ベトナムが2026年のドリアン輸出目標を約40億ドルに置いた。2025年実績の38.5億ドルを上回る水準だが、これは達成済みの金額ではなく、政府が掲げた目標である。背景には、輸出先の9割超を中国が占める構造から抜け出す動きがある。7月にインドが生鮮ドリアンの輸入を解禁し、豪州・ニュージーランドとの市場開放交渉も続く。日本の輸入側にとっては、供給余力と価格交渉の前提が動く局面になる。
インドが7月13日、ベトナム産生鮮ドリアンを解禁
インドは2026年7月13日、植物検疫規則(Phytosanitary Order)の第5次改正を発効させ、ベトナムを生鮮ドリアンの輸入対象国に加えた。インド側は追加の検疫申告を求めておらず、特別な輸入条件も課していない。人口が10億人を超え、中間層が拡大する市場が、正式な販路として開いた形だ。これでベトナム産ドリアンの輸出先は20か国を超えた。
解禁が初年度から大きな数量に直結するとは限らない。ただ、単一市場に依存してきた品目に、中国以外の大口の受け皿が一つ増えた事実は、供給側の交渉姿勢を変える材料になる。
中国向けが8か月で18.5億ドル、全体の95%を占める
2026年1〜8月のドリアン輸出額は約19.5億ドルで、うち中国向けが18.5億ドル、比率にして95%を占めた。中国の需要期と検疫通関の状況が、そのままベトナム産の相場を左右してきた。上期には輸出量が伸びても中国国内の卸値が下押しされる場面もあり、量の拡大が単価に結びつかない越ドリアンの逆説が表面化していた。
中国は同時に、越産ドリアンの主要な買い手として調達量を積み増している。中国が上期に8.46億ドル規模で買い付けた事実は、供給の主導権が依然として中国側にあることを示す。この95%は、価格形成の中心が動いていない現実の裏返しでもある。
「40億ドル」は2026年の目標で、2025年実績は38.5億ドル
報道の見出しに並ぶ40億ドルは、2026年通年の目標であって確定した実績ではない。ベトナム農業環境省は、最低でも2025年並みの38.5億ドル、上振れれば40億ドル前後と置いている。1〜8月で19.5億ドルまで積んだ進捗を踏まえると、残る4か月で20億ドル超を上乗せする計算になり、達成は中国の需要期の戻りと単価次第だ。
調達の意思決定では、この目標値を実績と読み違えないことが前提になる。40億ドルは供給拡大の意欲を示す指標であって、玉が潤沢に出回る保証ではない。
産地コードが累計1,800超、7月1日から電子トレーサビリティが稼働
8月14日の中国当局との協議を経て、栽培地コードが567件新規付与され、登録は累計で1,800件を超えた。輸出可能な畑と梱包施設が制度上増えたことで、対象ロットの裾野が広がる。産地コードは仕向け先ごとに管理され、コードの有効性が通関の可否を分ける。ダクラク産で産地コード280が調達の勘所になったように、地域別のコード付与状況は仕入れ計画の前提になる。
あわせて7月1日から電子トレーサビリティが稼働した。畑から梱包施設までの履歴をコードで追える仕組みで、輸出先の検疫要件に応える基盤になる。買い手側から見れば、ロットの出所を確認する手段が制度として整いつつある。
豪州・ニュージーランドは交渉段階で、解禁時期は未確定
ベトナム農業環境省は、インドに続く有望市場として豪州・ニュージーランドとの交渉を続けている。ニュージーランドにはドリアンとパッションフルーツ、豪州にはドリアンと切り花の輸入ライセンスを求めている段階だ。両国とも解禁時期は決まっておらず、現時点で数量が動く販路ではない。
それでも交渉が前進すれば、中国・インドに加えた第三、第四の受け皿になる。分散の効果は市場が増えるほど積み上がる性質のもので、豪州・NZの動向は中期の供給構造を占う手がかりになる。
輸出先の分散が日本の調達に生む供給余力
中国一極から分散が進むと、ピーク期に中国へ集中していた玉が他市場へも回るようになる。中国側の検疫や在庫調整で通関が滞った局面では、行き場を失った数量が中国以外の買い手に流れ、単価が緩む場面があった。日本の輸入側にとっては、玉不足時の代替調達余地が広がる可能性がある。
ただし、生鮮ドリアンの対日輸入は日越間の検疫協議が前提になる別マターで、インド解禁がそのまま日本向け生鮮の解禁を意味するわけではない。日本の買い手が現実に接点を持つのは、冷凍・加工原料としてのドリアンが中心になる。この領域では、原料相場が中国需要に引きずられて動いてきた分、分散による相場の安定は調達コストの読みやすさにつながる。
中国依存の緩みが価格交渉に及ぼす影響
これまでは中国の需要と価格が越産ドリアンの実勢を事実上決めてきた。売り先が中国にほぼ限られる状況では、買い手が価格を主導する余地は小さい。輸出先が20か国超に広がり、インドの大口が加わると、単一市場の値動きに振られにくくなる。
買い手側の実務では、複数の産地コードと梱包施設から見積を並べ、条件を比較する余地が広がる。供給元が一つの需要期に縛られなくなるほど、季節や通関事情に左右されない交渉がしやすくなる。分散は、売り手の値決め力が一方的に強い状態を少しずつほぐす方向に働く。
日本の輸入側が確認したい検疫条件と産地コード
調達実務で押さえたい点は三つに絞れる。第一に、対象ロットの栽培地コードと梱包施設コードが有効で、仕向け先の登録に含まれているか。第二に、7月から稼働した電子トレーサビリティで畑まで履歴を追えるか。第三に、冷凍・加工品として輸入する場合の温度帯や残留基準など、日本側の受け入れ条件を満たすか。
生鮮を対日で扱う道は日越の検疫協議が前提で、個別の条件は都度確認するしかない。産地コード・トレーサビリティ・検疫の三点を軸に、供給元の書類と実態を突き合わせる作業が、分散局面では従来より効いてくる。
2026年後半に向けた見通し
目標の40億ドルに届くかは、中国需要の戻りと単価の回復にかかる。インド解禁は初年度から大量の出荷につながるとは限らないが、販路の複線化は中期の相場安定に効く。豪州・NZの解禁が加われば分散はさらに進み、越産ドリアンの供給構造は中国一極から徐々に離れていく。
日本の買い手にとっては、コードの有効性、トレーサビリティの追跡可否、検疫要件の三点を軸に、複数産地からの見積を並べて臨む場面が増える。中国依存の95%がどこまで下がるかが、来期以降の調達余力と価格交渉力を測る物差しになる。
参照元:
Vietnam targets durian exports of around 4 billion USD in 2026(VietnamPlus, 2026-09-03)
India officially opens market to Vietnamese fresh durian(VietnamPlus)
India officially opens market to Vietnamese fresh durian(VOV)
Việt Nam targets durian exports of around $4 billion in 2026(Vietnam News)