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アフリカ豚熱で全滅した村、クアンチで無抗生剤の蚊帳養豚が始動

アフリカ豚熱(ASF)で村の豚がほぼ全滅したクアンチ省ビントゥー村で、豚舎の周囲を網で覆う「蚊帳養豚」による無抗生剤オーガニック飼育が始まっている。地元農業誌 Nong nghiep Moi truong が2026年7月25日に伝えた報道によれば、農業資材大手 Quế Lâm グループの有機農業会社が生体重65,000VND/kgで5年間の全量買取を保証し、初期投資の半分を補助する。豚肉の川上を見る日本の調達担当にとっても、契約買取とトレーサビリティを軸にした産地づくりの実例として押さえておきたい。

目次

豚舎を網で覆い、媒介昆虫を物理的に遮断する

舞台はビントゥー村ティエンミー1地区。ASFで豚を失った農家が、再開にあたり省の農業普及センターと Quế Lâm の勧めで、抗生物質・薬剤を使わない有機養豚に切り替えた。豚舎の外周をネットで囲い、蚊・ハエ・ゴキブリといったウイルスを運ぶ虫を遮断する。内部は豚を個別に仕切り、微生物を効かせた発酵敷料(バイオベッド)と自動給水を備え、飼料は抗生物質を含まない有機飼料に統一する。ASFのワクチンは実用段階で普及しておらず、防疫の要は徹底した生物学的隔離になる。抗生物質を使わないことは防疫を緩める話ではなく、隔離と発酵敷料による衛生管理で置き換える設計であり、無投薬・低残留を求める輸出型の畜産と方向が一致する。

Quế Lâmが65,000ドン/kgで5年全量買取、初期投資は半額補助

2026年の支援計画では13戸の農家に、平均100kg級の種豚48頭を配置する。ゴー・スアン・リン氏は2025年12月に種豚3頭を導入して初回の繁殖に入り、グエン・ティ・ヒエ氏は5区画の豚舎を建てて出荷を待つ。

項目 数値 円換算(1円≈170VND)
買取価格(生体重) 65,000VND/kg 約382円/kg
買取保証期間 5年間
初期投資の補助 50%
2026年支援農家数 13戸
配置する種豚 48頭(平均100kg級)

いずれも Nong nghiep Moi truong の同記事に基づく。円換算は概算で、生体重ベースの価格のため、枝肉歩留まりを差し引いた精肉ベースの実質単価はこれより上がる。

5年固定価格が農家の再投資を可能にする

農家側の関心は、まず価格が5年固定で読めることにある。ASFで全頭を失う恐怖と相場の乱高下という二重のリスクを抱える養豚にとって、全量・長期・固定価格の契約は再投資の判断を可能にする。企業側の Quế Lâm は飼料・種豚・買取を垂直に握り、一貫した有機ブランドの供給網を確保する。省の普及センターは、ASF後の再建を旧来のやり方ではなく安全・無抗生剤の生産へ誘導する好機と位置づける。発酵敷料を使う方式は糞尿を堆肥化と結びつけて悪臭と汚水を抑えるため、豚舎の建て直しに近隣の理解が得られないという壁を抱えてきた農家にとって、環境負荷を抑える設計は再開そのものの条件になっている。

「契約買取+無抗生剤+昆虫隔離」が畜産の川上をどこまで管理型に近づけるか

日本が輸入する豚肉はカナダ・米国・EU・メキシコが主力で、ベトナム産の生鮮豚肉が食卓に並ぶ段階ではなく、ASF清浄性の壁もある。それでも、この事例が示す「契約買取+無抗生剤+昆虫隔離」のパッケージは、東南アジア産畜産物の川上がどこまで管理型に近づけるかを測る物差しになる。加工品・調味加工・ペットフード原料といった周辺領域では、無投薬・トレーサブルという属性が調達要件に食い込みつつある。

同じ Quế Lâm グループについては、以前工場5つに約79億円を投じたハティンの循環型農業団地として取り上げた。飼料・畜産・堆肥・作物を一つの環に組む同社のやり方が、クアンチの小規模養豚にも降りてきている。企業が価格と販路を保証し農家は全量を渡すオフテイク型は、退役軍人の2.5万羽の鶏を全量買取するゲアン省ASFで豚舎をカエルの養殖槽に変えたゲアン省と同じ「相場から契約へ」の潮流に連なる。

買取価格の継続と検査体制を定点で見る

この段階で日本の買い手が直接調達に入るのは時期尚早だが、観察の勘所ははっきりしている。5年契約の実際の履行状況、無抗生剤を裏づける投薬記録と第三者認証の有無、ASF清浄性の担保、加工・輸出への発展意欲。ベトナムの豚肉は国内消費が主で輸出はまだ小さいが、加工品や飼料原料の川上管理が整えば、周辺国や日本市場への接続は加工段階から静かに始まる。産地が「薬を使わない記録」を積み上げているかどうかが、その入口を開ける鍵になる。

参照元

Nong nghiep Moi truong「Mắc màn nuôi lợn hướng hữu cơ」(2026年7月25日)

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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