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米国の越パンガシウス関税確定でCPTPPと日本に流れる白身魚

米商務省(DOC)は2026年8月12日、冷凍パンガシウス(バサ/ベトナムナマズ)に対する反ダンピング関税の第21次年次見直し(POR21、対象期間2023年8月〜2024年7月)の最終結果を公表した。同年2月の暫定結果から税率が3〜5倍に跳ね上がり、対米輸出の主力各社がそろって0.38〜1.00ドル/kgの課税を受ける。前回POR20で0ドルだった企業にとって、米国向けの採算計算は一夜で狂った。

この決定は太平洋の反対側、日本の白身魚バイヤーに直接跳ね返る。対米で行き場が細るベトナム産フィレは、CPTPP関税の恩恵が効く日本や中南米へ振り向けられる。日本の仕入れ担当にとっては、供給量と価格交渉の両面で調達条件を組み替える局面に入った。確定した税率と、日本側が今どこを詰めるべきかを順に見ていく。

目次

NTSFは0.07→0.38ドル、暫定比で5倍超に確定

POR21の最終税率は、DOCが2月に示した暫定値を大きく上回った。ニャチャン・シーフード(NTSF、旧F17)はキロあたり0.07ドルの暫定から0.38ドルへ、率にして約440%の上乗せとなった。ビエンドン・シーフードは0.29ドルから1.00ドル(約245%増)、カントー水産(CASEAMEX)とナムベト(NAVICO)は0.23ドルから0.84ドル(約265%増)で確定している。審査対象外の企業に一律で課される全国税率は2.39ドル/kg(約354円/kg、1ドル≒148円換算)で据え置かれた。

数字だけを見れば0.38ドルは全国税率2.39ドルの6分の1に収まる。だが前回POR20で主要各社が0ドルだった事実と並べると、今回の確定値は米国市場のコスト構造そのものを書き換える。フィレの通関原価にキロ0.4〜1.0ドルが上乗せされれば、対米の薄いマージンは吹き飛ぶ。

企業 暫定(2026年2月) 最終(POR21) 上乗せ率
ニャチャン・シーフード(NTSF) 0.07ドル/kg 0.38ドル/kg 約440%
ビエンドン・シーフード 0.29ドル/kg 1.00ドル/kg 約245%
カントー水産・ナムベト 0.23ドル/kg 0.84ドル/kg 約265%
全国税率(対象外の他社) 2.39ドル/kg(据え置き)

税率はDOC公表値。円換算は1ドル≒148円での概算。

前回0ドルからの反転、米国依存を続ける理由が薄れた

POR20(対象期間2022年8月〜2023年7月)では、審査対象となった主要7社が0ドルの適用を受け、ベトナム産フィレは価格でも米国市場に食い込んでいた。今回の反転で、輸出各社が米国に張り付く動機は弱まる。DOCの審査は毎年繰り返され、暫定と最終で数倍のブレが出るため、価格の見通しが立てにくいことも敬遠材料になる。加えて米国側は輸入検査も強化しており、通関の時間とコストが積み上がる。

ベトナムのパンガシウス輸出は2025年に約22億ドル(約3,256億円)、前年比8%増で着地した。約90万トンが100カ国近くへ流れる構造で、米国と中国が二大市場である一方、伸びの中心はブラジル、CPTPP圏、東南アジア、中東に移っている。米国の関税が読めないなら、増産分をどこへ振るかという判断は明快になる。スケソウダラの供給逼迫で白身魚全体の価格が上がる局面では、この振り向け先の一つが日本だ。世界的なスケソウダラの品薄でパンガシウスに商機が回ってきた流れと重ねると、対米後退はむしろ日本向け供給を厚くする方向に働く。

CPTPP圏が17%へ、日本向けは9カ月で34百万ドル

2025年、CPTPP圏(日本・カナダ・メキシコ・チリ)向けのパンガシウス輸出は35%増の2億7,140万ドル(約402億円)に達し、輸出全体の17%を占めた。関税優遇と持続可能な水産物への需要が背中を押した格好だ。日本単独では、2025年1〜9月の輸出額が3,400万ドル(約50億円)で前年同期比14%増。冷凍フィレが約3,000万ドル(11%増)を占め、付加価値品は47%増、生鮮・丸魚・カット品は39%増と、加工度の高い商材ほど伸びが大きい。

ベトナム産のトラフィレは、日本の白身魚消費のなかでスケソウダラ(アラスカポラック)フィレに次ぐ位置まで上がってきた。FAOの集計では、日本の輸入量は2023年の約7,180トンから2025年に約1万2,130トンへと増えている。外食向けの受容が進み、フライや惣菜の白身素材として定着しつつある。くら寿司の白身に採用され、パンガシウスが日本の定番へ広がっていった経緯も、この裾野の広がりを裏づける。

日本の白身魚バイヤーが今つかめる交渉余地

対米税率の確定は、日本の仕入れ担当に三つの実利をもたらす。第一に供給量。米国向けを絞る工場は、確実に代金が回収でき、CPTPPで価格競争力の出る日本への割り当てを増やす。年間契約の数量交渉で、これまでより強気に上乗せを引き出せる時期に入った。第二に価格。日本向けはCPTPPの段階的な関税撤廃で他国産より原価が下がっており、対米の課税負担を避けたい輸出側と利害が一致する。第三に品質グレードの選択肢。付加価値品の対日輸出が前年比47%増で伸びている以上、フィレの一次調達だけでなく、味付け・衣付けまで含めた委託先を選べる。

ただしDOCの審査は毎年動くため、対米の空き枠は恒久的ではない。POR22で税率が下がれば、輸出各社は再び米国へ数量を戻す。日本のバイヤーが今組むべきは単発のスポット買いではなく、工場側が米国依存を薄めるこの局面を使った複数年の数量枠の確保だ。量産から加工品へ舵を切るベトナム側の輸出戦略を踏まえれば、原料フィレの価格だけで選ぶより、加工工程まで一体で押さえる方が供給の安定度は高い。

仕入れ前に詰めるべき実務

  • 税率区分の確認:NTSF・ビエンドン・カントー・ナムベトは個別税率で対米競争力が残るため、対日でも価格が締まりやすい。取引先がどの企業グループに属するかを最初に押さえる。
  • 契約形態:スポットではなく複数年・数量固定の枠取りで、米国の空き枠が閉じる前に供給を確保する。価格スライド条項で為替と原料変動を吸収する。
  • 認証:ASC・BAPの取得状況と、日本の輸入検査で問われる抗生物質・添加物の残留基準への適合履歴を工場ごとに確認する。
  • 加工度の指定:一次フィレか、味付け・衣付けの付加価値品か。対日で伸びが大きいのは後者で、単価と歩留まりの設計を分けて見積もる。
  • トレーサビリティ:産地コードとロット追跡の運用実態を、書面だけでなく出荷実績で確かめる。

関税確定後に日本の白身魚バイヤーが動くべき点

POR21の確定でベトナム産パンガシウスの対米コストは主要社で暫定の3〜5倍に跳ね、0ドルだったPOR20からの反転が鮮明になった。輸出側が振り向ける先は、35%増でシェア17%まで来たCPTPP圏、なかでも1〜9月に14%増の日本だ。日本の白身魚バイヤーにとっては、工場が米国依存を薄めるこの数四半期が数量枠と価格を固める好機になる。まず取引先の税率区分を確認し、ASC/BAP認証と加工度を指定したうえで、複数年の数量契約に踏み込むのが次の一手だ。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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