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フート省トゥヴーの盆栽農家50戸、10haで年1〜5億ドンの園芸産地に育つ

ベトナム北部フート省のトゥヴー社(旧ホアンサー、旧タイントゥイ県)で、盆栽と観賞用植物を手がける農家が50戸を超え、栽培面積は10haに達した。地元紙ダンヴィエトが2026年7月30日に伝えた。1戸あたりの年収は1億〜5億ドン(約59万〜290万円、1円≒170ドンの概算)に広がり、稲作の村が園芸の集積地へと姿を変えつつある。日本の花き・園芸バイヤーにとって、この産地化は輸入や契約栽培の可能性と、植物検疫という壁の両方を確かめる手がかりになる。

目次

農業の村トゥヴーで、盆栽が50戸・10haの生業に変わった

トゥヴー社はもともと稲作を軸にした農村だ。住民のフン・ヴァン・ホアン氏は「うちの村の人は主に農業をやってきた」と話す。その一角で、桃(đào)の盆栽や鉢仕立ての観賞樹を専門に扱う世帯が増えた。とくに第20区(Khu 20)には専業に近い農家が10戸以上集まり、集積の核になっている。20年この道を歩むフン・タイン・トゥン氏は「盆栽は枝を曲げて姿を作るだけでなく、生き方の哲学を託すものだ」と語り、仕立ての技が世代を超えて受け継がれてきたことをうかがわせる。地元の愛好会(Chi hội)はグエン・クエット・ビア氏が束ね、個々の農家をゆるやかにつないでいる。低収益の水田を別の作物へ切り替える動きは各地で起きており、ダナン・ダイアンで水田を蓮に替えて産地をつくった事例と並べると、トゥヴーの盆栽も「土地の使い方を変える」選択の一つだと見えてくる。

年1〜5億ドンを生むのは、Tet向けの需要と受け継がれた仕立ての技だ

盆栽づくりの収入は、旧正月(Tet)に向けた需要と分かちがたい。ベトナムでは桃の花木や仕立て鉢が正月飾りの主役になり、この時期に販売と価格がまとまって動く。トゥヴーの農家が1戸あたり1億〜5億ドンを得られるのは、Tetという明確な出口があり、そこへ第20区の集積が枝ぶりの技術と苗・鉢の融通で応えているからだ。1軒の趣味では届かない仕上がりを、隣り合う専業世帯どうしの分業と情報共有が押し上げている。数値の骨格を早見表にまとめる。

項目 数値 円換算(概算)
盆栽・観賞植物の世帯数 50戸超
栽培面積 10ha超
第20区の専業的世帯 10戸超
1戸あたり年収 1億〜5億ドン 約59万〜290万円
一人当たり所得(2024) 年6,000万ドン 約35万円
貧困率/準貧困率(2024) 1.4%/2%

為替は1円≒170ドン(2026年7月時点の目安)で概算した。ドン建ての数値はダンヴィエトの報道による。

村の貧困率1.4%と一人当たり年6,000万ドンを、園芸が下から支える

2024年時点でトゥヴー社の貧困世帯は1.4%、準貧困は2%まで下がり、一人当たり所得は年6,000万ドン(約35万円)に届いた。盆栽が村の家計をどれだけ押し上げたかを単独で切り出す数字は示されていないが、稲作中心だった村で50戸超が園芸に軸足を移した事実と、この所得水準は無関係ではないだろう。観賞用の植物が貧困からの出口になる構図は、フート省だけのものではない。標高1,600mの霧の中でザオ族が地生ランを商品に変え、貧困から抜けたサパの事例も、換金作物としての花卉・観賞植物が持つ底上げの力を示す。ただしトゥヴーの販路はいまのところ州内と近隣が中心で、Tet需要という国内市場に大きく支えられている点は冷静に見ておきたい。

日本の花き輸入はダラット菊で深まる一方、生きた盆栽は土の壁で入らない

日本から見ると、ベトナムはすでに花きの重要な調達先だ。切り花の輸入は伸びており、2025年はベトナム産が1,400万本増えた。標高1,500mのダラットで育つスプレー菊は品質で評価され、国内の切り花出荷が前年比4.6%減・1億3,100万本減となるなかで存在感を強めている。だが盆栽のような生きた鉢物は事情が違う。日本の植物防疫法は土や土の付いた植物の輸入を原則として禁じ、観賞用の鉢植えや苗木には輸出国政府の検査証明書(Phytosanitary Certificate)と輸入検査が要る。トゥヴーの盆栽がそのまま日本の店頭に並ぶルートは、現実には高い壁の先にある。調達の視点では、この一線を最初に引いておくことが判断を誤らせない。

日本の園芸バイヤーがトゥヴーから読むのは、切り枝の契約栽培と産地化の信頼性

では、この産地は日本の園芸・花き事業者に何をもたらすのか。第一に、生きた鉢物ではなく切り花・切り枝・葉物の調達だ。ダラット菊で実績があるように、ベトナム産の花きは検疫要件を満たせば供給源になり得る。50戸が10haに集積して技術を共有する産地化は、単発の農家より供給が安定するというシグナルでもある。第二に、苗の内製化・契約栽培という組み方だ。台湾頼みだった蘭苗をホーチミンのラボが年20万本規模で置き換えた事例と重ねると、川上を現地の集積に委ね、規格と品種を契約で握る道筋が見える。第三に、産地化そのものの設計を読むことだ。趣味からの出発、第20区への集積、愛好会による横のつながり、Tetという確かな出口——この組み合わせを他の花き品目に当てはめれば、次にどの産地が調達先へ育つかを早めに見極められる。トゥヴーの盆栽は日本へ直接は来にくいが、産地が立ち上がる過程は、ベトナム花きの次の一手を測る物差しになる。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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