ダクラク・ドリアン祭2026、配信販売で約600トンが動いた
ベトナム中部高原のダクラク省で開かれた「ダクラク・ドリアン祭2026」が9月2日に閉幕した。会期を通じ、ドリアンはライブコマースを主軸とした販売で約600トンが売れ、金額はおよそ440億ドンに達した。2026年9月上旬の為替(1円=約167ドン)で換算すると約2億6,000万円になる。産地の祭りが、収穫物を展示する催しから、配信を通じて直接売り切る場へと軸足を移した回だった。
「1コミューン1KOL/KOC」が8つの村に売り手を置いた
今回の販売を組み立てたのが、行政主導の「1つのコミューン(村)に1人のKOL・KOC」という枠組みである。省内の8つのコミューンがそれぞれ発信者を立て、産地からライブ配信で注文を受けた。この配信経由だけで約262トン、金額にして204億ドン超(約1億2,000万円)を売り上げた。地域の担当者や生産者が画面に立ち、木の下や選果場から実物を映して価格と等級を伝える売り方が、村ごとに並行して走った。
クロンパックの競売350トンが配信と併走した
配信販売の隣で、ダクラク省のドリアン集散地クロンパック(Krông Pắc)では競売方式の取引が組まれた。こちらは約350トン、およそ238億ドン(約1億4,000万円)が成約した。会場での競売と、村ごとのライブ配信という二つの売り方を同じ祭りの中で走らせ、大口のバイヤー取引と、消費者への小口直販を並べた設計になっている。二つを足すと祭り全体の約600トン・440億ドンにおおむね重なる。
ベトナムの農産物配信は行政と発信者が組む段階に入った
産地と配信者が組む売り方は、ダクラクに限った動きではない。北部バクニン省では、副委員長と人気TikTokerが並んだライチのライブ配信が数時間で31トンを超えて売れた。ある配信では30分で20トンのドリアンが完売した事例も報じられている。TikTok側は2026年下半期に約400万米ドル(1,000億ドン)を投じ、村単位で特産品を売る「Eコマース・コミューン」構想を全国へ広げるとしている。生鮮の一次産品が短時間で大量にさばける回路として、配信販売が各地で形になり始めた。
産地が仲買を挟まず消費者へ届く回路を持った
この売り方の核心は、産地が中間流通を通さずに最終消費者とつながった点にある。ダクラクのドリアンは仲買を経て輸出業者や国内卸へ流れ、価格の主導権は買い手側に寄ってきた。中国市場では出荷が集中すると卸値が急落する場面もあり、販路を一本に頼る危うさが繰り返し指摘されてきた(輸出3割増でも中国で卸値半減、越ドリアンの逆説と市場分散)。村単位で配信の売り場を持てば、収穫物の一部を自分たちの値付けで直接動かせる。
収穫の山を配信でさばく、鮮度と単価の実際
発表された数字を単純に割ると、配信経由の8コミューンは1キロあたり約7万8千ドン(約470円)、クロンパックの競売は約6万8千ドン(約410円)になる。配信の平均単価がやや高く出たが、これは等級や出荷のタイミングの違いも混じった数字で、配信だけの効果と切り分けることはできない。それでも、収穫が一気に立ち上がる最盛期に、鮮度が落ちる前の実物を映して即売するやり方は、値崩れを避ける一つの受け皿になっている(ダクラク41000haのドリアン最盛期が示す産地コード280の調達勘所)。
日本の産直・ECが読み替える点、生産者を配信の主役に置く
日本の産直やECに引き寄せると、示唆は発信者の選び方に出る。ダクラクの枠組みで画面に立ったのは、遠方の有名タレントではなく、地域の担当者と生産者自身だった。産地の言葉で等級や収穫の様子を語る配信は、送料や鮮度の説明とも噛み合う。JAや道の駅、直売所が抱える生産者を、産地単位で配信の売り手として束ねる組み方は、日本の産地でも移植の余地がある。個々の農家が単独で配信するより、地域でまとめて売り場を立てるほうが、視聴者の集めやすさと在庫のさばきやすさの両面で動かしやすい。
配信販売の弱点、物流とデータが残る宿題
ただ、配信で売れた後の物流は別の課題として残る。ドリアンのような大型で傷みやすい果実を、注文単位で個別に届ける梱包と輸送は、まとめて出荷する競売より手間もコストもかかる。祭りという一過性の集客に頼るだけでは、翌シーズンに需要が続く保証もない。買った人の連絡先や購入履歴を産地側が蓄え、次の収穫期に再び声をかけられる仕組みまで持てるかどうかで、配信販売が催事で終わるか、通年の販路に育つかが分かれる。特産品をアプリの棚に常設する動きも各地で出ている(ダナンOCOP477品がGrabへ、配車アプリが特産の棚になる日)。
産地が売り方を選べる時代、次はデータの蓄積へ
ダクラクの祭りが示したのは、産地が競売と直販という二つの売り方を自分で選び、同じ収穫期に併走させられるようになった現実だ。約262トンを村単位の配信でさばいた実績は、生産者側が価格と顧客の一部を手元に引き寄せた記録でもある。日本の産地にとっても、誰が画面に立ち、買った人のデータをどう次へつなぐかが、配信を売上の一日で終わらせないための分かれ目になる。
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