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産地コードで作る安心、越ドリアンが挑む長期輸出の設計図

ベトナム・カントー市郊外の30/4協同組合が2026年7月初旬、ドリアン栽培でVietGAP認証を取得した。地元企業SABIOの技術支援を受け、8戸4.6haの小さな菜園グループが31戸33.2haへ育つ過程で、生産履歴の記録と品質管理を作り込んできた成果だ。価格が乱高下する市況のなかで産地が「安さ」ではなく「標準化」で長期の出口を探す動きは、ベトナム産果物の産地選定に頭を悩ませてきた日本の調達担当にとっても見過ごせない。ドリアンを国単位でQR追跡する制度が動き出したいま、産地の足元で何が変わっているのかを掘り下げる。

目次

小さな菜園グループがVietGAPを取るまで

30/4協同組合はもともと2021年に8戸・4.6haで発足した菜園づくりの共同体だった。それが2026年7月時点で31戸・33.2haまで広がり、うち23戸・20ha超が正式にVietGAP認証を受けた。認証は書類上の看板ではなく、施肥・防除・収穫のすべてを日誌に残し、追跡できる状態を作って初めて下りる。

支援に入ったSABIOの副責任者ドゥオンホアイアン氏は、現地調査から技術指導、品質管理システムの構築、土壌・灌漑水・果実サンプルの採取と検査、認証審査前の伴走までを担ったと説明する。農家が個々にやると重すぎる工程を、企業と協同組合で分担して回した点に、この産地の再現性がある。

なぜいま「標準化」なのか

背景には、ベトナムが国を挙げて進める産地コード(mã số vùng trồng)と梱包施設コードの整備がある。中国税関総署(GACC)との議定書のもとで、輸出向けドリアンは登録・承認された産地と梱包施設からのものに限られる。GACCが認めたベトナム産ドリアンの産地コードは800件を超え、梱包施設も130余りに達した。

ところが増えたぶん、綻びも表面化した。2025年以降、中国側から400件超の産地コードと240件の梱包施設コードに不適合の警告が出され、うち167件の産地コードと99件の梱包施設が停止・取り消しの措置を受けている。数を取るだけでは輸出資格を維持できない段階に入り、ベトナムは2026年に入って国産ドリアンのトレーサビリティ試行を半年間実施した。植物防疫当局は8月から管理をさらに強める方針を示しており、コードを「入口」でなく「維持し続ける責任」と位置づけ直している。

数字で見るカントー産地の現在地

カントー市一つを取っても、産地の輪郭は数字で追える。市全体のドリアン栽培面積は14,400ha超、実際に実をつける面積は約10,000ha、2026年の生産量は約150,000トンが見込まれ、その86%以上をRi6が占める。

項目 数値
カントー市の産地コード 136件
輸出対応の産地面積 約3,000ha
市全体の栽培面積 14,400ha超
2026年の生産量見込み 約150,000トン
ドナ品種の初期価格 約60,000ドン/kg(約360円)
Ri6品種の価格帯 25,000〜50,000ドン/kg(約150〜300円)

価格は1万ドン≒60円で換算した。輸出対応面積が全体の3割にとどまる点が、標準化の余地の大きさを物語る。

現場の言葉、視線はすでに次の契約へ

認証を取った当事者の声からは、価格そのものより「揺れない出口」を求める姿勢が読み取れる。

  • 協同組合員のパン・ティエン・カン氏——VietGAPとIPHM(総合植物健康管理)の導入で生産方法を全面的に切り替え、農薬使用を減らして費用節減と環境保護を両立できたと語る。
  • 代表のパン・ホアン・バー氏——協同組合に入れば安心して生産でき、市場価格が下がっても企業との契約価格が農家を守ると強調する。
  • カントー市農業環境局副局長のグエン・ティ・ジアン氏——産地コードは終着点ではなく、品質を保ち信頼を積み上げ続ける責任だと釘を刺す。

企業との長期契約で価格変動リスクを抑え、不良品率を下げて利益を確保する。この循環が回り始めた産地は、買い手から見れば読みやすい。

日本の調達担当が今から見ておくべき点

この動きは、日本の輸入・調達に三つの実務的な示唆を残す。

第一に、産地コードとトレーサビリティは、日本のような高難度市場を開ける鍵になる。日本はベトナム産ドリアンを含む果実に残留農薬の命令検査を課してきた歴史があり、過去にはプロシミドンやメタラキシルの検出で対象品目に指定された経緯もある。施肥・防除の履歴が農家単位で残る産地は、散布履歴書の入手や基準適合の合意といった輸入前の詰めがはるかに進めやすい。技術を囲い込まないカントーのドリアン農家のように、産地ぐるみで記録を共有する体制は、そのまま日本向けの下調べコストを下げる。

第二に、「コードを持っている」だけでは調達の安心材料にならない。中国向けで167件もの産地コードが停止・取り消しになった事実は、登録の有無より運用の中身を見るべきだと教える。産地を選ぶ際は、認証の年次更新、防除記録の粒度、企業支援の有無まで踏み込んで確認したい。標準化を続けている産地と、コードだけ取って放置した産地は、リスクがまったく違う。

第三に、安定調達の相手は「価格」でなく「体制」で選ぶ局面に入った。市況が荒れるほど、契約価格で農家を守る協同組合型の産地は供給が途切れにくい。安値に飛びつくより、記録と契約で裏打ちされた産地と組む方が、結果的に年間を通じた調達を安定させる。

品質管理の壁とラボ不足という現実

もっとも、標準化が進んでも輸出の入口には検査の壁が残る。中国向けの議定書はカドミウムと黄色染料(オーラミンO)の厳格な管理を求めるが、ベトナム国内で輸出用に認定された分析ラボはカドミウムで12、オーラミンOで8にとどまり、収穫期には検査能力が逼迫する。メコンデルタでは基準を超えるカドミウムが検出される検体の割合が高止まりしているとの指摘もある。産地の努力とラボの容量が噛み合わない構図は、検査ボトルネックで輸出が停滞した局面と地続きだ。日本向けを検討するなら、産地の認証だけでなく、その産地が使える検査体制まで確認しておく価値がある。

産地選定でおさえる基本情報

項目 内容
対象産地 カントー市 30/4協同組合(31戸・33.2ha)
認証 VietGAP(23戸・20ha超、2026年7月取得)
主力品種 Ri6(市全体の栽培面積の86%超)、ドナ
中国向け全国コード 産地コード800件超・梱包施設130余り(GACC承認)
要注意点 カドミウム・オーラミンO検査、コードの年次維持
2026年Q1輸出額 約2.2億ドル(前年同期比230%増、冷凍が約11,600トン)

まとめ——「安さ」の次に来る調達軸

価格の底値を追う調達は、産地が崩れれば一緒に崩れる。カントーの小さな協同組合が示したのは、記録と認証と契約で「揺れない産地」を作る地道な設計だ。日本の輸入担当が次に確かめるべきは三つある。ひとつは、候補産地のVietGAP/GlobalGAP認証が年次で維持されているか。ふたつは、防除履歴が農家単位でどこまで残っているか。みっつは、その産地が使えるカドミウム検査ラボを押さえているか。産地コードの数ではなく、その中身を問う。それが、標準化時代のベトナム産果物と長く付き合うための最初の一手になる。

参照元

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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