NÔNG NGHIỆP VIỆT NAM — TẠP CHÍ NÔNG NGHIỆP ĐÔNG NAM Á

樹ごとに稼ぐ越ドリアン農家、日本の調達地図が変わる

ベトナム産ドリアンの供給を語るとき、日本のバイヤーは省や輸出企業の単位で産地を見がちだ。だが実際に品質を左右しているのは、畑の一本一本をどう管理するかという生産者の技術水準にある。フンイエン省から中部高原へ移り住み、コーヒーで9年苦しんだ末にドリアンで年40億ドン超(約2,400万円)の利益を出すようになった62歳の農家の事例は、その水準がいま「個人単位」で急速に上がっていることを示している。日本の調達担当が越産地の実力を測り直すうえで、見過ごせない変化だ。

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コーヒーで9年、それから始まったドリアンへの転換

主人公はグエン・ヴァン・タイン氏(62)。1994年、故郷のフンイエン省から、わずかな元手と身の回りの道具だけを携えて中部高原のダクマー地区(旧コントゥム省、現在は省再編でクアンガイ省)に移り住んだ。最初に選んだのはコーヒーだった。だが約9年栽培しても、収量は伸び悩み、価格の変動に振り回された。標高と土壌に合う作物を探すなかで行き着いたのがドリアンで、現在は13ヘクタール超の園地でRi6とモントンの2品種を主力に育てている。いずれも現地の気候と土に合い、収量が安定して果実の品質が高い定番品種だ。

灌漑装置を1樹に2基、畑を「電子カルテ」で回す

タイン氏の稼ぎ方を支えているのは、規模ではなく管理の細かさである。園内の樹は1本ずつ番号で管理され、養分は水に溶かして灌漑システム経由で各樹へ直接届ける。1樹あたり自動灌漑装置を2基設置し、水やりと施肥を同じ配管でこなす。生育状況はスマートフォンの記録システムに入力し、樹ごとの履歴を残していく。人手に頼る勘の農業ではなく、個体差を数値で追いかける「単木管理」に近い発想だ。広大な面積を一律に扱うのではなく、一本一本を独立した生産単位として扱う点に、この農園の強さがある。

数字で見る逆転劇

2025年産の実績は、この管理手法の成果を端的に表している。為替は1万ドン≒60円で換算した。

項目 数値 円換算の目安
園地面積 13ヘクタール超
2025年産の収量 100トン超
平均販売単価 5万ドン/kg 約300円/kg
年間利益(経費差引後) 40億ドン超/年 約2,400万円/年

単価5万ドンで100トンを売れば売上は50億ドン規模、そこから経費を引いた手残りが40億ドン超という計算になる。ドリアンは相場の振れが大きい作物だが、樹ごとの管理で品質を揃え、上位グレードの比率を高く保てれば、単価下落局面でも利益を確保しやすい。技術が価格変動へのクッションとして働いている。

日本の調達にとって何が変わるか

この事例が日本のバイヤーに突きつけるのは、越産地の「粒度」が変わったという事実だ。従来、越ドリアンは生鮮の相場商品として、産地の平均品質と量で評価されてきた。だが個人農家が樹単位で品質を作り込み、履歴をデジタルで残す段階に入ると、同じ産地のなかでもロットごとの品質差と再現性が調達判断の軸になる。産地コード単位での標準化を追った越ドリアンが挑む長期輸出の設計図と、この農園のような生産者単位の高度化は、上と下から同じ「トレーサブルで品質が読める調達」へ収束していく。

実際、ベトナムは全国レベルでドリアンをQRで追う制度づくりを進めており、産地確認が紙から電子へ移る流れは日本側の受け入れ検査のあり方も変える。園地の識別番号と樹ごとの記録がそろえば、日本のバイヤーは「どの畑の、どういう管理の果実か」を仕入れ前に確認できるようになる。生鮮での価格勝負に加えて、加工や冷凍を含めた長期契約で、こうした管理力の高い生産者を指名買いする余地が広がる。

個人の技術が産地の実力に変わるとき

越の中部高原では、技術を囲い込まずに共有し合うドリアン農家の「億万農家クラブ」のような動きも各地で生まれている。タイン氏のような個人の管理ノウハウが横に広がれば、産地全体の底上げにつながり、日本にとっては安定調達の裏付けになる。逆に言えば、平均品質だけで越産地を値踏みしていると、こうした高度化した生産者を取り逃すことになりかねない。

日本の食品バイヤーや輸入担当がいま取れる一手は明確だ。越ドリアンの産地評価に、省や輸出企業だけでなく「園地単位の管理水準」という物差しを一つ足すこと。トレーサビリティ制度が整うこの局面で、樹ごとに品質を作る生産者と早く関係を築いた企業ほど、次の供給難や相場高騰の局面で有利に立てる。62歳の逆転劇は美談であると同時に、越産地の調達地図が塗り替わりつつあるという実務的なシグナルでもある。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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