ベトナムのドライフルーツ・濃縮果汁大手ナフーズ・グループ(Nafoods Group)が、基幹システムSAP S/4HANAをグループ全体で正式稼働させ、2026年上期の純利益を前年同期のほぼ2倍に伸ばした。ロンアン省では凍結乾燥に特化した第2工場も動き出している。原料のロット管理と財務を一つの台帳に載せた供給元がどう強くなるのかは、ベトナム産のドライフルーツや果汁を仕入れる日本の食品・OEM関係者が取引先を選ぶ物差しに直結する。
8カ月かけてグループ10社を1つの台帳に載せた
ナフーズは8カ月の導入を経て、SAP S/4HANAを本稼働させた。会社側の説明では、10の子会社を統一されたデータ基盤に束ね、12のサブシステムを含む形で、調達・生産・流通・販売・品質管理・財務までを一つの流れでつないだ。畑からの原料受け入れ、加工、在庫、出荷、原価がリアルタイムで結びつくため、どのロットがどの原料由来かを財務データまで含めて追える体制になる。
果実の加工は、収穫時期や産地でばらつく原料を、規格の決まった製品にそろえる工程の連続だ。子会社ごとに分かれていた台帳を統合すると、グループ全体で原価と歩留まりを比べられるようになり、赤字を出している工程や原料を早く見つけられる。業績の急伸は、この土台づくりと同じ時期に起きた。
上期純利益が前年のほぼ2倍、年間実績に半年で並ぶ
2026年上期の数字は、加工事業の伸びをはっきり示している。純利益は約1,406億ドンで前年同期比96.3%増、税引前利益は約1,649億ドンで同90.7%増。四半期で見ると、第2四半期の売上高は約7,182億ドン(同5.6%増)、純利益は約805億ドン(同37.2%増)だった。上期の純利益だけで、2025年通年の約1,456億ドンにほぼ並んだ計算になる。
| 指標 | 2026年上期 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 純利益 | 約1,406億ドン | +96.3% |
| 税引前利益 | 約1,649億ドン | +90.7% |
| 第2四半期 売上高 | 約7,182億ドン | +5.6% |
| 第2四半期 純利益 | 約805億ドン | +37.2% |
1,406億ドンは日本円でおよそ8.3億円(1円=約170VND、2026年9月時点)にあたる。売上高の伸びが1桁にとどまる一方で利益率が跳ねたのは、深加工の比率を上げ、原価を締めた効果と読める。果実の輸出構造そのものが入れ替わる動きはカシューが竜眼に並んだ果実輸出の変化にも表れており、加工力を持つ企業が利益を取りやすい局面に入っている。
ロンアンの第2工場が凍結乾燥に踏み込んだ
生産能力の拡張も同時に進む。2026年4月に動き出したロンアン第2工場は、凍結乾燥(フリーズドライ)と昇華乾燥の設備を備え、プレミアム帯のドライフルーツ・スナックに特化した。ジア・ライ省の第4工場も2026年内の稼働を予定し、深加工の受け皿をさらに広げる。凍結乾燥は色と香りを残したまま水分だけを抜けるため、砂糖漬けや熱風乾燥より単価の高い製品を作れる。日持ちのよさと軽さは、輸出向けの物流でも効いてくる。
冷凍・乾燥といった加工が生果並み、あるいはそれ以上の付加価値を生む流れは、冷凍ドリアンが生果並みの値で取引される背景とも共通する。原料の産地に工場を近づけ、鮮度の高いうちに加工へ回す体制が、ナフーズの利益率を押し上げている。
日本のドライフルーツ調達は何が変わるか
日本側の実務に落とすと、供給元選びの基準が一段上がる。ドライフルーツやパウダー、濃縮果汁を海外から仕入れる際、日本の食品メーカーやOEMが気にするのは、ロットごとの品質のばらつき、産地の追跡、そして監査への対応だ。ERPで原料から出荷までを一元管理する供給元は、この3点で説明責任を果たしやすい。ロット番号を伝えれば産地と加工履歴が返ってくる体制は、取引の信頼を数段引き上げる。
凍結乾燥ラインを持つ供給元が増えることは、日本のバイヤーにとって選択肢の広がりでもある。国産の乾燥野菜やドライフルーツを扱う立場から見ると、色や香りを残す加工技術は、菓子・製菓原料や健康食品の素材として使い道が広い。仕入れの相談では、対応できる乾燥方式(熱風か凍結乾燥か)と最小ロット、そして品質保証書の出し方を、早い段階で確認しておきたい。中国以外の販路を広げる産地の動きは熱帯果実がトルコ市場を開いた事例にも見え、日本向けの供給余地も広がっている。
6,800億ドンの環境資金を集めた供給元の狙い
資金面でもナフーズは動いている。オランダのFMOとresponsAbility Investments AGと組み、6,800億ドン規模のグリーン資金を調達した。日本円でおよそ40億円(同レート)にあたるこの資金は、持続可能な原料調達や省エネ設備への投資に向かうとされる。証券会社VNDirectは同社株の適正値を1株60,100ドンと評価しており、市場も加工力の強化を前向きに見ている。
環境や持続可能性への投資は、単なる看板ではない。EUや日本の小売・食品メーカーは、原料の追跡と環境配慮を取引条件に組み込む例が増えており、その要件を先に満たす供給元ほど、長期契約で選ばれやすくなる。ERPと環境資金を同時にそろえる動きは、輸出先の要求水準を先読みした布石と読める。
仕入れ担当が確認したい3つの点
ベトナム産のドライフルーツや果汁の調達を検討するなら、次の3点を供給元に投げかけたい。第一に、原料から出荷までをロット単位で追える仕組みがあるか。第二に、凍結乾燥など単価の高い加工に対応でき、最小ロットと納期がこちらの計画に合うか。第三に、環境・品質の認証や監査への対応実績があるか。業績と設備を同時に伸ばしている供給元は、価格交渉より先に、こうした体制を根拠に選ぶ相手として検討する価値がある。
参照した現地報道
本記事は農業環境紙(Nong nghiep va Moi truong)の報道をもとに、金額をベトナム語原文で確認して構成した。