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スケソウダラ5000ドル超、越パンガシウス輸出8.8%増で日本とEUに商機

欧州の白身魚売り場で異変が起きている。スケソウダラのフィレブロックがEU市場で1トン5,000ドル(約75万円、1ドル150円換算)を超え、米国産・ロシア産・中国産がそろって過去最高値を付けた。値ごろな代替を探すバイヤーの視線が、メコンデルタで養殖されるベトナム産パンガシウス(バサ/トラ)に向かっている。ベトナム水産物輸出加工協会(VASEP)によれば、2026年1〜7月のパンガシウス輸出は13億ドル(約1,950億円)に達し、前年同期を8.8%上回った。白身魚の世界的な品薄が、養殖ナマズの輸出を押し上げている。

この記事は、農産物バイヤー・水産輸入の実務担当者に向けて、いま欧州で何が起きているのか、その余波が日本の調達にどう及ぶのかを、確認できた数字に絞って整理する。

目次

スケソウダラがEUで5,000ドル超、バレンツ海のタラ枠は30年ぶり低水準へ

価格高騰の震源は、天然白身魚の資源枠の縮小にある。米北太平洋漁業管理委員会(NPFMC)は2026年のアラスカ湾スケソウダラの漁獲可能量(TAC)を13万4,118トンとし、前年から26%削った。ベーリング海の枠は約140万トンでほぼ据え置いたものの、湾内の落ち込みが供給心理を冷やした。

さらに深刻なのが大西洋側だ。バレンツ海のタラ漁獲枠は4万8,530トンまで下がり、前年のおよそ半分。1990年代初頭以来の低水準となった。背景には2014年以降続く加入量(新たに漁獲対象となる若齢魚)の不足がある。VASEPのレ・ハン副事務局長は、タラ・ハドック・スケソウダラといった白身魚の高値が続き、EUのバイヤーがより価格競争力のある代替品を求めていると指摘する。天然資源の枠が細れば、養殖で安定供給できる魚に需要が流れる。この構図がパンガシウスの追い風になっている。

1〜7月で13億ドル・8.8%増、通年は23億ドルの射程に

数字を並べると勢いがはっきりする。1〜7月の輸出額13億ドル・前年同期比8.8%増というペースは、VASEPが通年で見込む23億ドル(約3,450億円、前年比5%増)に十分届く水準だ。単価の高いスケソウダラが手に入りにくくなるほど、養殖で量を確保できるパンガシウスの相対的な優位が増していく。

同じ「白身の養殖魚」でもティラピアの1〜7月輸出は7,400万ドル(約111億円)で前年同期比63%増と伸び率は大きいが、金額の桁が違う。パンガシウスは十数億ドル規模で欧州の穴を埋められる数少ない品目で、伸び率より供給量で勝負できるところに強みがある。バイヤーが「代替の玉を一定量そろえたい」ときに、まず候補に挙がるのがこの魚だ。

項目 数値 出典・補足
パンガシウス輸出(2026年1〜7月) 13億ドル/前年同期比+8.8% VASEP
パンガシウス輸出(2026年通年見込み) 23億ドル/前年比+5% VASEP予測
ティラピア輸出(2026年1〜7月) 7,400万ドル/前年同期比+63% VASEP(比較用)
スケソウダラ フィレブロック(EU) 1トン5,000ドル超(過去最高) 米・ロシア・中国産が同時に記録更新
アラスカ湾スケソウダラTAC(2026年) 13万4,118トン/前年比-26% NPFMC
バレンツ海タラ漁獲枠(2026年) 4万8,530トン(前年の約半分) 1990年代初頭以来の低水準

為替は1ドル=150円で換算。円額は概算。

養殖魚を有利にするCATCH規制と、EUシェア8→10%の伸びしろ

制度面の追い風も見逃せない。EUは2026年1月10日から、天然漁獲の輸入水産物にデジタル漁獲証明「CATCH」を義務化した。天然タラやスケソウダラには証明・トレーサビリティの手間が増える一方、養殖のパンガシウスはこの枠組みの外側にあり、書類上の負担が軽い。品薄と価格高騰に規制コストが重なることで、代替としてのパンガシウスの相対的な使い勝手が上がっている。

EU市場でのパンガシウスのシェアは現状およそ8%で、業界は10%への引き上げを狙う。天然白身魚の供給が細る局面は、この2ポイントを取りに行く数年に一度の窓になる。もっとも、価格競争だけで押し込めば「安い代替品」の位置付けから抜け出せない。フィレの規格統一や薬剤・抗生物質の管理を徹底し、EUのラベル要件に合わせた品質の底上げが、シェアを一過性で終わらせないための条件になる。

日本の白身調達では、パンガシウスは「代替」から主役側へ

日本のバイヤーにとって、この動きは対岸の火事ではない。日本の白身魚消費はスケソウダラに次いでパンガシウスが多く、回転寿司や外食チェーンではすでに欠かせない食材に育っている。世界的な白身魚の争奪が激しくなれば、日本の加工・外食が確保できる天然白身の量と価格も揺れる。欧州が値ごろな養殖白身に流れるいまこそ、日本側は数量と価格を早めに押さえに行く局面だ。

パンガシウスがどう日本の食卓に入り込んできたかはくら寿司の白身はナマズだった——パンガシウスが日本の定番になるまでで詳しく追っている。魚そのものの生態や養殖の基礎はパンガシウス(バサ)にまとめた。円安下の日本の調達では、冷凍フィレの量産から加工品へと軸を移す動きが商機になる。この点は越パンガシウスが量産をやめる日、加工品が拓く日本の調達戦略で掘り下げた。

CPTPPと付加価値品——切り身・フィッシュバーガーで単価を上げる

VASEPは輸出先の広げ方として、EUの特定セグメントに加えて日本とCPTPP市場への展開を挙げる。日本はCPTPP参加国であり、関税面でも中長期の後押しがある。ただし日本向けの直近の輸出はほぼ横ばい(前年比+0.4%)で、量が自動で増える段階ではない。伸ばすには、原料フィレの供給だけでなく、切り身やフィッシュバーガーといった加工・付加価値品まで踏み込む必要がある。

実務の要点は三つに絞れる。第一に、天然白身の高値が続くうちに複数年の供給契約で数量を確保すること。第二に、フィレの規格と品質管理をEU・日本の要件にそろえ、「安いから使う」から「質で選ぶ」へ立ち位置を変えること。第三に、切り身・味付け・成型といった加工の川下を取り込み、原料相場に振り回されにくい取引に変えること。白身魚の品薄は数年単位の資源問題で、来季で終わる話ではない。

まとめ:品薄は数年続く、動くなら供給が細るいま

スケソウダラのEU価格5,000ドル超、アラスカ湾TAC26%減、バレンツ海タラ枠の30年ぶり低水準——この三つが同時に起きているのが2026年の白身魚市場だ。ベトナム産パンガシウスの1〜7月輸出13億ドル・8.8%増は、その裏返しとして生まれた需要を映している。天然資源の枠は一朝一夕には戻らない。日本の調達担当者にできるのは、価格が動ききる前に数量を押さえ、加工品まで含めた取引に切り替えておくことだ。

参照元

  • Nông nghiệp & Môi trường(VAN)「Whitefish shortage opens window for Vietnamese pangasius exports」(2026年8月10日)記事
  • SeafoodSource「NPFMC cuts Gulf of Alaska pollock quotas by 25 percent」記事
  • SeafoodSource「Advised cuts to Barents Sea cod would put quota at lowest level in 30 years」記事
  • VietnamNews「VASEP forecasts pangasius exports to hit $2.3 billion this year」記事
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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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