ハノイのノイバイ近郊で、米の実りが悪い痩せた水田を温室に替え、韓国系の「ミルクグレープ」と呼ばれる白系ぶどうを育てる農家が成果を上げている。地元農業誌 Nong nghiep Moi truong が2026年7月25日に伝えた報道によれば、1986年生まれのタ・クオック・ホアン氏が約10億ドンを投じて水田をハウスぶどう園に転換し、年商は3億ドン(300百万ドン)を超えた。北部でのハウスぶどうは、品種導入と水田転換の組み合わせがどこまで再現されるかを占う事例になる。
韓国由来の白系ぶどうを温室で育てる
ホアン氏は8サオ(ベトナム北部の1サオは360平米)の痩せた水田を、自動灌漑を備えたビニールハウスのぶどう園に切り替えた。導入したのは韓国由来の白系ぶどうで、乳白色の果皮から現地で「ミルクグレープ」と通称される品種だ。有機肥料と生物農薬を使い、フタオビコヤガなどの害虫には防虫ネットで対応する。北部デルタの痩せた水田(đất lúa bạc màu)は、米を作っても収量が上がらず採算が取りにくい土地だ。ここに資本を集中し、屋根と灌漑で環境を制御したうえで単価の高い果実に切り替える選択は、面積を広げて相場商品を作るのとは逆の発想に立つ。
8サオの水田に10億ドン、年商は300百万ドン超
1本あたりの収量は初期の10〜15kgから20〜25kgへ伸び、年1回の収穫でサオあたり40〜50百万ドンの収入を得ているという。
| 項目 | 数値 | 円換算(1円≈170VND) |
|---|---|---|
| 初期投資 | 約10億ドン | 約588万円 |
| 年商 | 300百万ドン超 | 約176万円超 |
| サオあたり収入 | 40〜50百万ドン | 約23.5万〜29.4万円 |
| 1本あたり収量 | 初期10〜15kg→20〜25kg | — |
| 栽培面積 | 8サオ(1サオ=360平米) | — |
いずれも Nong nghiep Moi truong の同記事に基づく。円換算は目安レートによる概算で、為替と取引条件で振れる。
規模拡大の壁は品種でなく資金繰り
ホアン氏自身は、次の課題を規模拡大の資金に置く。とくに年末(10〜12月)の土壌改良と苗の発注時期に運転資金が要り、社会政策銀行を通じた優遇融資に期待をかける。地元行政もこの融資支援を実施しており、個人農家の設備投資を後押しする枠組みが動いている。品種そのものより、資金繰りと土づくりが規模化のボトルネックになっている。北部は冬に低温期があり露地の果樹に向かない土地も多いが、環境制御型のハウスなら制約を回避できる。ホアン氏の8サオが示すのは、狭い面積でも設備投資で気候の不利を打ち消せるという北部果樹の解法だ。
外来の優良品種がベトナムの水田で根づき始めた
ベトナム産の生鮮ぶどうが日本の店頭に並ぶには検疫協定という壁があり、当面は現実的でない。それでも、この事例の意味は二つある。第一に、北部ハノイ近郊で高糖度ぶどうを温室で仕立てる技術と経営が個人農家の水準で成立し始めたこと。第二に、韓国品種の導入という形で外来の優良品種がベトナムの水田転換とセットで持ち込まれていること。日本のバイヤーにとっては、シャインマスカットのような自国品種がベトナムでどう扱われるかという知財の観点と、将来の加工・冷凍原料の供給地という観点の両方で追う価値がある。
同じハノイ近郊の水田転換は痩せた水田をハウスに替える値段を扱った記事で投資額と回収を整理した。外来品種のぶどうが実る動きは北部に限らず、韓国の雇い主から苗を譲り受けたタインホアや丘でシャインマスカットが実ったハティンと並べると、ベトナムが果実の輸入国から優良品種の栽培国へ静かに移る輪郭が見える。日本の高糖度ぶどうにとって、これは市場の広がりであると同時に品種の流出と競合産地の台頭という二面性を持つ。
追うべきは韓国系白ぶどうの品種と担い手
今の段階で生鮮の直接調達に動く相手ではない。見るべきは、栽培品種の素性(韓国由来の白系品種の系統)、糖度と外観の安定度、加工・冷凍への展開意欲だ。個人農家の資金繰りが規模化の壁になっている以上、企業や組合が資本を入れて面積をまとめる動きが出るかどうかが、産地として立ち上がる分水嶺になる。日本品種の無断栽培が絡む場合の知財リスクも早めに情報を取りたい。北部は日本市場までの距離が南部より近く、空輸や冷蔵輸送を組む際の物流面でも見どころがある。どの品種がどこで根づき、誰が資本を入れて面積をまとめるのかを追うことから始めたい。
参照元
Nong nghiep Moi truong「Thuần hóa nho ngoại trên đất lúa bạc màu」(2026年7月25日)