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パイナップル卸値が過去最高、DOVECOの契約栽培が暴落を克服

ベトナム北中部のパイナップル卸値が、2026年8月に1トン=1,900万ドン(約11.4万円、1万ドン≒60円換算)まで上がり、産地では過去最高の水準になった。ほんの数カ月前、4〜5月には1kg=5,000ドン(約30円)まで落ち込んでいた同じ作物である。値崩れと高騰を1シーズンで往復したにもかかわらず、加工大手DOVECO(ドンザオ食品輸出/Công ty CP Thực phẩm xuất khẩu Đồng Giao)と契約を結んでいた農家は、下落局面でも下限価格で買い取られ、上昇局面ではその恩恵も受けた。日本向けにパインを調達する立場から見ると、この「暴落を吸収する仕組み」こそが読みどころになる。

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4〜5月に1kg5,000ドンへ沈み、8月に19,000ドンへ——1シーズンの振れ幅

一次報道(Nông nghiệp & Môi trường、2026年8月10日)によれば、ニンビン省を中心とする産地の卸値は次のように動いた。1kg以上の大玉が18,000〜19,000ドン/kg、つまり1トンあたり1,800万〜1,900万ドンで取引され、これが記録的な高値だという。300〜800gの小玉でも13,000〜14,000ドン/kgがついた。一方で同じ産地の相場は、収穫が重なった4〜5月に5,000ドン/kgまで下げていた。

時期・規格 卸値(ドン) 円換算(1万ドン≒60円)
2026年4〜5月・出荷集中期 5,000ドン/kg 約30円/kg
2026年8月・大玉(1kg以上) 18,000〜19,000ドン/kg(=1,800万〜1,900万ドン/トン) 約108〜114円/kg
2026年8月・小玉(300〜800g) 13,000〜14,000ドン/kg 約78〜84円/kg

数字だけを並べると、わずか3〜4カ月で単価が3.8倍に振れた計算になる。生鮮農産物としては珍しくない値動きだが、農家の手取りに直せば1kgあたり80円以上の差だ。栽培品目としてのパイナップルの位置づけはベトナムの果物ガイドでも触れているとおり全土で作られる身近な作物で、それだけに供給が集中すると値崩れが起きやすい。

DOVECOの「下限価格保証+開花調整」が値崩れを埋める

報道が強調するのは、価格そのものより契約の構造だ。DOVECOは契約農家に対し、市場価格に連動させつつ下限価格(giá sàn、保険価格)を設定して買い取る。相場が5,000ドンまで沈んでも、契約者は下限で現金化できるため、出荷集中期の投げ売りを避けられる。さらに同社は、開花処理(エチレン処理)による出荷時期のコントロール技術を農家に指導している。収穫を人為的にずらせれば、産地全体が同じ週に一斉出荷して自ら値を崩す事態を減らせる。

この「価格保証で下を支え、技術で出荷を分散する」二段構えは、契約栽培を単なる買い取り約束から一歩進めたものだ。ベトナムでは食品加工企業が小規模農家と契約を結ぶ動きが広がっており、企業は品質と数量を、農家は販路と技術を得る。日本企業が学ぶベトナム農業の成功事例で整理した6次産業化や契約栽培の型と、今回の事例は同じ系譜にある。DOVECOは自社で3つの加工拠点を持ち、生果を通年で加工に回せるため、下限価格を提示できる裏付けを工場側の稼働で確保している点が肝になる。

ニンビンで1ヘクタール660万円——契約農家の手取り

産地の実感として、報道は農家グエン・ヴァン・ジャン氏の例を挙げる。同氏の畑は1ヘクタールあたり約60トンを収穫し、今シーズンの収入は1ヘクタールあたり11億ドン(約660万円)を超えたという。60トン×1,900万ドンで約11.4億ドンという計算とも整合する数字だ。もっとも、この水準は記録的高値に支えられた今季固有の結果で、平時のニンビン産パインの1ヘクタール収入は例年3億ドン前後とされてきた。高値の年に上振れした分を丸ごと恒常的な収益と読むのは危うい。

産地はニンビン省のほか、タインホア、ゲアン、ハティンの北中部各省に広がる。ドンザオのパインはニンビンの地理的表示(GI)として保護された特産で、産地ブランドと加工能力がそろっている地域だからこそ、下限価格を軸にした契約が回っている面がある。パインの出回り時期そのものは、ベトナム産フルーツの旬カレンダーで品目別に確認できる。

紙パックのパイン果汁が日本のコンビニ棚へ——調達側の含意

日本のバイヤーにとって、この産地の動きは缶詰・冷凍・果汁の調達に直結する。DOVECOはEU・中国・米国・日本を主要輸出先とし、報道ベースでは日本と韓国だけで輸出の約4分の1を占める。同社は2025年11月から日本向けに紙パック入りのストレートパイン果汁を出荷し始め、日本のコンビニ流通にも入ったと伝えられる。ベトナム全体でもパイン輸出は輸出額10億ドル規模を目標に掲げる段階に入り、2026年のフーデックス・ジャパンにも複数のベトナム農産企業が出展した。

調達の観点で見落とせないのは、産地の卸値が5,000ドンと19,000ドンの間で揺れても、契約ベースの取引なら仕入れ価格が同じ幅で乱高下するとは限らない、という点だ。下限価格と出荷分散が効いている産地では、加工原料の供給量と価格が読みやすくなる。缶詰や冷凍パインを安定的に引きたい日本側にとって、スポット市場の高値だけを追うより、こうした契約チェーンを持つ加工業者と組むほうが、数量と納期の予見性は高い。

価格の高さより「崩れにくさ」を見る

今回のニュースは「過去最高値」という見出しで流れているが、実務的に意味があるのは高値そのものではない。4〜5月に5,000ドンまで沈んだ相場が、契約農家の手取りを直撃しなかったという事実のほうだ。下限価格で下を支え、開花調整で出荷を散らし、自社工場で通年消化する——この三つが噛み合って初めて、暴落と高騰の両方をならすことができる。日本向けにパインを仕入れる担当者が見るべきは、その年の卸値が何ドンかではなく、取引先の産地がこの崩れにくさをどこまで備えているかだろう。


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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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