NÔNG NGHIỆP VIỆT NAM — TẠP CHÍ NÔNG NGHIỆP ĐÔNG NAM Á

クアンナム省トラミーの桂皮、樹皮売りをやめ精油で世界へ挑む

ベトナム中部クアンナム省のトラミー地域が、長年続けてきたシナモン樹皮の原料輸出から、精油・化粧品・健康関連製品といった加工品へ軸足を移そうとしている。標高の高い山岳地で育つ「クエ・チャミー(Tra My cinnamon)」は精油の含有量が高く香りが強いことで知られ、現地では「高山の玉の桂皮」とも呼ばれてきた。その良質な原料を樹皮のまま安く売るのではなく、自ら蒸留・加工して価値を取り込む——この転換は、世界一の桂皮輸出国であるベトナムの産地が次の段階に入ったことを示している。日本の食品メーカー、香料・化粧品の調達担当、原料商社にとっては、調達先と仕入れ条件を見直すきっかけになる動きだ。

目次

樹皮を売る産地から、精油を作る産地へ

起点となったのは、トラミー地域の生産者組合や行政が打ち出した「深加工(チェビエンサウ)とデジタル化」の方針だ。これまでシナモンは乾燥させた樹皮を束ねて輸出するのが主流で、香辛料や生薬の原料として海外で加工され、付加価値の大半は産地の外で生まれていた。今回の動きは、その付加価値を産地側で確保しようとするものだ。精油の蒸留、化粧品原料、ハーブティー、健康関連の加工品などへ製品の幅を広げ、欧州・北米・日本といった高価格帯の市場を視野に入れている。

象徴的なのが現地組合幹部の言葉だ。「これからの桂皮の価値は、樹皮そのものではなく、知識と技術の中にある」。原料の量で勝負するのではなく、加工技術と品質管理、そして産地証明で差をつけるという発想の転換が、この産地の合言葉になりつつある。

なぜ今、深加工なのか

背景には、原料輸出だけに頼る産地のもろさがある。樹皮は相場と買い手の都合に左右されやすく、価格交渉力を持ちにくい。一方、精油は原料の樹皮よりも単価が高くなりやすい。シナモンの産地はアジアの一部に限られるため、自ら蒸留・加工まで手がける産地はまだ多くない。

もう一つの軸がデジタル化だ。原料産地のGISマッピング、QRコードによる産地トレーサビリティ、品質データベースの整備、ブロックチェーンの活用といった仕組みを通じて、「どの山の、どの生産者の桂皮か」を買い手に示せるようにする。欧州や日本のように原料の出所と栽培履歴を重視する市場に対しては、この透明性そのものが商品力になる。トラミーの組合の一部はISO 9001:2015やGACP(栽培・採取の適正基準)への対応を進める組合もあり、加工品の輸出に必要な土台づくりが進みつつある。

数字で見るベトナムのシナモン

トラミーの転換は、ベトナム全体の構図の中に置くと意味がはっきりする。検証できた範囲の数字を整理する。

項目 数値 備考
2024年 輸出量 約99,874トン 前年比 約+11.7%
2024年 輸出額 約2億7,450万USD 前年比 約+5.2%
2025年1〜7月 輸出量 約73,080トン 前年同期比 約+34.9%
2025年1〜7月 輸出額 約1億8,750万USD 前年同期比 約+21.6%
最大の輸出先 インド(約36%) 2024年の量ベース

注目したいのは、ベトナムが生産量では世界3位ながら、輸出額では世界トップに立っている点だ。量だけでなく単価でも稼げる国になりつつあることが、産地が深加工へ向かう追い風になっている。ただし最大の輸出先がインドという原料市場である構図は、依然として「樹皮を安く大量に」というモデルが太い柱であることも示している。トラミーの精油シフトは、この依存度を下げて欧州・北米・日本という高単価市場の比率を上げる狙いと読める。

現地・業界の受け止め

現地組合の幹部は、樹皮の相場に振り回される従来のやり方から抜け出したいという思いを繰り返し語る。精油を自ら蒸留できれば、含有量の高さという原料の強みを価格に反映しやすく、生産農家にも利益が回りやすいという声がある。

一方で、加工設備への投資や認証取得、輸出先での品質要求への対応は小規模な組合には重い負担だという慎重な見方もある。「良いものを作っても、欧州や日本の規格に合わせるまでが長い」という現場の本音は、加工品輸出を志す産地に共通する課題だ。

流通側からは、産地証明とトレーサビリティが整えば、これまで取引が難しかった高価格帯のバイヤーにも届くようになるという期待が聞かれる。原料の透明性を求める潮流が、結果的にトラミーのような小さな産地に追い風を送っているという構図だ(現地の声はいずれも趣旨を要約。発言者は匿名)。

日本のバイヤー・メーカーへの示唆

この動きは、日本側の調達担当にとって他人事ではない。日本は天然由来・高品質の原料を好む市場で、化粧品、健康食品、伝統的な漢方・薬膳の分野でシナモン由来の素材への関心が続いている。精油や粉末、加工原料を産地から直接調達できる先が増えることは、中間流通を一つ減らせる可能性を意味する。

実務的な示唆を整理すると次のようになる。第一に、樹皮の現物相場だけで産地を比較するのではなく、精油や加工品まで対応できる組合かどうかで評価軸を変えること。第二に、ISOやGACP、QRトレーサビリティの有無を取引条件に組み込み、品質の裏付けを契約段階で確認すること。第三に、トラミーのように規模は小さくても香りや精油含有量で差別化できる産地は、サンプル取り寄せと現地監査を前提に少量から関係を作る価値があること。原料の出所を語れることがブランドになる時代に、産地のストーリーごと仕入れられるパートナーは強い。

ベトナムでは桂皮以外でも、原料を加工して付加価値を取り込む動きが各地で進んでいる。澱粉を改質して価値を引き上げたCAP社のキャッサバ改質澱粉の事例や、欧州輸出を見据えて団地化したドンナイの有機胡椒は、シナモンの深加工と同じ流れにある。調達先を探す際は、こうした「加工で稼ぐ産地」を横断的に見ておくと選択肢が広がる。

市場への波及

トラミーの転換が一定の規模に育てば、ベトナム産シナモンの輸出構成そのものが変わる可能性がある。これまでの「樹皮中心・インド向け」から、「精油・加工品も含む・欧米日向け」へと比率が動けば、輸出額はさらに伸びやすくなる。世界的に精油の供給が需要に追いつかない状況が続く限り、加工に踏み込んだ産地ほど価格交渉で優位に立てる。

香料・化粧品・健康食品の各業界にとっては、調達先の選択肢が増えることを意味する。同時に、産地が加工まで手がけるようになると、これまで加工で利益を得てきた輸入国側の中間業者は役割の見直しを迫られる。原料を右から左へ流すだけのビジネスは縮み、品質保証・規格対応・物流を束ねて提供できる事業者だけが残る、という構図が見えてくる。

実用情報・関連リンク

ベトナム産シナモンの加工原料を検討する際は、樹皮の等級だけでなく、精油の蒸留設備や認証、産地トレーサビリティの体制をあわせて確認したい。加工型の産地・工場を知る手がかりとして、ハーブ加工に取り組むSao Maiのハーブ加工工場の事例も参考になる。原料の出所と加工レベルをセットで把握しておくことが、安定調達の前提になる。

まとめ:次の一手

クアンナム省トラミーの桂皮は、樹皮を売る産地から精油・加工品で稼ぐ産地へと舵を切りつつある。世界最大の輸出額を誇るベトナムが、量だけでなく加工の質で勝負する段階に入った象徴的な動きだ。日本の調達担当が今できる具体的な一手は三つ。加工対応力で産地を再評価すること、認証とトレーサビリティを取引条件に明記すること、そして有望な小規模産地とはサンプルと現地監査を前提に少量から関係を始めることだ。原料相場を眺めるだけでなく、「加工で稼ぐ産地」とどう組むかを、次の調達計画に組み込んでおきたい。

参照元

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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