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ザライでドリアンが10ha超枯れ、原因は未特定のまま農家はコーヒーへ

ベトナム中部高原ザライ省のチュープロン社(xã Chư Prông)で、収穫を待つはずだったドリアン園が次々に伐採されている。2026年9月23日付のベトナム農業環境紙(Nông nghiệp và Môi trường)は、ホアンイエン村とバット村で暫定集計10ヘクタール超の木が立ち枯れたと伝えた。原因はまだ特定されていない。菌によるものではないかという初期の見方は出ているが、菌の種類は分かっていない。

面積だけなら10ヘクタール超は小さい。それでも日本の買い手が読む価値を持つのは、社の人民委員会が当面の呼びかけに挙げたのが農薬でも品種でもなく「単作をやめてコーヒーと混植する」という土地の使い方だったからだ。原因が出るより先に、作り方のほうが動いている。

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ザライ省チュープロン社で、育て上げた園地が丸ごと切り倒されている

6年生の300本近くが立ち枯れ、前年は17トンを出していた

ホアンイエン村のレ・ヴァン・タインさん一家は、兄弟で300本近くのドリアンを植え、樹齢は6年ほどになっていた。前年は約17トンを収穫し、販売単価はキロ当たり5万7,000ドン。ただし同紙は「販売価格」としか書いておらず、この単価がどの取引段階の値かは示していない。1円=163.60ドン(2026年9月25日)で換算するとキロ約348円、17トン分を掛ければ9億6,900万ドン、約592万円になる(掛け算は当記事の計算)。

今季はその園地が枯れた。同紙がタインさんの観察として伝えるのは、幹に黒い斑が出たあと葉が落ち、木が立ったまま死ぬという経過だ。タインさんは、この2ヶ月余り続いた長雨が菌の発生と拡大を招いたのではないかと話している。同紙は、前年並みの収量を前提にした損害が hàng tỷ đồng(数十億ドン規模。1 tỷ=10億ドン=約611万円)に達し、長年の投資・管理費は含まない数字だと書いている。ただし前段の掛け算は9億6,900万ドンで1 tỷ に届かず、同紙の記述と単純計算は合わない。

4年目の162本は、初めての収穫を目前にして全部倒れた

同じ村のチン・ゴック・オアインさんは、4年目に入った162本を抱えていた。今年が初収穫のはずで、本人は4億〜5億ドン(約245万〜306万円)の収入を見込んでいたと同紙に語っている。園地は丸ごと伐採に入った。隣の園が菌にやられたら早く切らない限りこちらにも来る、どの家も伐採せざるを得ない、と話している。初収穫まで年数がかかる作物ほど、1シーズンの天候で経営が折れる。

菌の種類は特定できていない、社が呼びかけたのはコーヒーとの混植だった

枯死は2ヶ村に集中、症状は胡椒の立枯病に似ている

チュープロン社の農業・インフラ課の担当者、ゴー・アイン・トゥアン氏によれば、枯死は2ヶ村に集中している。初期の見立てとして、症状が胡椒(ホーティウ)の立枯病(速枯れ・遅枯れ)に似ていることから菌の可能性を挙げたが、菌の種類は特定できていない。ここを「菌害と断定された」と読むと、事実を先回りすることになる。

同氏によれば、社の人民委員会はこれ以前から、特に平坦で排水の悪い土地でドリアンの作付けを広げないよう繰り返し呼びかけていた。雨が長引けば園内に水が溜まり、菌が広がる条件が整うからだ。そのうえで当面の呼びかけとして挙げたのは、単作を避けコーヒーと混植してリスクを下げること、そしてドリアン価格がこのところ安定していない点への留意だった。同紙が伝えた範囲では、排水設備の改修は呼びかけに入っておらず、枯れた園地が実際に「平坦で水はけが悪い」条件に当たるとも書かれていない。

2017年のクロンパクでは500ha近くが枯れ、Phytophthoraが特定された

中部高原でこの型の被害が出たのは初めてではない。同紙の2017年2月の記事によれば、ダクラク省クロンパク県で成木500ヘクタール近くが枯死し、国内2機関の鑑定と分析が一致して Phytophthora spp. による幹の樹脂漏れが原因と結論づけられた。一部の区画ではRhizoctonia spp. も併せて検出されている。当時、省の栽培・植物保護当局は、着花・着果を促す刺激剤や化学肥料の過剰使用で樹勢が落ちたところへ季節外れの長雨が重なった、と説明した。9年前の事例が今回の答えになるわけではないが、買い手が見るべきは病名ではなく管理履歴のほうだ。

青果輸出は単月で過去最高、ドリアンの最盛期に園地が切られている

8月単月13.7億ドル、8ヶ月累計61.5億ドル

同紙が税関局(Cục Hải quan)の数字として伝えたところでは、2026年8月の青果輸出額は13億7,000万ドル(1.37 tỷ USD)で、7月比27.6%増。単月として過去最高を更新した。ベトナム青果協会のグエン・タイン・ビン会長は、通年で100億ドル前後に達するとの見方を示している(個人の見通しで確定値ではない)。

項目 原文表記 換算 伸び率
青果輸出・2026年8月単月 1.37 tỷ USD 13億7,000万ドル 前年同月比 +44.5%
青果輸出・1〜8月累計 6.15 tỷ USD 超 61億5,000万ドル超 前年同期比 +27.7%
うち中国向け・1〜8月 3.87 tỷ USD 超 38億7,000万ドル超(全体の63%) 前年同期比 +38.8%
うち日本向け・1〜8月 173 triệu USD 1億7,300万ドル 前年同期比 +5.8%

10ヘクタール超は、供給量を動かす規模ではない

商工省輸出入局の見方として同紙が伝えたのは、9〜10月に中部高原のドリアンが終盤の最盛期に入り、この時期は他国でドリアンの収穫がほとんどないため中国向けを支える、という読みだ。園地が切られているのは、産地全体では最も売れる時期の真ん中にあたる。10ヘクタール超の枯死をもって「ベトナム産ドリアンの供給が細る」と書けば桁が合わない。需要側は伸びており、中国以外の行き先が広がる動きは対韓ドリアンが7ヶ月で188%増、日本のバイヤーは何を仕込むべきかで扱った。取り出すべきは供給ショックではなく、同じ省でも園地ごとに結果が違う事実だ。

原因が出るのを待てない買い手は、園地の何を聞けるか

地形・排水・植栽年次は、資料ではなく現地でしか取れない

産地の資料に載るのは面積・収量・認証番号で、傾斜や雨季の滞水は載らない。原因が確定していない以上、排水条件は「今回の原因」としてではなく、社の人民委員会が従前から挙げていた注意点として聞く。写真を送ってもらうなら、実ではなく雨上がりの畝間と排水溝を撮ってもらうほうが判断材料になる。選果・加工段階で何を見るかは別の論点で、そちらはドリアンが増えA級が減る、日本の買い手は工場をどう選ぶかに整理した。

単価は「どの段階の値か」を確認してから比べる

今回の5万7,000ドン/キロは、取引段階の裏づけが取れていない数字だ。これを選果場渡しや輸出FOB、日本の卸の建値と並べて倍率を出すと、実態と無関係な比率が出る。見積を受け取ったら、その単価がどの段階のもので、選果・梱包・輸送・検疫のどこまでを含むのかを書面で確認したい。

産地照会でそのまま使える6項目

確認項目 聞き方の例 この件との関係
地形と排水 傾斜地か平坦地か。雨季に滞水する区画はあるか 社人民委員会が従前から警告
単作か混植か 単作か、コーヒー等との混植か 社人民委員会が当面の対策に挙げた分散策
樹齢・植栽年次 区画ごとの植栽年と初収穫年 4年目の園地は1シーズンで全損しうる
施肥・刺激剤の履歴 着花促進の施肥をどう管理しているか 2017年クロンパク事例で樹勢低下の要因
単価の取引段階 庭先渡し/選果場渡し/FOBのどれか 段階の違う数字は比較に使えない
代替区画 同一供給者に別産地・別区画はあるか 村単位で同時に倒れる型の被害が出ている

切った畑はコーヒーに戻る、日本の焙煎所に効くのは数年後

コーヒーへの植え替え費用は、まず働いて作る

タインさんは園地を片付けたあと、コーヒーの再植(tái canh)に充てる資金を作るため働きに出る予定だと同紙に話している。理由に挙げたのは、コーヒーは突出した収入は生まないが自分たちの生産条件に合い、より安定していると見ている点だ。オアインさんも周辺の多くの農家と同様にコーヒーへ戻ると述べている。2ヶ村の規模で調達量が動くわけではないが、伐採跡に若いコーヒーが入る流れが広がれば、ザライ省のロブスタには数年後に樹齢の若い区画が増える。

苗と資材の川上に需要が振れる

作り直しが始まれば動くのは苗木と土壌資材だ。同じ省の育苗の現場は年2100万本を出すザライの育苗企業、木材チップ調達の川上を追うで取り上げた。苗の出どころと品質管理は、数年後の原料の素性を決める最初の分岐だ。

次の見積依頼に1行足すところから始める

この件は供給量の話として読むと何も出てこないが、土地の使い方の話として読めばドリアンにもコーヒーにも胡椒にも効く判断材料が残る。手を付けるなら、次にベトナムの供給者へ見積を依頼するときに「対象区画の地形・排水条件と、単作か混植か」の1行を質問票へ足すところからでいい。答えられる相手は園地を把握しており、答えられない相手は間に何層か挟まっている可能性が高い。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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