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ベトナムCAP社が狙う改質澱粉、調達網拡大で付加価値5割増へ

ベトナム北部の老舗加工メーカーが、キャッサバの原料調達網を足元から組み直し始めた。地元コミューンとの買付契約を年約5億ドン規模で結び直し、設備投資と並行して付加価値を5割引き上げる「改質澱粉(modified starch)」の生産研究に踏み込んだという。日本の澱粉バイヤーや食品原料の調達担当にとって、これは単なる一企業のニュースではない。安価なネイティブ澱粉の供給元としてだけでなく、加工度の高い機能性原料の調達先としてベトナム産キャッサバを見直す入口になりうるからだ。

目次

イエンバイの加工メーカーが原料調達を組み直す

報じたのはベトナムの農業・環境系メディアで、対象はイエンバイ拠点のラム農産食品株式会社、通称CAP社だ。同社は地元コミューンとの間で、新鮮なキャッサバ芋を買い取る契約を年約5億ドン規模で結んでいる。これは特定コミューンとの買付契約の金額であり、年2万トン超とされる同社の澱粉生産能力をまかなう原料調達網全体のうちの一部にあたる点には留意したい。世帯や事業者から芋を直接買い付け、計量後にその場で代金を支払う仕組みで、農家側にとっては販売先と現金化のタイミングが読める。原料の量と質を自前で握りに行く動きである。

同時にCAP社は、キャッサバ澱粉を改質澱粉へ加工することで製品価値を約5割引き上げる研究プロジェクトに着手したと伝えられている。設備は近代的なものへ更新し、燃料消費を抑えた機械への投資や、キャッサバ工場のバイオガス回収の改善も進める方針だという。原料の確保・加工度の引き上げ・環境負荷の低減を、ひとつのバリューチェーン再設計として束ねているのが特徴だ。

背景:キャッサバ産地としてのイエンバイと改質澱粉の正体

イエンバイはベトナム北部の山岳地帯で、急斜面の畑でも育つキャッサバが中山間地の現金収入を支えてきた地域だ。なお同社が立地する行政区分は、2025年の地方行政再編によって現在ラオカイ省に括られている。産地としての性格は変わらないが、書類上の所在地が動いている点は、産地名で調達先を探す際に取り違えやすいので押さえておきたい。

キャッサバから採れる澱粉は、いわゆるタピオカ澱粉として知られる。そのまま使うネイティブ澱粉は安価だが、糊が冷えると固まったり離水したりと、加工食品の原料としては扱いにくい面がある。これを物理的・化学的に手を加えて性質を整えたものが「改質澱粉」だ。冷凍・解凍に強くする、とろみを安定させる、口当たりを調整する、といった用途で、レトルト・冷凍食品・たれやソース・製菓・水産練り製品などに幅広く使われる。素材そのものより、加工度の分だけ単価が上がる。CAP社が言う「付加価値5割増」は、この差を取りに行くという話と読める。

確認できる数字を並べる

元記事から裏取りできた数字に絞って整理する。推測値は含めていない。

  • キャッサバ買付契約:地元コミューンとの買戻し付き契約で年約5億ドン規模
  • 付加価値目標:改質澱粉化により製品価値を約5割引き上げ
  • キャッサバ澱粉の生産能力:年2万トン超の設備を保有
  • 地域・従業員支援:2025年〜2026年前半に災害復旧・地域施策へ3億ドン超、被災従業員支援に約2億ドンを拠出

年約5億ドンは、2026年6月時点のおおまかな為替(1ドン≒0.006円前後)で換算すると日本円でおよそ300万円規模にあたる。為替は日々動くため、実際の取引時にはその時点のレートで再計算してほしい。金額そのものより、買付を「契約」として固定し、現金即払いで農家を囲い込むという調達設計のほうに注目したい。

関係者はどう受け止めているか

元記事は具体的な発言の引用を載せていないため、ここでは報じられた内容と産地の一般的な事情から、当事者の立場を意訳して補足する(特定個人の発言ではない)。

地元の農家にとっては、買い取り先と価格、現金化の時期が読めることの安心感が大きいとみられる。山間地のキャッサバは出荷時期が集中しやすく、買い叩かれやすい作物だ。計量後その場で支払う方式は、仲買を挟むより手取りが読みやすいという受け止めになりやすい。

CAP社側の意図としては、原料の量と質を安定させたうえで加工度を上げ、紙・桂皮油・澱粉と複数事業を抱える中で澱粉部門の収益性を底上げする狙いがうかがえる。改質澱粉には海外の設備供給者や引き取り先(オフテイカー)が関与すると報じられており、輸出も視野に入れた事業設計と読める。

地域行政の視点では、中山間地の雇用と現金収入を地場の加工企業が吸収してくれる構図は、産地の維持という観点で歓迎されやすい。バイオガス改善やAI活用といった「グリーンな生産」の打ち出しも、地域のイメージ戦略と整合する。

日本の食品メーカー・原料バイヤーへの示唆

ここからは独自の考察だ。CAP社の動きは、日本側にとって三つの読み筋を持っている。

第一に、改質澱粉の調達先候補が一社増えるという素直な意味だ。改質澱粉はこれまでタイや一部の大手が強い分野で、ベトナム産はネイティブ澱粉の安価な供給元という位置づけが中心だった。産地の加工メーカーが自前で改質に踏み込めば、中間品ではなく機能性原料として直接引き合いを出せる相手が増える。価格交渉の選択肢を広げる材料になる。

第二に、原料の高付加価値化という発想そのものが参考になる。ネイティブ澱粉を輸入して国内で加工するのか、改質まで終えた状態で買うのか。後者が産地で安定供給されるなら、自社の加工工程や在庫の持ち方を見直す余地が出てくる。逆に言えば、産地が加工度を上げるほど、単純な原料輸入で差益を取るモデルは効きにくくなる。早めに加工メーカーとの直接の関係を作っておく価値がある。

第三に、サステナブル調達のストーリーが付いてくる点だ。買戻し付き契約で農家の生計を支え、バイオガスで排出を抑える——という設計は、調達トレーサビリティや環境配慮を問われる日本のメーカーにとって、そのまま自社の調達ストーリーの素材になる。原料のスペックだけでなく、「どう作られた澱粉か」を語れる供給元は、これから価値を持つ。改質澱粉のサンプル取得と並行して、契約栽培や環境対応の実態をヒアリングしておくと、後の調達判断で効いてくる。

業界への波及をどう見るか

一社の研究着手で市場が一変するわけではない。ただ、産地企業が「原料を安く売る」から「加工して高く売る」へ軸足を移す動き自体は、ベトナムのキャッサバ産業全体の方向性を映している可能性がある。原料輸出に頼ってきた産地が国内で加工度を上げれば、輸出されるのは中間品より完成度の高い澱粉になり、価格帯も上がる。日本側の調達コストや、国内加工業者の立ち位置にも、じわじわ影響しうる。改質澱粉は用途ごとにスペックが細かく分かれるため、産地が日本の食品規格にどこまで合わせ込めるかが、実際の取引が動くかどうかの分かれ目になる。

実務で押さえておきたいこと

調達担当が今の段階でできるのは、情報の更新と関係づくりだ。まずベトナム産改質澱粉について、自社が使う用途(冷凍耐性・とろみ安定・乳化など)に対応するグレードがあるかをサンプルで確認する。次に、買付契約や環境対応の実態を一次情報として押さえ、トレーサビリティの説明に耐えるかを見ておく。所在地の行政区分が再編で動いている点は、産地名だけで検索すると取りこぼすので、企業名ベースで追うほうが確実だ。為替変動が大きい局面では、見積りは必ず取引時点のレートで再計算したい。

まとめ

イエンバイのCAP社が進めるのは、買付契約による原料の囲い込みと、改質澱粉への加工度引き上げ、そして環境配慮を一本に束ねたバリューチェーンの組み直しだ。年約5億ドンの買付や付加価値5割増という数字は、規模としては地場企業の堅実な一歩にすぎない。だが日本の澱粉・食品原料バイヤーにとっては、ベトナム産キャッサバを「安い素材」から「加工度の高い機能性原料の調達先」へと見方を変える、ひとつのサインとして受け止める価値がある。動きが本格化する前に、加工メーカーとの直接の接点を作っておきたい。

よくある質問

改質澱粉とネイティブ澱粉は何が違うのですか

ネイティブ澱粉はキャッサバから採れたそのままの澱粉で安価ですが、冷えると固まったり離水したりと加工食品には扱いにくい面があります。改質澱粉はこれに物理的・化学的な処理を加えて、冷凍耐性やとろみの安定などの性質を整えたもので、加工度の分だけ単価が上がります。

CAP社の所在地はイエンバイですか、ラオカイですか

同社はイエンバイを拠点とする加工メーカーですが、2025年の地方行政再編により、現在の行政区分上はラオカイ省に括られています。産地名で調達先を探すと取り違えやすいため、企業名ベースで追うのが確実です。

日本の食品メーカーがすぐ調達できるのですか

改質澱粉の生産は研究着手の段階と報じられており、用途ごとのスペックや日本の食品規格への適合は今後の確認事項です。現段階ではサンプルでのグレード確認と、加工メーカーとの関係づくりが現実的な動きになります。

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【参照元】CAP kiên định với chuỗi giá trị nông nghiệp bền vững(Nông nghiệp Môi trường)

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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