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アンザンの農家が水田をミットに変え米作を上回る純益45百万ドン

ベトナム南部アンザン省ヴィンタンチュン(Vĩnh Thạnh Trung)で、稲作をやめてタイ種ミット(ジャックフルーツ)に切り替えた農家が、通年の米作を上回る手取りを出している。地元紙Dân Việt(2026年8月14日)が伝えたファン・チュン・ティン(Phan Trung Tín)氏の畑は3.5公(コン、約0.35ヘクタール)に400本。直近の収穫の純益は45〜50百万ドン(約26万〜29万円)で、農家渡しは1kgあたり20,000〜22,000ドン(約110〜125円)だった。

ミットは日本市場では冷凍果肉やドライ、ピューレの原料として動く。誰が、どの面積で、いつ穫るのかが崩れれば調達計画は揺れる。アンザンの一集落で進む「稲からミットへ」の置き換えは、供給地図の描き替えそのものだ。調達側の目線で、この小さな転換の中身と限界を分解する。

目次

果樹442.6haの集落で、ミットが約334haまで広がった

ティン氏の集落だけでミットに置き換わったわけではない。ヴィンタンチュン一帯の果樹面積は442.6ヘクタールに達し、そのうちおよそ334ヘクタールをミットが占める。果樹地帯の7割超が1品目に寄っている計算で、しかもその主役は在来種ではなくタイ種ミットだ。地域平均の単収は1ヘクタールあたり約25トンとされる。

アンザンはメコンデルタの米どころで、二期作・三期作の水田が広がってきた土地だ。その稲田の一角がここまで果樹に振れているのは、水利と土壌が果樹に耐えることに加え、米の反当り収益が頭打ちだからだ。同じアンザン省では化学肥料を減らした有機米で利益を伸ばす動きもあり、米に残る農家と果樹へ抜ける農家に道が分かれつつある。

3.5公・400本で純益45〜50百万ドン、ティン氏「通年の米より良い」

ティン氏は自身の規模を控えめに語る。原文の発言を要約すると「3.5公・400本ほどなので収入は『まずまず』。大面積の人はもっと利益を出せる。ミットの相場は時期で上下するが、同じ面積で通年稲作をするより手取りは良い」という趣旨だ。ここで重要なのは、彼が米との差を金額の倍率ではなく「同一面積・通年」で比べている点にある。

換算は1ドン≒0.0057円(1円≒175ドン)の概算。相場・為替で変動する。

項目 数値(原文) 円換算の目安
作付面積 3.5公・400本(約0.35ha)
直近収穫の純益 45〜50百万ドン 約26万〜29万円
農家渡し価格 20,000〜22,000ドン/kg 約110〜125円/kg
地域平均単収 約25トン/ha
集落の果樹面積 442.6ha(うちミット約334ha)

0.35ヘクタールで45〜50百万ドンという手取りは、メコンの水田1ヘクタールの米の粗利と近い水準に、その5分の1以下の面積で届く。稲を捨てて果樹に賭ける判断の下地はここにある。稲作の3〜5倍の年収に届いたフエの水田を蓮に変えた事例と方向は同じで、低収益の水田を高付加価値の作物へ振る流れが北中部から南部まで連なっている。

鍵は「ナ(nghịch vụ)」の時期外し。ただし手法の中身は原文が明かさない

Dân Việtの見出しは「一つの手を使うだけで高く売れる」とうたい、その手を「trái nghịch vụ(時期外し・季節逆の結実)」の処理技術だと示す。旬をずらして端境期に穫れれば、供給が薄い時期の高値に乗れる——価格が20,000〜22,000ドンで踏みとどまっている背景には、この出荷時期のコントロールがある。

ただし、記事は「どう時期を外すのか」の具体的な処理方法(剪定・断水・着果調整の手順など)までは書いていない。ここを推測で埋めると誤った技術指南になるため、確認できる事実に留める。メコンの果樹で時期外し出荷が広く行われているのは業界の共通認識だが、ティン氏がどの手順を採ったかは一次情報にない。調達側がこの産地を評価するなら、「時期外しで何月に、どれだけの量を安定して出せるのか」を、農家ではなく集荷業者の出荷実績で裏を取るべき論点になる。

同じ畑に「日本種パパイヤ30ha」の提案、産地は組織化へ動く

この集落には、Dũng Loan Green Agri社が日本種パパイヤ(đu đủ Nhật)30ヘクタールをミットと混植で導入する構想を持ち込んでいる。買取価格は1kgあたり4,000ドン(約23円)を提示し、狙う先は米国・EU市場だという。単価はミットより低いが、契約買取で回転を稼ぎ、樹間を使って土地の稼働を上げる設計だ。個々の農家の時期外し頼みから、企業主導の契約・混植へと、産地が組織化へ一歩踏み出しつつある。

調達側にとって、この「企業が入って面積と規格をそろえる」動きは信号だ。等級別の買取が入ると出荷が標準化され、量と品質の予見性が上がる。ラムドン省で老いたドラゴンフルーツ畑を等級別買取のパッションフルーツに切り替えた事例と同じで、契約と等級設計が入った産地ほど、遠隔のバイヤーが読みやすくなる。

日本のミット調達は冷凍・加工が入口、生鮮生果は検疫と鮮度が壁

日本の食品メーカーがアンザン産ミットに接点を持つとすれば、まずは冷凍果肉・ドライ・ピューレの原料としてだ。ミットの生果は大玉で日持ちが短く、生鮮での対日輸出は検疫と鮮度管理のハードルが高い。一方、現地または近隣国で一次加工した冷凍品なら、菓子・アイス・プラントベース食品の素材として通年で扱える。乾燥・粉末の受託加工を手がける立場からも、季節性の強い南国果実は「加工して初めて調達計画に乗る」原料だ。とくにミットは追熟が進むと香りと繊維感が急に立つため、収穫から一次加工までの時間管理が品質を左右する。産地から加工場までの距離とコールドチェーンが確保できるかは、価格以上に確認しておきたい。

アンザンの転換で見るべきは、単価の高さより供給の設計だ。時期外しで端境期を埋められる産地か、企業契約で等級と量が固定されるか——この2点がそろえば、日本側は冷凍原料の年間ボリュームを組みやすくなる。逆に、農家ごとの相場任せのままなら、調達は現物スポットの域を出ない。

この産地を追うなら出荷カレンダーと契約の有無を見る

ティン氏の0.35ヘクタールが示したのは、メコンの水田がミットへ振れれば同一面積で米を上回る手取りが出るという現場の事実だ。だが調達判断に効くのは、彼一人の純益45〜50百万ドンではなく、集落334ヘクタールが時期外しでいつ・どれだけ出せるか、そしてDũng Loan Green Agri社のような契約主体が等級と量を束ねられるかにある。次の一手は明快だ。アンザン産ミットの冷凍原料を検討するなら、集荷業者に月別の出荷実績と規格を照会し、日本種パパイヤ混植のような契約案件が実際に走り出すかを1シーズン追う。産地が組織化する前の今が、数量と価格の条件を握りやすい局面になる。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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