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越パンガシウス、対日輸出が量から質へ 加工品11%が示す供給余地

ベトナム産パンガシウス(ナマズの一種、現地名カー・トラ)の対日輸出が、冷凍フィレの数量勝負から、味付けや加熱まで済ませた付加価値品へと軸足を移し始めた。9月3日にベトナムの経済メディアが報じた業界分析によると、日本向けの輸出は冷凍フィレが約8割を占める一方、味付け・調理済みなどHS16分類の加工品が全体の1割強まで伸び、量から質への転換が数字に表れている。

日本の農産物・水産物バイヤーにとって、これは単価と安定調達の両面で検討材料になる。フィレを輸入して国内で加工する従来型に加え、産地側で総菜や外食向けの半製品まで仕上げてから運ぶ調達ルートが現実味を帯びてきた。高齢化と即食ニーズが広がる日本の食卓に、扱いやすい白身魚の供給余地がある。

目次

冷凍フィレ82%に対し、味付け・調理済みが11%まで伸びた

ベトナム水産物輸出加工協会(VASEP)の区分では、対日輸出は冷凍フィレが約82%、その他の魚肉(HS03)が約7%、味付け・加熱調理済みのHS16が約11%を占める。世界全体ではHS16の加工品が輸出総額の2.4%前後にとどまるのに対し、日本向けは加工品の比率が一段高い。2025年の対日輸出額は4,000万ドルを超え、2011年の256万ドルから水準が大きく上がった。日本は世界でも食品安全の要求が厳しい市場に数えられるが、その分だけ加工度の高い品目が入り込む素地ができている。

日本の水産市場でパンガシウスが定着した5年

冷凍フィレの日本への輸入量は5年で約10倍に増えた。淡白な白身で骨が少なく、価格と供給量が安定しているため、量販店が2010年前後から白身魚フライや総菜の原料に採用を広げた経緯がある。原料コストと供給の安定を重視する総菜・外食の現場にとって、規格をそろえやすいパンガシウスは白身魚の置き換え先として検討しやすい。

この定着があるからこそ、次の一手として味付け・調理済みへの移行が語られている。フィレの数量拡大が一巡した産地側は、単価の高い加工品で採算を取り直そうとしている。ハティン省の対日ティラピア養殖のように、産地を先に押さえて日本向けの一貫チェーンを組む動きも同じ流れの上にある。

HS区分で見る対日輸出、フィレ偏重から加工へ

VASEPは2026年のパンガシウス世界輸出を23億ドル前後と見込む。世界の白身魚供給が細り、複数市場で需要が持ち直しているためだ。ただし加工品の比率は市場ごとに差が大きい。世界全体のHS16加工品は2025年11月時点で輸出額4,800万ドル・前年比13%増と伸びてはいるが、総額の2.4%前後にすぎない。対日輸出の約11%という水準は、この世界平均を大きく上回る。日本市場が加工品の受け皿として先行していることを示す数字である。

加工品の平均輸入単価は1kgあたり5.73〜11.3ドルとフィレより高い。単価の高さは、産地側にとって数量に頼らず輸出額を積み上げる余地を意味する。

くら寿司が2025年末にメニュー採用、回転寿司550店超へ

2025年末、全国550店を超えるくら寿司がベトナム産パンガシウスをメニューに採用した。回転寿司という日本を代表する外食チェーンでの採用は、家庭用フライ原料の枠を越えた使われ方が広がる兆しになる。対日輸出は2011年に256万ドル・世界の0.14%にすぎなかったが、2011年から2019年にかけて12倍に拡大した。産地の企業はカバ焼き風、フィッシュ唐揚げ、すり身・かまぼこ、弁当・居酒屋向けの食材セットなど、日本の食習慣に接続しやすい品目を開発している。

日本のバイヤーが確かめるべき供給の条件

付加価値品の調達で効いてくるのは、養殖から輸送までのトレーサビリティ、加工技術への投資、品質管理の体制、そして日本の食品安全基準への適合である。加工品はフィレより単価が高いが、国内加工にかかる人件費と歩留まりを織り込むと、産地仕上げの半製品が総コストで見合う場面が出てくる。産地の顔ぶれと加工設備を早い段階で確かめておく価値がある。産地視察付きの商談に踏み込むVietFish 2026のような場は、加工ラインと衛生管理を自分の目で見る機会になる。

米国関税の逆風が白身魚を日本とCPTPPへ振り向ける

供給の流れを動かしているのは需要側だけではない。米国の反ダンピング税をめぐる決着で、越パンガシウスの一部は米国以外へ販路を探している。米国の関税確定でCPTPP圏と日本に流れる白身魚という構図は、日本のバイヤーにとって選択肢と交渉余地が広がる局面を意味する。数量を確保しやすい時期に、単価の高い加工品まで含めて取引条件を詰める余地がある。

介護食・総菜・外食で使うパンガシウスの実務

淡白で骨が少なく、加熱後も身が崩れにくいため、高齢者向けの食事や病院給食、日々の総菜に向く。味付け済みのHS16品目なら解凍と加熱だけで提供でき、人手が足りない厨房でも回しやすい。カバ焼き風や唐揚げ、すり身は、日本の食卓にすでにある料理へそのまま乗せられる。フィレを仕入れて自社で味付けするか、産地仕上げの加工品を入れるかは、加工人員と設備の余力しだいで選び分けることになる。

量の競争から品質の競争へ、対日供給の余地

冷凍フィレの数量拡大は一巡し、次の伸びしろは加工度の高い品目に移った。産地側の加工投資とトレーサビリティが整えば、即食と高齢化が進む日本の需要に応える供給は続く。バイヤーの側も、単価だけでなく加工段階・安全基準・産地の一貫性で相手を見極める段階に入っている。冷凍フィレ一辺倒だった対日輸出は、味付け・調理済みという次の層を積み上げ始めた。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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