ベトナム中部クアンガイ省の特産品54品が、2026年7月10日から12日にかけて大手スーパー「Co.opmart(コープマート)クアンガイ店」の店頭に並んだ。省の農業環境局が主導し、地域のOCOP(一村一品)認定品を無償で用意した10区画のブースに集め、来店客に直接見せて売る催しである。地方の小規模生産者を全国チェーンの棚につなぐこの動きは、ベトナム産の乾物や加工品を探す日本の調達担当にとって、産地の実力を「星の数」で見極める入口が中部でも広がったことを意味する。同じ構図は、ニンビン省が60ブースのOCOP展示で示した産地選定の物差しとしても北部で先行していた。
クアンガイ店に集まった54品、燕の巣から冬虫夏草まで
会場となったのはコープマート クアンガイ店(242 Nguyen Nghiem通り、Cam Thanh地区)。並んだ54品は食品、薬用植物、加工品、飲料の各グループにわたり、多くが3つ星から5つ星のOCOP認定を受けた製品だった。
具体的な顔ぶれには、省を代表するリソン産ニンニクをはじめ、燕の巣、きのこ、蜂蜜、サトウキビ蜜、ウコンでんぷん、ドライバナナ、ハーブ茶、冬虫夏草が挙がる。乾物や粉体、茶、蜜といった常温流通に向く品目が中心で、輸入を前提に考えたときの扱いやすさがそのまま並んだ格好だ。
10区画のブースは省側が費用を負担して用意した。棚代や出店費が重い小規模の生産者ほど、こうした無償枠がなければ全国チェーンの売り場に立てない。誰を棚に上げるかという判断を、省が地元産地の底上げのために肩代わりした点に、この催しの狙いが表れている。
なぜ今か、大手小売の「地場直接調達」と重なった
背景には二つの流れがある。ひとつはOCOPという制度そのものの成熟だ。OCOPは首相直轄で始まった農村経済の振興策で、製品を1つ星から5つ星まで格付けする。3つ星以上の認定品は全国で積み上がり、現代的な小売網や輸出の扉を開く「合格証」として機能し始めた。
もうひとつは、コープマートを運営するサイゴン・コープ側の調達方針である。同社は全国に800を超える売り場を持ち、1日に100万人超が来店する国内最大級の小売連合で、各地の農協や産地から地場農産物・OCOP品を直接仕入れる動きを強めている。産地イベントで棚に載せて反応を見て、売れ筋を本採用の商談につなげる流れは、同じサイゴン・コープがドンタップ果物週間で全国800店規模の直接調達に踏み込んだ動きと同じ設計図の上にある。地方の産地展示は、単発のPRではなく本採用の入口として運用され始めた。
数字で見るOCOPの星、輸出可否の分水嶺
日本側から見て最も実務的なのは、星の数が品質と輸出適格性の目安になる点だ。格付けの基準を整理する。
| 格付け | 評価点(100点満点) | 意味合い |
|---|---|---|
| 5つ星 | 90〜100点 | 国家認定。輸出基準を満たす最上位 |
| 4つ星 | 70〜89点 | 品質・市場性を満たし、5つ星への昇格候補 |
| 3つ星 | 50〜69点 | 地域を代表する認定品。小売網の入口 |
今回の54品はこの3〜5つ星に収まる。県内で唯一の5つ星を持つリソン産ニンニクは分かりやすい実例だ。生産者のフーシン社は約85戸・40haと連携し、うち32haがVietGAP、8haがHACCP基準を満たす。年200トン超を扱い、日本と韓国のパートナーと市場拡大の交渉を進めている。5つ星は日本・EU向け輸出の条件を満たす水準として、すでに商談の材料になっている。
産地と行政が語った狙い
今回の催しをめぐる当事者の言い分を並べると、展示が売り場開拓の一手であることがはっきりする。
- 省農業環境局——現代的な小売チェーンへの導入を通じて「需給の接続・販路拡大・競争力向上」を進める戦略と位置づけ
- 参加生産者——消費者と直接向き合い、市場ニーズをつかんで品質改善と持続的な生産につなげる場と捉える
- リソン産ニンニクの事例——5つ星認定を「世界へのパスポート」と呼び、加工・流通の約10社と連携して販路を広げてきた
売る側と作る側の双方が、店頭を最終消費地としてだけでなく、次の取引を測る試験台として見ている。地方の展示会が商流の起点に組み込まれつつある。
日本の調達担当が読み取るべき3点
クアンガイの54品という一件は小さく見えるが、ベトナム産特産を仕入れる立場には具体的な示唆がある。
第一に、星の数を一次スクリーニングに使えることだ。5つ星は国家が輸出基準相当と認めた印で、リソン産ニンニクのようにVietGAPやHACCPの取得実態を伴う。産地の生の情報が乏しい段階でも、星の等級は品質と書類対応力のあたりをつける物差しになる。同じ発想は、ハイフォンの魚醤2品が最高位認定を調達の入口に変えた事例でも実証されている。
第二に、大手小売の棚に載ったこと自体が加工・包装・ロットの実証になる点だ。800店規模のチェーンに並ぶには、常温での日持ち、統一された表示、安定した供給ロットが前提になる。ドライバナナやウコンでんぷん、ハーブ茶といった品目は輸入との相性がよく、コープマートの棚を通った実績は、輸入側が一から検証する手間を減らす材料になる。
第三に、産地イベントは輸出チャネルを持たない生産者を早い段階で見つける場になる。無償ブースに出てくる小規模事業者は、まだ商社や輸出業者とつながっていない層を含む。展示会や省の窓口を早期の接点にすれば、競合が動く前に一次生産者と直接話せる。まずは省のOCOP情報サイトで認定品と生産者名を確認し、星の等級と加工形態で候補を絞るところから始められる。
催しの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | クアンガイ省OCOP製品展示・導入イベント |
| 会期 | 2026年7月10日〜12日 |
| 会場 | コープマート クアンガイ店(242 Nguyen Nghiem通り、Cam Thanh地区) |
| 出展品 | OCOP認定54品(3〜5つ星) |
| ブース | 省が無償で用意した10区画 |
| 主な品目 | リソン産ニンニク、燕の巣、きのこ、蜂蜜、サトウキビ蜜、ウコンでんぷん、ドライバナナ、ハーブ茶、冬虫夏草 |
まとめ——星と棚を手がかりに動く
クアンガイ省が54品を全国チェーンの店頭に押し出したのは、地方産地を消費地につなぐ地道な一歩だ。日本の調達担当にとって重要なのは、この動きが「星の数」と「大手の棚」という二つの手がかりを同時に差し出している点にある。星は品質と輸出適格性の目安になり、棚は加工・包装・供給の実証になる。次に確かめるべきは、5つ星のリソン産ニンニクが日本・韓国との交渉をどこまで進めるか、そして無償ブースに並んだ乾物・加工品のうちどれがコープマートの本採用に残るかだ。省のOCOP情報や小売各社の産地イベントを定点で追えば、輸出チャネルが整う前の生産者と接触できる余地が見えてくる。