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クアンガイ省で35歳青年が養蚕復活——12世帯のグループで年100万円超、伝統産地が動き出す

ベトナム中部クアンガイ省ギアザン社ブオン村で、35歳のトン・ロン・クイ(Tang Long Quy)氏が、地域でほぼ途絶えていた養蚕業を共同体ベースで復活させています。クイ氏は12世帯(うち5世帯は若手主導)の養蚕グループをまとめ、桑栽培と蚕飼育を一貫運営。1サイクル約15日・年最大10サイクルというハイペースで稼働し、1サイクルあたり1〜2箱の蚕種から純利益約1,000万ベトナムドン(約380米ドル、日本円で約5万8,000円)を確保しています。年間にすると1億ベトナムドン(約3,800米ドル、約58万円)規模の収益で、地域では実用的な所得源として注目を集め始めました。

目次

1. 起点ニュース:消えかけた伝統産業を若手が再起動

2026年5月、Asia News Network(旧Vietnam News配信)はクアンガイ省で若い世代が一度途絶えた伝統産業の再生に乗り出している事例を報じました。その筆頭格として紹介されたのがクイ氏です。同氏は「子どもを含む来訪者に桑の葉に触れ、蚕に餌を与え、繭を紡ぐ瞬間を見てほしい。経済だけでなく、遺産価値を伝える教育でもあります」と語っており、単なる物販ではなく体験型農業として伝統を再構築しようとする姿勢が明確に表れています。

クイ氏の家族は2002年にも養蚕への参入を試みましたが、資金不足と技術知識の欠如で頓挫しました。約20年を経て、地元青年同盟の起業家支援プログラムや市場連結・オンライン販売研修が下支えする形で、リトライが軌道に乗っています。

2. 背景:ブオン村の養蚕史と空白の20年

クアンガイ省ブオン村は歴史的に養蚕の集積地でしたが、合成繊維の普及や原料相場の不安定化、若年層の都市流出によって生産が途絶えていました。クイ氏が再興の鍵に据えたのは、桑園の整備と「床飼育」への切り替えです。従来の竹製多段ラックは設備コストが安い一方で、給餌・清掃・繭回収すべてが手作業中心となり、人手が極端にかかる構造でした。

クイ氏は床面に木製トレイを敷く方式へ転換し、労働投入を約50%削減。同時に繭サイズの均一性が上がり、輸出規格を満たす品質が安定して出るようになっています。設備投資の節約と品質向上を同時に取りに行く、ベトナム中部らしい現実主義のアプローチです。

3. 数字で見る再起動した養蚕

項目 数値 備考
1サイクル日数 約15日 幼虫期間中心
年間サイクル 最大10回 桑葉供給と気候に依存
1サイクル投入 蚕種1〜2箱
1サイクル純利益 約1,000万VND 約380米ドル/約5万8,000円
年間想定所得 約1億VND 約3,800米ドル/約58万円
労働力削減 約50% 床飼育転換による
参加世帯 12世帯 うち5世帯は若手主導
支援機関 省青年同盟 起業・販路・EC研修

1サイクル15日で1万円相当を超える粗利が確保できる作目はベトナム中部では多くなく、桑園が回転すれば現金化サイクルも早いというメリットがあります。一方で年10サイクル稼働は気候・桑葉供給・蚕種品質が揃ってこその上限値で、安定運用には飼育場の温湿度管理、桑の連作障害対策、蚕種供給先の確保が課題として残ります。

4. 関係者の声

クイ氏自身は「経済だけではない。文化遺産の価値を次世代に教えることが、自分にとっての養蚕です」と地域メディアに語っています。観光客や地元の子どもを受け入れる体験プログラムも視野に入れており、ブオン村の「学べる養蚕集落」化を狙っている様子です。

クアンガイ省青年同盟は同事業を支援対象に位置付け、起業家研修、マーケットリンケージ、オンライン販売スキルの研修を提供しています。担当者によれば、若手主導の協同体モデルは省内で他産業にも展開できる雛形になり得るとの認識です。

地元のベテラン農家からは、20年前に挫折した経験を踏まえ「今回は技術と販路を同時に押さえている点が違う」との評価が出ています。クアンガイは唐辛子価格暴落のニュースも記憶に新しく、特定品目の単作リスクから逃れる多角化の動きとして、養蚕復活は受け止められています。

5. 日本のアグリ業界・OEMバイヤーへの影響

日本の食品OEM・農業観光関係者から見ると、本件は「桑の実」「シルクパウダー」「シルク化粧品原料」「養蚕体験ツーリズム」の素地が中部ベトナムに残っていることを示す事例です。日本国内で養蚕地が縮小して久しく、桑由来素材の安定供給は東南アジアに依存する構図が強まっています。クアンガイで床飼育による品質均一化が進めば、輸出規格の繭・桑製品をロットで仕入れるルートとしての検討余地が出てきます。

体験型コンテンツの観点では、京都など日本の地方拠点と組み合わせた「養蚕×食×観光」の越境企画も理屈上は可能です。Agritureが運営する乾燥野菜D2C「OYAOYA」やノベルティ事業「ノベルティの窓口」と組み合わせるなら、シルク繊維・桑の実加工品をギフトに転用するアイデアも見えてきます。

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6. 業界波及:伝統産業 × 若手起業 × 体験経済

クアンガイのケースが象徴的なのは、地方の伝統産業が「単に古いからやる」ではなく、(1)床飼育という技術改善、(2)若手主導の共同体運営、(3)EC・体験コンテンツへの展開、という3点で再設計されている点です。同省でも青年同盟が他の伝統工芸(線香、織物、漁村食品など)に同モデルを適用しようとしており、伝統産業の「事業会社化」が進む兆しがあります。

ベトナム全体では、養蚕は中部高原のラムドン省(特にBao Loc周辺)が大手産地として知られていますが、中部沿岸のクアンガイで現実的なコスト構造のモデルが立ち上がれば、産地分散と気候リスク分散の意味でも国内供給網の安定化に寄与します。

7. プロジェクト概要

項目 内容
主導者 トン・ロン・クイ(Tang Long Quy)35歳
所在地 クアンガイ省ギアザン社ブオン村
事業形態 桑栽培+蚕飼育の協同グループ
参加規模 12世帯(うち若手主導5世帯)
主な技術改善 床面木製トレイ飼育(50%省力化)
主要販路 輸出規格繭、地域販路、EC(拡張中)
支援機関 クアンガイ省青年同盟
歴史的背景 2002年家族での参入失敗→2020年代に再挑戦

8. まとめ

クアンガイ省ブオン村の養蚕復活は、若手起業家が伝統産業を「技術改善+協同体+体験経済」で再構築する好例です。年1億ベトナムドン規模の収益はベトナム農村として実用的な水準で、唐辛子価格暴落で打撃を受けた同省にとって、所得源の多角化に資する動きでもあります。日本の食品OEM・農業観光関係者にとっては、桑由来素材の調達先候補としても、地域連携型コンテンツの素材としても、注視に値する事例です。

情報源

  • Asia News Network(Vietnam News配信)「Young people revive fading traditional trades in Vietnam’s Quang Ngai」
  • Vietnam News(VnExpress International関連)地域経済欄
  • クアンガイ省青年同盟 起業支援プログラム公開資料
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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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