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米関税301条12.5%、ベトナムエビが日本に活路を探す理由

米国が7月24日、ベトナム産の水産物に追加12.5%の関税をかけ始めた。通商法301条にもとづく措置で、対象はエビやティラピアを含む。ベトナムのエビ業界は同じ時期にエクアドルやインドとの価格競争にさらされており、この2.5ポイントの差が輸出の流れを変えかねない。日本の食品バイヤーや輸入業者にとっても、対米向けが詰まった分の玉がどこに回るかは調達判断に直結する。ベトナム水産加工輸出協会(VASEP)が8月5日に公表した分析を軸に、何が起きているのかを整理する。

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米国は7月24日から越産エビに追加12.5%、エクアドル勢との2.5ポイント差が痛い

米通商代表部(USTR)は7月23日付の大統領覚書を受け、7月24日午前0時1分(米東部時間)から通商法301条にもとづく追加関税を発動した。対象はおよそ60の国・地域で、強制労働品の輸入規制が不十分だという米側の評価が根拠になっている。ベトナム産水産物への上乗せ率は12.5%だ。

問題は税率そのものより、競合との相対差にある。ホワイトレッグ(バナメイ)エビの主要供給国であるエクアドル、インド、インドネシアは10%にとどまる。ベトナムだけが2.5ポイント高い関税を負う構図で、価格勝負になりやすい冷凍・標準グレードのエビやツナ缶で不利になる。一方でタイ、中国、ノルウェー、チリ、ペルーはベトナムと同じ12.5%が課されており、越産エビが全面的に押し込まれるわけではない。差がつくのは、あくまで低コストのバナメイ生産国が相手のときだ。

この12.5%は既存の反ダンピング税に上乗せされる点も見落とせない。ベトナム産冷凍エビには従来から反ダンピング税が課されており、対象企業によって税率は数%台から20%台まで開く。個別企業の負担がそこに301条分を積み増すため、対米採算の悪化は税率の単純合算以上に効いてくる。

上期の対米エビ8億9,790万ドルはほぼ横ばい、6月の駆け込み48%増が転機だった

VASEPの集計では、2026年上半期(1〜6月)のエビ輸出は総額23億ドル(1米ドル≒150円換算で約3,450億円)で、前年同期比13.6%増。水産物輸出全体の40.5%を占める最大品目だ。全体としては伸びているが、対米だけは様子が違う。

上期の対米エビ輸出は8億9,790万ドル(約1,347億円)で、前年同期からほぼ横ばいだった。注目すべきは6月単月で、前年同月比48.3%増の1億9,530万ドル(約293億円)まで跳ね上がっている。7月24日の関税発動を前に、米側バイヤーが在庫を積み増す駆け込み輸入が起きた見立てが自然だ。裏を返せば、この前倒し需要が一巡した8月以降は反動減が出やすい。

指標(2026年上半期) 金額・伸び 円換算(1ドル≒150円)
エビ輸出総額 23億ドル(前年比+13.6%) 約3,450億円
対米エビ輸出 8億9,790万ドル(ほぼ横ばい) 約1,347億円
うち6月単月 1億9,530万ドル(前年同月比+48.3%) 約293億円
エビが水産輸出に占める比率 40.5%

米国側の7カ月累計で見ても、水産物全体の対米輸出は10億5,000万ドル超で前年比わずか0.3%増と、勢いを欠く。7月単月は1億5,900万ドル(約239億円)と持ち直したが、これも駆け込みの延長線上と読める。関税の実質的な重みは、契約の巻き直しが本格化する下期に現れる。

付加価値・加工へ逃げるしかない越エビ、素材のバナメイでは価格で勝てない

VASEPが越エビの活路として挙げるのは、加工度の高い調理済み・簡便食品や差別化された商品群だ。理由ははっきりしている。皮むきや調理を施した加工エビは、米国内の労働コストや加工設備を代替する価値を持つため、2.5ポイントの関税差を吸収しやすい。逆に、殻付き冷凍のような素材に近い商品ほど、産地間の価格差がそのまま効いて、エクアドルやインドに流れる。

VASEP副事務局長のレ・ハン氏は、中長期のベトナム水産の競争力は「輸入関税だけで決まるのではなく、深加工の能力にますます依存する」と述べ、労働・環境・トレーサビリティの基準対応もあわせて課題に挙げている。今回の301条が強制労働を根拠にしている以上、加工力の強化とコンプライアンス整備は同じ方向を向いた投資になる。ベトナムでは強制労働禁止を定めた政令292/2026号が9月5日に施行される予定で、制度面でも足並みをそろえる動きが進む。統合バリューチェーンやコールドチェーンで単価を上げてきたベトナム農業の成功事例と同じ発想が、エビでも問われている。

日本市場は「単価は高いが伸びない」——円安と消費停滞が受け皿を狭める

対米が詰まったとき、真っ先に候補に挙がる振り向け先が日本だ。日本はベトナム産エビにとって3番目に大きい単一市場で、エビ輸出額の13%を占める。加工度が高く単価の取れる市場として、ベトナムの加工エビとは相性がよい。ただし数字は勢いを欠く。2026年第1四半期の対日エビ輸出は1億1,740万ドル(約176億円)で、前年同期比1.7%増にとどまった。

背景には円安と消費停滞がある。水産物全体で見ても、上半期の対日輸出は7億8,750万ドルで前年比0.7%増と横ばい圏だ。7月単月は1億4,400万ドル(約216億円)で前年同月比3.8%増、7カ月累計でも2.6%増と、緩やかな回復の兆しはある。とはいえ円建ての仕入れ余力が細っている日本側にとって、越産エビの単価上昇をそのまま飲み込めるかは別問題だ。対米で行き場を失った玉が日本に回れば、短期的には日本側の価格交渉力が増す局面もありうる。

日本の調達担当が読むべきは、FOB再交渉と供給再編の同時進行

VASEPは、米側の新規契約で輸入業者がFOB価格の引き下げや関税負担の分担、契約期間の短縮を求めてくると見ている。ベトナム側の輸出企業はこの圧力を受け、対米一辺倒から中国・EU・ASEAN、そして日本への分散を急ぐ。素材グレードは価格差の小さい市場へ、加工グレードは日本や米国の付加価値枠へ——という仕分けが進む可能性が高い。

日本の輸入業者やバイヤーにとって示唆は二つある。第一に、対米向けが減れば加工エビの供給に一時的な余裕が生まれ、条件交渉の余地が広がる。第二に、その供給がいつまで続くかは読みにくい。ベトナム側が加工比率を上げて単価を取りに来れば、安値の局面は長続きしない。調達計画は「今の安さ」ではなく、ベトナム産地がどの市場にどのグレードを振り向けるかという構造で組み立てるほうが安全だ。産地の生産基盤を押さえるうえでは、養殖の中心地であるメコンデルタ農業地帯の特徴や、コーヒー・米と並ぶベトナムのエビ生産戦略を確認しておくと、供給の動きを先読みしやすい。

政令292号が動く9月まで、対日調達は条件が揺れ続ける

301条による12.5%は、税率の高さそのものより、エクアドル・インドとの2.5ポイント差と既存の反ダンピング税への上乗せという二段構えで越エビの対米採算を削る。上期の対米8億9,790万ドルが横ばいで、6月に48.3%の駆け込みが出た事実は、下期の反動と契約巻き直しを予告している。ベトナムの答えは加工・差別化と市場分散で、そのしわ寄せと機会が同時に日本に届く。9月5日施行の政令292/2026号でコンプライアンス面が動くことも含め、対日の調達現場は数カ月単位で条件が動く前提で構える必要がある。

参照元

  • VASEP「Thuế mục 301 và bài toán thích ứng của tôm Việt tại thị trường Mỹ」(2026年8月5日)vasep.com.vn
  • Vietnam News「Tariff shock from the US increases risks for Việt Nam’s shrimp exports」vietnamnews.vn
  • VnEconomy「US imposes 12.5% additional tariff on many export items from Vietnam」en.vneconomy.vn
  • Vietnam Investment Review「Vietnam’s seafood exports grow in first seven months」vir.com.vn
  • Vietnam.vn「The US Section 301 tariffs are forcing seafood businesses to reposition their export strategies」vietnam.vn
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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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