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日本の食品調達で越産が4位、次に問われるのは環境とトレーサビリティ

在ホーチミン日本総領事館の田原尚子農務官が7月30日の会議で、環境・グリーン基準を満たすベトナム農産物への日本の需要を「非常に潜在力がある」と述べた。背景には、2025年にベトナムが日本の農林水産物・食品の供給国として前年6位から4位へ順位を上げた事実がある。日本の食品メーカーや商社にとって、この動きは「どの産地から、どんな証明とともに買うか」という調達設計の見直しを迫るものだ。何が伸び、何が次の条件になるのかを具体的に整理する。

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田原農務官が指した「潜在力」の中身は、林産物3,744億円とコーヒーの急伸だった

田原氏の発言は精神論ではなく、直近の輸入実績に裏づけられている。ジェトロがまとめた2025年の日本の農林水産物・食品輸入額で、供給国上位は米国(2兆3,481億円)、中国(1兆8,065億円)、タイ(8,197億円)、ベトナム(7,712億円)、カナダ(7,649億円)の順。ベトナムは林産物の大幅増を背景に、前年の6位から一気に4位へ浮上した。

牽引役は木材などの林産物で、輸入額は3,744億円・前年比24.7%増。コーヒー豆も数量こそ横ばいだったが、輸入額は前年から約5割増と伸びた。エビも日本向けの主力品目として動いている。田原氏が挙げた木材・コーヒー・エビは、いずれも数字の裏づけを持つ「実際に買われている品目」だ。日本市場は1億人超の人口を抱え、品質の高い食品への需要が厚い——この構造が、ベトナム産の受け皿になっている。

「安ければ買う」から「証明できるか」へ、日本の調達担当が先に確かめる条件が変わった

田原氏が需要とあわせて強調したのは、日本の消費者が求める水準の高さだった。品質、食品安全、トレーサビリティ、供給源の安定——この4点に加え、環境保護と気候変動への対応が「購買を決める要素」になりつつある。輸入額が伸びているのは事実だが、その内側で選ばれる産地の条件が入れ替わっている、というのが要点だ。

日本側の実務では、これは新しい話ではない。大手食品メーカーは早い時期から「グリーン調達」の基本方針を掲げ、原料から製造・出荷までのトレーサビリティ体制を取引の前提にしてきた。つまりベトナム産にとっての壁は関税でも価格でもなく、「環境と履歴を書類と現場で示せるか」に移っている。逆に言えば、証明の体制を整えた産地は、価格競争から一歩抜けて長期契約に近づける。

品目 日本の調達で伸びている理由 次に問われるグリーン条件
林産物・木材 2025年に3,744億円・24.7%増で順位押し上げ 合法伐採の証明・持続可能な森林管理
コーヒー豆 輸入額が前年から約5割増 栽培・加工での脱炭素と履歴の明示
エビ 日本向け主力の水産品 養殖の低排出・トレーサビリティの実証

数字はジェトロ公表の2025年実績に基づく。表の右列が、これから取引額の伸びを左右する分かれ目になる。

グリーンの物差しは品目ごとに違う、コーヒーは脱炭素・エビは低排出の実証で差がつく

「環境に配慮」とひとくくりにしても、日本の買い手が見る中身は品目で異なる。コーヒーでは、収穫後に捨てられていた枝葉を資源に回す取り組みが進み、産地の脱炭素が新しい売り文句になり始めた。ベトナム産コーヒーが履歴と環境負荷の低さをセットで示せるかどうかは、捨てるはずのコーヒー枝葉を資源に変える動きの広がりと重なる。輸入額が5割伸びた今こそ、価格ではなく物語で選ばれる余地が大きい。

エビでは、証明の質そのものが商談の材料になる。カマウ省ではEUとNGOが42か月かけて「低排出エビ」を検証しており、これが調達の証明として成立するかを問う試みとして注目される。日本の商社にとっては、こうした第三者検証つきの産地こそ、社内のサステナブル調達方針に通しやすい。木材・農産物全体では、産地コード(栽培地コード)の制度設計がトレーサビリティの土台になる。ベトナムが産地コードの取得要件を緩め事後検査主導へ切り替えた転換は、書類の出し方が変わることを意味し、日本側の確認手順にも影響する。

日本の調達担当が契約前にできること、産地の「証明体制」を三段で見る

需要が確認できた今、輸入業者側の動きは早いほど有利になる。前向きに使える具体策を段階で挙げる。

  • 履歴の起点を確認する:産地コードや栽培地登録が、協同組合単位か個別農家単位かを最初に押さえる。制度が事後検査主導へ動いた分、書類の様式と更新頻度を取引先に直接尋ねる。
  • 環境証明の第三者性を見る:自己申告か、EUやNGO・認証機関が関与した検証かで、日本の社内審査の通りやすさが変わる。低排出・脱炭素の裏づけがある産地を優先候補に置く。
  • 供給の安定を数量で詰める:田原氏が挙げた「供給源の安定」は、単発の良品ではなく年間の出荷計画で判断される。作付面積・出荷時期・不作年の代替をヒアリングし、契約前に数量の見取り図を作る。

在ベトナムの日本商社の現場からは、環境や履歴の証明が整った産地ほど値決めの主導権を握りやすくなっている、という受け止めが聞かれる。価格の安さだけを売りにする産地は、逆に選外へ落ちやすい局面に入った。田原氏の「潜在力」という言葉は、ベトナム側の努力次第でまだ伸びしろがある、という日本側からの実務的なサインとして読める。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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