ベトナム水産物・輸出加工協会(VASEP)がまとめた2026年1〜8月の水産輸出は約80億ドルで、前年同期を11.8%上回った。8月単月は11.4億ドル、前年同月比6%増。金額の首位はなおエビ(32.9億ドル)だが、8ヶ月の伸びを引っ張ったのはエビの外側にある品目だった。カニが34%増、ハマグリ類を中心とする二枚貝が30.8%増。エビ一辺倒だった越産の調達地図が、日本の水産バイヤーの前で塗り替わりつつある。
8月は11.4億ドル、8ヶ月で80億ドルまで積み上がった
2026年の水産輸出は月を追って加速し、1〜8月の累計で約80億ドル(前年同期比11.8%増)に達した。8月単月は11.4億ドルで6%増。通年目標の120億ドルは、この歩留まりが続けば射程に入る。品目別の内訳を並べると、エビが依然として全体の約4割を占めて首位を保つ一方、増勢の中身はカテゴリーごとに大きく分かれた。
| 品目 | 1〜8月の金額 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| エビ | 32.9億ドル | +12.3% |
| パンガシウス | 15億ドル | +9% |
| マグロ | 6.22億ドル | +0.5% |
| イカ・タコ | 5.24億ドル | +14.4% |
| カニ類 | 約3.05億ドル | +34% |
| 二枚貝ほか貝類 | 2.1億ドル | +30.8% |
カニ34%増・貝類30.8%増、伸び率で主役が入れ替わった
エビとマグロの伸びが一桁から十数%にとどまるのに対し、カニと貝類はそろって30%を超えた。金額そのものはエビの十分の一以下で小さい。それでも増勢が突出しているという事実は、越産水産の収益源がエビの単価と関税リスクだけに縛られなくなりつつあることを示す。産地側がエビ以外の稼ぎ頭を育て始め、金額構成の一極集中がほどけ始めた局面である。越エビは上期23億ドルと対米関税12.5%で日本の調達に隙間が開いたと伝えたが、その隙間をカニ・貝類が別の角度から広げている。
対日は11.1億ドルで2%増、伸びの中心は中国・香港
対日輸出は8ヶ月で11.1億ドル、2%増。数量は安定するが、伸び幅は緩やかだ。全体の成長を牽引したのは中国・香港で、輸出全体の25.35%を占め、部門成長の6割超を生んだ。日本向けの内訳はエビ・タコなど既存品目が中心で、カニ・貝類の対日取引はまだ本格化していない。裏を返せば、伸びているカテゴリーほど対日ではこれから枠が空いている。先に商流を握る余地が残っているのはこの部分だ。
日本のカニ調達はロシア産に偏り、越産は別の顔ぶれ
日本のカニ輸入はズワイ・タラバなどロシア産の比重が大きく、経済制裁や漁獲枠の変動で卸値が振れてきた。越産のカニはマングローブ域で育つノコギリガザミ(cua)とガザミ類(ghẹ)が主体で、姿ガニのギフト需要ではなく、ほぐし身・カニ爪・冷凍加工や外食向けが軸になる。用途はロシア産の姿ガニをそのまま置き換えるものではない。ただしカニ肉・カニ加工の調達先を分散したい加工筋や外食チェーンには、現実的な第二の産地になりうる。ベトナムはカニの主要な生産国の一つで、供給の厚みがある。
貝類は国産の目減りと越クラムの供給拡大が重なる
日本は水産需要の約半分を輸入に頼る。国産ホタテは生産減と輸出増で卸値が4割高となり、産地でも手に入りにくい状況が起きた。アサリの国内漁獲は数十年かけて細ってきた。この供給の穴に、越産の二枚貝が量を伸ばしている。ハマグリ属のクラム(nghêu)、カキ、ホタテ類が、ベンチェ・チャビン・ティエンザン・ナムディン・ニンビンなど沿岸各省で生産され、日本は越産二枚貝の主要な仕向け先の一つに数えられる。国産が細る品目ほど、代替の産地を確保する必要が高まる。
越産クラムはASC・MSC認証で日本の棚に乗る条件を備える
日本・EU・米国向けの二枚貝は、ASC・BAP・MSCなどの認証がほぼ入場券になる。越はティエンザン・チャビン・ナムディン・ニンビンでASC認証区を整え、ベンチェ・ヴィンロンの手掘りアサリ漁がMSC認証を取得した。トレーサビリティと持続可能性の書類が揃うことは、量販・生協・外食の調達基準を満たす前提になる。加えて、日本産の殻付き冷凍ホタテの再加工地として越はすでに機能しており、その多くが越向けに流れているとされる。日本向けの物流と加工の導線が先にできている点は、新規カテゴリーを立ち上げる際の距離を縮める。
エビの外側を今のうちに押さえる理由
カニと貝類は金額こそ小さいが、増勢と単価の安定で存在感を増している。エビは対米関税や中国の在庫調整で相場が振れやすく、その値動きをカニ・貝類が部分的に打ち消す構図になる。産地側が認証区と加工能力を広げている今の段階で商流を作っておけば、供給が細ったときや相場が跳ねたときに枠を確保しやすい。白身魚でも同じ流れが起きており、米国の対越パンガシウス関税が確定し、CPTPP経由で日本に白身魚が流れる動きが出ている。品目を横に広げる調達は、越産全体で進む構造変化と重なっている。
日本のバイヤーが動くなら確認する点
越産のカニ・貝類を新たに引くなら、確認すべき項目は絞られる。対象品目の認証(ASC・MSC・BAP)と有効期限、産地コードと加工場番号、日本の食品衛生法と貝毒モニタリングへの適合、数量の季節性(クラムは採苗と成育の周期、カニは脱皮期で身入りが変わる)、EUのIUU黄色カードや貝毒規制といった外部要因。書類だけで判断せず、産地視察を組み込んだ商談で工程を確かめるのが早い。VietFish 2026は産地視察付きの商談へ動いており、日本の調達に窓が開いている。この機会に工場と養殖区を自分の目で見ておく価値は大きい。
120億ドル目標と2026年の変数
通年目標の120億ドルは、この伸びが続けば手が届く。変数は残る。米国の関税、EUのIUU対応、飼料・種苗コスト、そして貝毒シーズンの影響。エビ一極から品目分散へと動く越産水産の構造変化は、日本の調達側にとって、価格が動く前に新カテゴリーの取引先を確保する数少ない窓になっている。カニと貝類の30%超という伸びは、その窓がいま開いていることを数字で示している。
参照元:
Tinnhanhchungkhoan「Xuất khẩu thủy sản 8 tháng thu 8 tỷ USD, mục tiêu 12 tỷ USD khả thi」(2026年9月4日)
Vietnam Briefing「Vietnam’s Seafood Exports: Growth Drivers, Market Shifts, and Outlook」
MSC Fisheries「Vietnam Vinh Long clam hand gathered fishery」
ジェトロ「ホタテ 日本産食材ピックアップ」
日本経済新聞「ホタテ4割高、生産減・輸出増で『産地なのに食べられない』」