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極洋が越産パンガシウスを日本で拡販、対日輸出はなぜ20%伸びたか

日本の大手水産会社である極洋が、9月11日に大阪で開いた自社の商談会で、約500点の水産物・加工食品を約760社の取引先に提示した。大阪・名古屋・広島・福岡の4支店が組んだ催事で、提案した品の一つがベトナム産の冷凍パンガシウス(cá tra)のフィレだったと、ベトナム水産物輸出加工協会(VASEP)が9月18日に伝えている。筆者はVASEP副事務局長のレ・ハン氏。

同協会の集計では、対日輸出は2026年1〜8月で3,631万ドル、前年同期比20.8%増。8月単月は547万ドルで23.7%増だった。金額そのものは小さく、同じ8ヶ月のパンガシウス輸出は全世界向けで15億ドル、日本はその2.4%にすぎない。それでも日本の食品加工・外食が押さえる値打ちがあるのは、伸び率が全体(10%増)の2倍で、売り込む主体が現地の輸出業者ではなく日本国内に販路を持つ極洋だからだ。交渉相手が国内にいる原料、という位置づけに変わる。

目次

極洋は大阪の商談会500品の一つに越産パンガシウスを入れた

500点の中の1品目としては控えめだ。ただ、総合水産会社が自社の商談会に並べる品目は翌年の販売計画に紐づいているのが普通で、VASEPは東京展と合わせて極洋が拡販に動いていると見ている。単発の紹介ではなく、通年で売る前提の棚入れと読める。

東京の水産展では試食まで出していた

同じ記事は、8月19〜21日の東京の国際水産展で極洋がパンガシウスを重点紹介品目の一つに挙げ、商談相手に向けて試食と製品の実演を用意したと伝えている。食べさせて仕様を詰める段階まで持ち込んでいる。なお確認できたのはVASEP側の報道で、極洋自身の発表文までは辿れていない。

売り物はベトナムで加工した皮なし骨なしの冷凍フィレ

極洋が提示するのは、ベトナムで加工した皮なし・骨なしの冷凍パンガシウスフィレで、和食・洋食・中華のいずれにも合う素材として説明されている。皮引きと骨取りを現地で終えている形態なら、国内工場や厨房での下処理工数はほぼ発生しない。歩留まりが読めるので、原価計算の段階から扱いやすい。

対日輸出3,631万ドル、伸び率は全体の2倍だった

1〜5月の2,000万ドルから8ヶ月で3,631万ドルへ積み上がった

VASEPの月次集計を並べると、日本向けの伸びは今年に入って途切れていない。5月単月が8%増と落ちた月もあるが、8月単月は23.7%増に戻した。

期間 対日輸出額 前年同期比
2026年1〜5月 2,000万ドル +22%
2026年5月(単月) 400万ドル +8%
2026年1〜8月 3,631万ドル +20.8%
2026年8月(単月) 547万ドル +23.7%

15億ドルの輸出全体でみると日本は2.4%の小口客

ベトナムのパンガシウス輸出は8ヶ月で15億ドル、10%増。8月単月は2億500万ドルで6%増だった。首位は中国で輸出額の27%を占め、8ヶ月累計4億1,700万ドル、29%増。8月単月も6,000万ドルで18%増と伸びている。日本の3,631万ドルは中国の11分の1程度で、産地からみれば小口の買い手だ。優先順位は下がるが、求める規格を通しやすい規模でもある。

市場 2026年1〜8月 前年同期比 補足
全世界 15億ドル +10% 8月単月2億500万ドル・+6%
中国 4億1,700万ドル +29% 輸出額の27%で首位
日本 3,631万ドル +20.8% 全体の約2.4%
英国 4,300万ドル(1〜7月) +23% 集計期間が1〜7月
米国 — 約14%減 8月単月は50%超の減

米国向けは8ヶ月で14%減、8月は半分以下に落ちた

日本向けの数字だけでは伸びの理由を読み違える。産地側の事情が大きい。VASEPの9月15日の記事によると、米国向けは8ヶ月で約14%減、8月単月では50%超の減少になった。2026年2月24日から150日間の輸入付加金10%が適用され、これが7月24日に終わると301条の追加関税12.5%が続いた。

POR21の最終結果でベトナム全体の税率は2.39ドル/kgに

反ダンピング税の第21次見直し(POR21)の最終結果では、個別税率を持たないベトナム事業者が2.39ドル/kgに置かれた。フィレの単価水準からすれば、取引を成立させにくい重さだ。

対象 税率
ビエンドン 1.00ドル/kg
NTSF 0.38ドル/kg
カントー水産輸出入/ナムヴィエト 0.84ドル/kg
ベトナム全体(個別税率なし) 2.39ドル/kg
301条の追加関税 12.5%(2026年7月24日以降)

年8万4,000トンの輸入枠案と最大200%の税率案も動いている

同記事は、ベトナムから輸入されるナマズ類に年8万4,000トン(原文は84 triệu kg)の枠を設け、枠内は50%、枠超は最大200%を課す案にも触れている。米国小売も生鮮水産の売上が7%超減、冷凍は売上7%超・数量8%超の減で需要側が弱い。産地が向き先を変えるのは自然で、対米エビの失速でゴダコがアジア市場へ舵を切った件と同じ力学が白身魚でも働いている。

冷凍フィレが82%、加工品は11%。仕入れ枠はどちらで組むか

ここからが実務だ。VASEPの9月3日の記事は、対日輸出の品目構成をHS0304の冷凍フィレ約82%、その他のHS03区分7%、HS16の加工・付加価値品11%と示している。7月14日の記事ではHS16が9.8%で、約2ヶ月で1.2ポイント上がった。

素材で買うか、半製品で買うかで工場の選び方が変わる

冷凍フィレを素材で買うなら、見るのはサイズグレード、グレーズ率、ドリップ、白身の色調のばらつきだ。国内で味付けするので、工場に求めるのは規格の再現性に絞られる。HS16の加工品で買うなら、調味・衣・加熱の仕様を日本側が先に決めて渡す必要がある。ベトナム側は日本の外食の味の幅を持たないので、丸投げすると棚に合わないものが出る。

加工品側の動きは、ヴィンホアンの塩蔵パンガシウス・コロッケがSeafood Excellence Asia 2026で最高賞を受けた件にも表れている。産地の大手が素材出荷から出ようとしている段階なら、日本側から仕様を持ち込めば形になりやすい。

国内在庫から買うか、産地の工場と直に組むか

極洋のように国内在庫を持つ会社から買えば、リードタイムは短く、為替と関税の変動も相手が抱える。少量から試作に入れるので初期は速い。ただし原料価格には在庫コストが乗る。年間ロットが数十トンを超え規格を固定できる段階なら、産地の輸出工場と直に組んだほうが原価は下がる。

通年で同じ規格を出せる工場はベトナム国内でも限られる

VASEPの9月3日の記事は、日本の消費者と輸入業者が品質、食品安全、トレーサビリティ、製品の安定性を高い水準で求めると書き、輸出量を急に伸ばすより長期戦略で臨むべきだと結ぶ。協会が自国の会員向けにこれを書くのは、その水準に届いていない工場があるという意味でもある。

白身魚が世界で品薄、産地の交渉力は上がっている

天然白身魚の供給が世界で細り、EU向けでもパンガシウスの余地が広がっている。VASEPは7月31日の記事でこの構図を扱い、EU向けは上半期9,100万ドル・3%増。英国向けは9月13日の記事で1〜7月4,300万ドル・23%増、7月単月700万ドル・30%増だった。日本だけが買い手ではない状況で価格だけを叩けば後回しにされる。世界的な白身魚不足が日本の外食調達に開いた隙間には以前も触れたが、今年はその隙間に日本の大手水産が先に入った形だ。

業界側の見方は「伸びるが条件が付く」で揃っている

確認できた業界の声は、方向は同じで温度が違う。レ・ハン氏は9月18日の記事で、価格の安い白身魚という扱いから、価格競争力・品質の安定・加工しやすさ・通年供給を備えた原料へ位置づけ直す機会だとの見方を示した。同協会編集部は9月22日の記事で、中国とブラジルが伸び米国が落ちる「市場間の分化が進んでいる」と書いた。9月3日の記事は、HS16の加工品は比率はまだ低いが伸びしろがあるとして、成長には品質の安定が条件になると整理している。いずれも協会側の発信で、日本の実需側の評価ではない点は割り引いて読む必要がある。

名刺を集める前に、社内で決めておく3項目

極洋の大阪商談会も東京の水産展も、この記事の時点では終わっている。次の催事を待つより社内の条件を固めるほうが早い。(1)素材か半製品か、(2)年間の想定数量と単価の上限、(3)規格をどこまで固定するか(サイズ、グレーズ率、色調の許容幅)の3点だ。これが決まっていれば、国内在庫を持つ会社にも産地の輸出工場にも同じ条件で見積もりを取れる。

項目 内容
企業名 株式会社極洋
本社 東京都港区赤坂三丁目3番5号
設立 1937年9月3日
資本金 75億2,700万円
従業員数 769名(グループ総数2,542名/2026年3月31日現在)
直近の商談機会 大阪商談会2026年9月11日、東京の国際水産展同年8月19〜21日(終了)
統計の出所 ベトナム水産物輸出加工協会(VASEP)の月次集計

まず1社に、月次の出荷実績と規格外率を出してもらう

最初の一手は、候補を1社に絞り、直近12ヶ月の対日出荷数量と月ごとの規格外率を出してもらうことだ。年間平均や四半期では、雨季と乾季で原魚のサイズが動く産地の実情が見えない。規格外率が跳ねる月があれば、その手当てを契約に書き込む。20.8%増は、その手当てを済ませた買い手から順に取り込んだ伸びと考えるほうが実態に近い。

この記事で参照した資料

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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