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ASC飼料認証でベトナムが世界最多15工場、日本の買い手は何を聞くか

ベトナム水産物輸出加工協会(VASEP)は9月21日、ASC(水産養殖管理協議会)と組んで9月15日にカントーで開いた新基準研修の内容を公開した。対象は養殖場・企業・水産飼料工場。日本の買い手に効くのは、審査の範囲が養殖池の柵の内側にとどまらず、飼料の原料までさかのぼる点だ。ASCの公開データベースを2026年9月25日に集計すると、認証飼料工場のサイト数はベトナムが15で、どの国よりも多かった。

目次

カントーの研修でASCが示した新基準はどこが変わるか

ASCはこの場で、2030年に向けて水産物需要が約17%、養殖生産量が27%伸び、水産物の約60%が養殖由来になるという見通しを示した。審査の視野は飼料原料から飼料工場、養殖場、サプライチェーン、最終製品までつながると説明した。

12の魚種別基準が1本になり、移行の締切は2028年5月1日

新しいASC Farm Standardは、魚種ごとに分かれていた12本の基準を1本の世界共通基準に束ねる。ASCの基準ページによると、移行の義務化日は2028年5月1日まで延ばされ、以降に始まる審査はすべて新基準で行われ、旧来の魚種別基準は無効になる。暫定版V1.0.1A2が現行で、V1.1は2026年11月1日に公開予定と書かれている。

この期限は一度動いている。VASEPが7月18日に伝えたところでは、当初の義務化日は2027年5月1日で、ASCが1年延長した。ASCの技術ディレクターAlly Dingwall氏は、移行を支えるための判断だと説明している。日本語版は公開済みで、ベトナム語版は「Coming soon」の表示だ。

原則3の社会要件は115項目、13の論点に分かれている

新Farm Standardの原則3は13の論点にまたがる115項目で構成され、強制労働、児童労働、差別、労働安全衛生、賃金、労働時間から苦情申立の仕組み、地域社会の参加までを含む。動物福祉でも施設ごとの健康管理計画、疾病管理、バイオセキュリティ、水質、死亡率の低減、取り扱いと締めの工程が並ぶ。

飼料工場の認証は2026年2月にすでに必須化されている

飼料工場が審査対象に入ったのは、この9月に始まった話ではない。ASCのFeed Standardのページには、2025年5月1日公開のv1.1が2025年11月1日には施行されず、2025年12月19日公開のv1.2に差し替わり、2026年2月2日から有効かつ必須になったと明記されている。相手が「対応済み」と言うなら、どの版かを確かめれば鮮度が見える。

飼料は養殖場の環境負荷の最大9割を占める

ASCが飼料に踏み込む理由も同じページにある。藻類を除く養殖水産物の70%超は餌を与えて育てられ、飼料は多くの場合、生産者にとって最も高い投入コストになる。配合飼料1粒には最大50種類の原料が入りうる。飼料は養殖場の環境負荷の最大90%を占める。

審査は混合率1%超の原料の仕入れ先まで届く

混合率1%を超える原料の供給網がデューデリジェンスの対象になり、植物性原料は違法な森林減少と土地転換、海洋性原料はIUU漁業と絶滅危惧種のリスクが低いことを求められる。魚粉・魚油はMarinTrustとMSCが踏み石になる。

ASCの公開データを数えると、ベトナムの認証飼料工場は15

報告は、ASCが研修で示した数字として、飼料工場は34カ国の148工場がプログラムに入り、124が認証済み、24が審査中、ベトナムは20工場のうち13が認証済みで7が審査中と伝えている。確かめるため9月25日に「Find a Feed Mill」を照会すると、証明書レコード140件、工場サイト156件、34の国・地域で、サイト単位の認証済みは128件だった。

国・地域 認証済みの飼料工場サイト数
ベトナム 15
エクアドル 10
ノルウェー 10
チリ 8
トルコ 8
メキシコ 7
ギリシャ 6
インド 6

出所はASC「Find a Feed Mill」(9月25日照会)の上位8カ国。2位以下に5件の差があり、対日輸出にASC条件を付けたとき川上でつまずきにくい国に位置している。

会場で示された13工場と、9月25日時点のデータのずれ

研修の13という数と、データベース上の15は一致しない。ベトナムの登録は23件で、認証済み15件、初回審査中6件、初回手続きが未完了1件、認証が付与されなかったもの1件。認証済みのうち新しい3件は2026年7月から8月に有効期間が始まっており、研修の9月15日より前だ。10日で2件増えたのではなく、数え方か参照時点が違うと見るのが妥当で、仕様書に書く数字は自分で当日引くのが確実だ。

対象魚種はパンガシウス向け9、エビ向け7

認証済み15工場を対象魚種で分けると、パンガシウス向けが9、エビ向けが7、ティラピア向けが7、熱帯海水魚向けが2で、重複がある。淡水マス向けとスズキ・タイ類向けも各1件。

認証保有者(抜粋) 対象魚種 有効期限
Nutreco International Vietnam(Thuan Dao) エビ・パンガシウス他 2028年7月1日
C.P. Vietnam(Aquaculture Business) エビ 2028年7月17日
GreenFeed Viet Nam パンガシウス・ティラピア他 2028年7月31日
Viet Uc Aqua Feed エビ 2029年7月10日

初回審査中の6件にはGODACO Seafoodのヴィンロン工場が入る。販路の組み替えを追った対米エビ失速でGodacoがアジアへ向かう記事と重ねると、売り先の見直しと川上の認証審査が同時に進んでいることが見える。

VASEPが持ち込んだ10の詰まりどころに、ASCはどう答えたか

研修には、ベトナム企業が実務で引っかかる点をASCにぶつける専用の時間が置かれた。VASEPがまとめた10グループは、抗生物質と動物福祉、追跡システムTraceASC、緩衝帯の距離、塩分と井戸の水位、廃棄物管理、認証の有効期間と停止、多魚種の養殖区の評価、効力の遡及、ベトナム固有の法制上の問題だ。

治療した池のエビはASC品として売れない

抗生物質について、ASCは予防目的の使用は禁止だと改めて示した。病気になった場合は動物福祉の観点から治療が認められるが、治療したエビのロットは分別し、ASC認証品として販売することはできない。買い手としては、認証の有無より認証ロットと非認証ロットを分けて出荷できるかを聞くほうが実態に近い。

TraceASCの生産性や給餌量は競合に見せない

TraceASCでは、生産性、給餌量、放養密度といった商業データは競合他社に共有されないとASCが明言した。重複入力を減らすためExcelでの一括アップロードを進め、GDST準拠の管理システムはAPIで接続できるようにする。残留検査では、殻に自然由来または背景値として存在しうるSEMの扱いが論点になり、検査は可食部、つまりエビの身で行うと確認された。地下水位の監視は水ストレスが「高い」「極めて高い」地域に限られる。

日本の買い手が発注前に聞くべきことは3つ

証明書は工場サイト単位で、社名では絞れない

証明書は会社名ではなく工場サイトに紐づく。複数の工場を持つ相手に「ASC飼料を使っている」と言われても、認証されているのがどの工場かは社名からは決まらない。証明書番号とサイト名、有効期限を控えれば誰でも照合できる。カマウのエビ養殖組合のASC認証取得の記事と合わせると、養殖場と飼料工場で証明書の単位が違うことも見えてくる。

認証がない相手には最長3年のAIPがある

ASCはASC Improver Programmeも紹介した。養殖改善プロジェクト(AIP)は最長3年で、ギャップ分析から段階的に実行し、第三者の検証と進捗の公開が伴う。取引先が基準を満たせないときは何年目のどの段階かを聞けば、来期の調達計画に入るか判断できる。

養殖場も同じ日に引く、有効な証明書はエビ78件

同じ要領で「Find a Farm」をベトナムで照会すると、証明書225件のうち有効なのは127件。エビ78件、パンガシウス37件、熱帯海水魚7件、ティラピア3件、二枚貝2件だった。取消43件、取り下げ18件、失効10件も含まれ、取得後に維持できるかで分かれる。1件の証明書に複数のサイトが入るため、養殖場の数はこれより多い。VASEPの報告では、ASCは導入から14年のベトナムを認証エビの生産量で世界3位、ASCパンガシウスで最大の生産国と位置づけている。

確認項目 調べ方 出所
飼料工場の認証 証明書番号か社名で照会し、サイト名と有効期限を控える ASC Find a Feed Mill
養殖場の認証 国と魚種で絞り、ステータスが認証済みかを見る ASC Find a Farm
基準の版 飼料はv1.2、養殖場は暫定版V1.0.1A2か新版か ASCの基準ページ
未認証先の進捗 AIPの開始時期と段階、検証の公開状況を聞く 取引先への確認

次の一手は、候補の飼料工場と養殖場を同じ日付でASCの2つの検索画面に通し、証明書番号・サイト名・有効期限・ステータスを1枚の表にすることだ。所要は30分ほどで、相手の説明と公開データのずれがその場で出る。会場の13と当日の15のように、数え方と時点が違えば答えも変わる。カマウで動き出したCPの飼料工場の記事と並べると、工場の新設と証明書の取得が別の時計で進むことも見える。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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