比較対象になるのがマレーシアだ。ムサンキンという品種名をそのままブランドに仕立て、冷凍ペースト、フリーズドライ、真空パックのパルプへ展開し、ハラル・HACCP認証と12カ月の賞味期限を武器に高価格帯を確保している。売っているのは果実ではなく、品種の物語と加工形態だ。ベトナムのRi6やモントンは数量では上回るが、産地名や品種名が買い手の記憶に残るブランドへ育っていない。量で先行し、単価とブランドで後れるという現在地が、ここにはっきり出ている。

日本が組めるのは加工とOEMの空白

この構図は、日本の食品メーカーにとって入りやすい隙間を作る。ベトナムが薄いのは加工技術、品質管理、そして用途開発の三つで、いずれも日本側が積み上げてきた領域と重なる。生果を買い付けるだけでなく、冷凍パルプを製菓・製氷・製パンの原料として受け入れ、自社ブランドやプライベートブランドの加工品としてOEMで組み立てる関わり方が描ける。産地に近い一次加工の設計に日本の基準を持ち込めば、歩留まりと安全性の両方を握りながら、価格交渉の土台を共同で作れる。

ドライ・ペースト・冷凍原料で用途を広げる

加工の出口は生果一本ではない。ドライ、ペーストやピューレ、業務用のIQFパルプへ形を変えれば、季節と鮮度の制約を外して通年で供給できる。日本にはドライフルーツやフルーツ加工のOEMで培った配合・乾燥・充填のノウハウがあり、これを産地側の一次加工とつなげば、原料の段階から用途を設計できる。干し果実を産地コードと結びつけて日本へ運ぶ流れは、ドンタップの干しマンゴーを353の産地コードで日本へ運ぶ事例が先に示している。マンゴーで通った道筋は、冷凍とドライを組み合わせるドリアンにも応用が利く。

産地コードと検査体制が調達の前提になる

加工で組む前に、トレーサビリティが調達の入口になる。ベトナムには輸出承認済みの栽培地域コードが1599、包装施設が281あり、2026年8月14日には栽培地域401カ所と施設166カ所が追加で承認された。検査ラボは政府13、地方10、民間29の計52まで整えられている。2026年7月にはインドが生果を解禁し、出口の選択肢も広がった。日本のバイヤーが加工・OEMで踏み込むなら、どの産地コードと施設を通ったロットかを最初に確認し、検査体制と紐づけて契約に落とす手順を前提に置くことになる。

バリューチェーン刷新に日本の設備と技術が入る

ベトナム側は「問題が起きてから対処する発想から、早くから遠くまで能動的に備える発想へ」転換すると掲げている。掲げた刷新の中身は、コールドチェーン、冷凍ライン、品質管理、サプライチェーンのデジタル化への投資であり、いずれも日本の設備と技術、そしてOEMの座組みが入り込める領域だ。量で世界首位をうかがう産地が、単価とブランドという次の壁に当たっている。その壁を越える工程に、果実の買い手としてではなく加工の共同事業者として関与できるかどうかが、日本側に開かれた選択になる。

参照元:
VietnamPlus「Sầu riêng Việt Nam: từ trái ngọt xuất khẩu đến bài toán nâng tầm chuỗi giá trị」(2026年9月3日)
VietnamNet「Vietnam poised to overtake Thailand as world’s largest durian exporter」
FreshPlaza「Vietnam aims for 2.08 million tons of durian in 2026」
FreshPlaza「Vietnamese durian exports rise 230% on frozen durian demand」

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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