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ラムドン省の胡椒産地、高値でも化学多投に戻らず土と根の栽培へ転換

胡椒相場が高い局面では、産地は増収を狙って肥料と農薬を増やしがちだ。ところがベトナム最大の胡椒産地ラムドン省では逆の動きが出ている。2026年7月26日付でNong nghiep Moi truong(農業環境紙)が伝えたのは、「胡椒を健康にしたいなら、まず土を健康に保て」という発想で、化学多投の旧慣行に戻さず生物・持続型の栽培へ切り替える生産者の姿だった。日本の調達・輸入バイヤーにとっては、残留農薬基準(MRL)の厳しい日本向けに、産地選定と仕様交渉の材料が一つ増えたという話になる。

目次

相場が上向いても化学肥料を増やさず、根の障害対策に切り替えた

記事の主役は、ラムドン省クアン・ソン村ボン・ンティン地区で胡椒を育てるグエン・クオック・クイエン氏。相場が上向いても以前のように化学肥料を大量に入れる栽培には戻さず、土壌の有機物を増やし、微生物資材と総合的病害虫管理(IPM)、排水の見直しを組み合わせる方向に転じている。狙いは、線虫やフィトフスラ(疫病)による根の障害を抑えること。根が傷めば施肥をいくら足しても効かない、という現場の実感が転換の起点にある。

37,191haで年産85,000トン超、行政区再編で国内胡椒の中心地に

ラムドン省はいま、全省で37,191.2ヘクタールの胡椒を抱え、うち33,400ヘクタール以上が収穫期に入り、年産は85,000トンを超える。この規模感は、2025年の行政区再編で旧ダクノン省など胡椒の主力地帯が現ラムドン省に組み込まれた経緯と無関係ではない。中部高原の胡椒がひとつの省に集約された結果、ラムドンは国内胡椒の中心地になった。

指標 数値 出典
省全体の胡椒作付面積 37,191.2 ha Nong nghiep Moi truong(2026/7/26)
うち収穫段階の面積 33,400 ha 以上 同上
年間生産量 85,000 トン超 同上
主な根の障害 線虫・フィトフスラ疫病 同上

問題は、その広い作付けの相当部分が、長年の化学肥料・農薬の過剰投入で樹齢とともに疲れている点にある。根系が弱った畑では病害が出やすく、収量も残留リスクも管理しづらい。相場が高いうちに株を追い込むか、土を作り直して長く穫れる畑に戻すか——一部の生産者が選んだのは後者だった。価格の具体額は原記事に示されていないため、本稿では高値圏という前提だけを置く。

「化学多投に戻らない」宣言そのものが日本の調達側の与信になる

日本は胡椒を含む香辛料でMRL違反に敏感な市場で、輸入時の検査で基準超過が出れば積み戻しや廃棄につながる。だからこそ、産地が「化学多投に戻らない」と宣言していること自体が、調達側の与信になる。ここで効くのは抽象的な有機志向ではなく、根の障害対策として微生物資材・IPM・排水改善を組み合わせている、という具体的な栽培管理の中身だ。仕様交渉では、圃場ごとの防除履歴、収穫前使用禁止期間の運用、線虫・疫病の管理方法まで踏み込んで確認できるかが分かれ目になる。行政側もVietGAPや有機認証の取得費用を補助する認証支援条例でこの転換を制度面から後押ししており、ハティンの柑橘園が農薬を減らせたのはまず土を直したからだと伝える7haの事例と同じく、土壌起点で残留を下げる発想がベトナム各地で共有されつつある。

高値のときほど品質と残留で産地は選別される

胡椒が高値のときほど、品質と残留で産地は選別される。相場に乗って化学多投で数量を取りに行く畑と、土を作り直して長く安定供給に振る畑では、数年後の取引先の顔ぶれが変わる。日本や欧州のように残留基準が厳しい市場に食い込みたい産地ほど、後者を選ばざるを得ない。ラムドンの転換は、その分岐が中部高原の主力産地でも始まったサインと読める。対日輸出では、日本側の新規制に産地が先手を打つ動きも出ており、検疫・基準対応を前倒しする産地とそうでない産地の差が、調達の安定性に直結していく。

防除履歴・土壌管理・第三者認証の三点で産地を絞る

ラムドン産胡椒を検討する際の確認軸は三つに絞れる。第一に、防除履歴と収穫前使用禁止期間がロット単位で追えるか。第二に、線虫・疫病の管理が資材頼みか土壌管理まで含むか。第三に、VietGAPや有機など第三者認証の取得・更新状況だ。単価だけで比べると化学多投の畑のほうが一見安く見える場面もあるが、残留リスクを込みで考えれば、土から整えた産地のほうが総コストで有利になりやすい。産地の広さも味方になる。ラムドンは37,000ヘクタール超の規模を持つため、土壌管理を徹底した圃場だけをブロック単位で束ねても日本の需要をまかなうロットは組める。栽培管理まで踏み込んで見せてくれる集荷業者や協同組合を軸に据えると、履歴の追える胡椒を安定して押さえやすい。

参照元

Nong nghiep Moi truong「胡椒を健康にしたいなら土を健康に」(2026/7/26)
Nong nghiep Huu co「ラムドン省の胡椒バリューチェーンの隘路」

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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