NÔNG NGHIỆP VIỆT NAM — TẠP CHÍ NÔNG NGHIỆP ĐÔNG NAM Á

欧州バイヤーが長期契約を手放した——越産ハマグリ調達の新常識

ベトナム産ハマグリ(現地名ngao、nghêuとも表記される二枚貝)の輸出現場で、欧州バイヤーの買い方が静かに、しかし決定的に変わり始めています。ベトナムの農業・環境新聞(Nông nghiệp Môi trường)が2026年7月1日に報じたところによると、二枚貝加工・輸出大手レンガー・ベトナム水産有限会社(Lenger Việt Nam)のグエン・ホー・グエン社長は「顧客が長期契約をやめ、小口・都度発注に切り替えている」と証言しました。年間契約で数量枠を押さえるのが常識だった欧州の水産調達が、ロット単位の機動的な買い付けへ移行している——この変化は、まとまった数量を約束しにくい日本の中堅・中小バイヤーにとって、商談の入口が広がる話です。本稿では第一報でお伝えした同社の証言を起点に、調達行動の構造変化として掘り下げます。

目次

「長期契約から小口・都度発注へ」——レンガー・ベトナムの証言

グエン社長は同紙の取材に対し、「企業の実務の現場で、顧客が長期契約から小口ロットごとの発注へ移り、市場の需要に合わせて柔軟に買う傾向を確認している」と述べています。発言の主語は欧州を中心とする海外顧客であり、一時的な様子見ではなく、発注の設計そのものが変わったという認識です。

同社はこの変化を受けて、生産計画を短いサイクルで組み替え、コスト管理を厳格化する対応を迫られていると説明しています。売り手にとって小口化は、在庫リスクと段取り替えコストの増加を意味します。裏を返せば、小口の買い手を「歓迎すべき客」として受け入れる体制づくりが、輸出企業の側で現在進行形で進んでいるということです。

背景としてグエン社長が挙げるのは、原料調達の不安定化です。「原料の安定確保は日を追って難しくなっている。品質管理と国際基準への適合コストも増えている」と語り、気候変動や養殖環境の悪化、トレーサビリティ要件の厳格化が売り手・買い手双方の計算を狂わせている構図を示しました。

数字が示す細切れ化——全体は微増2%、市場別は乱高下

ベトナム水産輸出加工協会(VASEP)とベトナム税関の統計によると、2026年1〜4月のベトナム産ハマグリ輸出額は3,800万ドル(約59億円、1ドル=約155円換算)で前年同期比2%増でした。全体では微増ですが、市場別に分解すると増減の振れ幅が大きく、発注が細切れ化している実態が透けて見えます。

仕向け先 2026年1〜4月の輸出額 前年同期比
全体 3,800万ドル(約59億円) +2%
スペイン 1,000万ドル(約15.5億円) +29%
イタリア 900万ドル(約14億円) +5%
ポルトガル 500万ドル(約7.8億円) −2%
米国 600万ドル(約9.3億円) +49%

出典はVASEP・ベトナム税関(円換算は執筆時の概算レート)。スペインが29%増、米国が49%増と伸びる一方、ポルトガルは2%減。同じ欧州域内でも国ごとに真逆の動きが出るのは、年間契約の平準化効果が薄れ、四半期・月単位の判断で数量が動くようになった証拠と読めます。

需要の土台そのものは崩れていません。EUの水産市場観測機関EUMOFAによると、2025年1〜11月のEUの二枚貝輸入は6億5,700万ユーロ(約1,180億円、1ユーロ=約180円換算)で、金額ベースで前年比9%増、数量ベースで7%増でした。買う量は増えているのに、買い方だけが変わった——ここがこのニュースの核心です。

バイヤーが年間枠を手放す3つの構造要因と現地の受け止め

記事の内容を整理すると、小口化の要因は3つに分けられます。

  • 原料費の上昇が輸出価格に転嫁され、買い手が数量確定に慎重になった(価格リスクの回避)
  • 気候変動や養殖場の環境悪化で原料供給の安定性が下がり、売り手が長期の数量保証をしにくくなった(供給リスクの顕在化)
  • トレーサビリティや国際認証への適合コストが増え、契約単位を小さくして条件を都度見直す方が双方に合理的になった(規格対応の高度化)

現地の受け止めは悲観一色ではありません。グエン社長は「持続可能性を重視する世界の消費潮流の中で、ハマグリは自然に近い養殖で環境負荷が低いという強みを持つ」と述べ、さらに「原料から品質管理、ブランド構築まで適切にやり切れば、国際市場での価値と地位の確立は十分可能だ」と強気の見通しも示しています。報じた農業・環境新聞も、輸出額の微増という数字の裏で企業の適応力が試されているという論調で、業界に構造転換を促す書きぶりです。VASEPの市場別統計が示す乱高下も、この「試されている」局面を裏付けています。

日本の水産バイヤーへの示唆——「小口しか出せない」が弱点でなくなる

ここからが本稿の核心です。従来、日本の中堅商社や外食・小売の調達担当がベトナム産二枚貝に手を伸ばそうとすると、年間で大きな数量枠を押さえる欧州バイヤーの後ろに並ぶ形になり、発注量の小ささが交渉上の弱点になりがちでした。ところが売り手の側が小口・都度発注を前提に生産計画を組み替えている今、小口の買い手はむしろ通常の客になります。欧州勢が手放した「柔軟に買える立場」を、日本勢が低コストで手に入れられる局面です。

具体的に動くなら、次の4点から始めるのが現実的です。第一に、最小ロットの再確認。コンテナ1本未満の混載や、冷凍・ボイル・殻付きなど加工形態ごとの最小数量を、この半年の条件で聞き直す価値があります。1年前に断られた条件が通る可能性があるからです。第二に、スポット価格と年間価格の二本立てで見積もりを取ること。売り手が小口対応のコストをどう価格に乗せているかが見え、交渉の起点になります。第三に、品質・トレーサビリティ要件を最初から明示することです。売り手は国際基準への適合コスト増に悩んでおり、要件が明確な買い手は段取りコストを下げてくれる相手として優先されやすくなります。第四に、支払い条件やリードタイムの柔軟さを差別化材料にすること。数量で勝負できない分、取引のしやすさで選ばれる余地が広がっています。

ベトナムの水産大手が日本市場を新しい出口として意識し始めている流れも追い風です。エビ大手がティラピアで日本の寿司ネタ市場を開拓する動きと重ねると、「欧州依存の見直し」という売り手側の思惑と、日本側の小口調達ニーズは噛み合いやすい位置関係にあります。

留意点もあります。小口化は売り手にとって単価引き上げの圧力になるため、スポット買いだけを続けると割高が定着しかねません。入口は小口で開き、品質が確認できた段階で四半期単位の緩い数量合意に移す、という段階設計が現実的です。

波及——小口化の力学はハマグリで止まらない

今回の変化はハマグリ固有の事情ではなく、原料コストの上昇と需要の不確実性が重なった品目に共通の力学です。エビやイカ、パンガシウスなど、ベトナムの主力水産品にも同じ発注行動が波及する可能性は高いと見ます。実際、インドネシア638工場の対中解禁がベトナム産エビの調達地図を揺らしたように、供給網の組み替えは一つの品目・一つの国では完結しません。買い手の発注が細切れになるほど、産地・供給元の切り替えは頻繁になり、比較検討の土俵に載る産地が増えます。

売り手側では、小口対応力そのものが競争力になります。多品種小ロットの生産計画、在庫の見える化、書類・認証対応の速さ。ベトナムの加工場がこの方向に投資を進めれば、日本の買い手にとっては「小さく試して大きく育てる」調達がやりやすい産地に変わっていきます。

調達検討の実用情報と次のアクション

項目 内容
品目 ハマグリ類二枚貝(現地名ngao/nghêu)。冷凍・ボイル・殻付き等で流通
主要輸出市場 スペイン、イタリア、ポルトガル、米国
統計出典 VASEP(ベトナム水産輸出加工協会)、ベトナム税関、EUMOFA
換算レート 1ドル=約155円、1ユーロ=約180円(執筆時の概算)

まとめます。欧州バイヤーの小口・都度発注への転換は、ベトナム産ハマグリの売り手に生産計画の組み替えを強いる一方、日本の買い手には数量の小ささを弱点にしない交渉環境を用意しました。次のアクションとしては、①VASEP会員の二枚貝加工企業をリストアップする、②小口・混載前提の見積もりをスポットと年間の二本立てで依頼する、③品質・書類要件を明示した上でサンプル取引から段階的に関係を築く——この順で動けば、欧州勢の「枠の空き」を実利に変えられます。

参照元

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

目次