ベトナム北部タイグエン省が、地元の主産物である茶を豚の飼料に混ぜて育てる「緑茶ポーク(thịt lợn trà xanh)」の商標化に踏み出した。2026年8月10日付の農業環境紙が、同省の畜産をハイテク化と循環型モデルで底上げする動きを伝えている。茶葉を機能性の飼料原料に変えて食肉を差別化するこの試みは、原料供給に強くブランドと加工に弱いベトナム畜産の弱点をどう突破するかという問いに、一つの具体解を示している。日本の食肉バイヤーや加工・OEM側にとっても、副産物を高付加価値品に変える設計として読みどころが多い。
飼料に緑茶粉末を1〜5%、タイグエン農林大が豚72頭で検証した配合
核になっているのは、タイグエン農林大学(Trường Đại học Nông Lâm Thái Nguyên)が進めた飼育試験だ。研究チームは豚の日常飼料に緑茶葉の粉末(bột lá chè xanh)を混ぜ、添加量を0%・1%・3%・5%の4段階に分けて肉質と成長を比較した。供試したのは在来の黒豚と商用肉豚の2系統で、1区あたり9頭、合計72頭という規模で計測している。プロジェクトの責任者はグエン・ティエン・ダット博士(Nguyễn Tiến Đạt)。
緑茶にはポリフェノールやカテキン、タンニンといった抗酸化・抗菌性の成分が含まれる。試験では、緑茶を加えた区で豚の免疫力が高まり、消化器系のトラブルが減ったと報告された。肉そのものにも変化が出て、脂肪の割合が下がり、肉の赤みと保水性が増したという。つまり「茶で育てると豚が健康になり、赤身寄りで水分を保った肉になる」という筋道が、配合量の違いを取った実測で裏づけられた形だ。飼育現場の匂いが抑えられ、抗生物質への依存を減らせる点も、この飼料設計の副次的な効き目として挙がっている。
生体重で約2割高、ブランド「Thịt lợn trà xanh」の商標登録と広がる飼育現場
味と機能性の差は、値段にも表れている。2026年にタイグエン省農業普及環境センター(Trung tâm Khuyến nông và Môi trường tỉnh Thái Nguyên)がタンクオン地区(xã Tân Cương)で展開した普及モデルでは、緑茶飼育の豚の生体重価格が通常の豚よりおよそ20%高いと報告された。研究段階では、精肉の一部が通常の2〜3倍で売れたとする強気の数字も伝えられているが、実際の取引で確かめられている現場の相場は「2割高」の水準にある。
このモデルはトアンリウ協同組合(HTX Toàn Liễu)を軸に、3戸で50頭を飼育し、組合内外の20戸に技術を移転する形で回した。省全体では、報道ベースで19の施設が緑茶飼育に登録し、飼育頭数は1,640頭を超えたとされる。2025年12月には省科学技術局と農林大が、知的財産庁による商標「Thịt lợn trà xanh – Tinh hoa Thái Nguyên(緑茶ポーク・タイグエンの精髄)」の認定を発表した。単なる飼い方の工夫にとどめず、産地名と結びつけた登録商標として囲い込む——ここに、原料勝負から抜け出そうとする意図が見える。
農場1,600超・大規模103のタイグエン畜産と、アフリカ豚熱という壁
緑茶ポークは、省の畜産全体を近代化する流れの中の一手でもある。省畜産・獣医・水産支局によれば、タイグエン省には1,600を超える畜産農場と10万戸超の小規模飼育世帯があり、そのうち大規模農場は103にとどまる。大手の農場では生産管理ソフトで飼養群を管理し、センサーで畜舎の環境を監視し、閉鎖型・自動化の畜舎で飼うところまで来ている。一方で、支局長のディン・ティ・ホン・チエム氏(Đinh Thị Hồng Chiêm)は、ハイテク飼育の割合はまだ低く、小規模分散が主流であることが技術投資の壁になっていると認める。
投資額が大きく回収に時間がかかること、信用や資金へのアクセスが難しいこと、そしてアフリカ豚熱や鳥インフルエンザの発生リスクが続くことが、前進を鈍らせている。省は今後、小規模飼育を減らして大規模農場を伸ばし、疾病安全区域とバイオセーフティ施設を整えたうえで、緑循環型・デジタル化の畜産へ舵を切る方針を掲げる。緑茶ポークのようなブランド品目を、この構造転換の出口に据えようとしている。
茶産地の副産物を機能性食肉へ——日本の調達・加工が読むべき点
タイグエンはベトナム茶の最高峰産地で、茶園面積は約2.2万haに及ぶ。名産のタンクオン茶を筆頭に茶葉が潤沢にあるからこそ、それを飼料原料に回すという発想が成り立つ。地域に余る一次原料を、そのまま輸出するのではなく別の高付加価値品に組み替える——この動きは、加工と規格化の弱さをどう埋めるかというベトナム農業の構造課題への、地に足のついた回答になっている。
日本の食肉調達やOEMの視点で見ると、注目点は三つに絞れる。第一に、0〜5%という配合量が数値で管理され、脂肪率や保水性といった指標で肉質を語れる設計になっていること。ストーリーだけでなく計測でブランドを支える姿勢は、輸入時の品質説明やトレーサビリティと相性がよい。第二に、生体重で2割という現実的な上乗せ幅。誇大な倍率ではなく、支払い可能な範囲のプレミアムで回そうとしている点は、取引の持続性という意味で堅い。第三に、協同組合を核に技術移転しながら商標で囲うという、小規模分散を逆手に取った組み立て方だ。ベトナム農業のブランド化事例と並べて見ると、コーヒーの焙煎・自社ブランド化と同じ「原料から加工・物語へ」の型を、畜産で再現しようとしていることが分かる。
茶どころが挑む差別化畜産の現在地
緑茶ポークはまだ、72頭の試験と数十戸規模の普及モデルという段階にある。倍率を強調する研究段階の数字と、生体重2割高という現場の実感には開きがあり、輸出に耐える供給量や規格の安定はこれからの課題だ。それでも、茶という地域固有の原料を飼料に組み替え、機能性と赤身寄りの肉質を実測で示し、産地名の商標で守るところまで一貫して設計されている点で、この取り組みは単なる話題づくりを超えている。タイグエンが茶で豚を育てるという選択は、原料国から加工・ブランド国へ移ろうとするベトナム畜産の縮図として、日本側の調達担当も追う価値がある。
参照元
- Thái Nguyên đánh thức tiềm năng chăn nuôi bằng công nghệ cao(Nông nghiệp & Môi trường、2026-08-10)
- Thịt lợn trà xanh – Tinh hoa Thái Nguyên(Nông nghiệp & Môi trường、2026-07-31)
- Khai thác chuỗi giá trị nuôi lợn lấy thịt từ thức ăn tự nhiên có bổ sung nguyên liệu chè xanh Thái Nguyên(Tạp chí Công Thương)
- Công bố nhãn hiệu ‘Thịt lợn trà xanh – Tinh hoa Thái Nguyên’(Báo Thái Nguyên、2025-12)