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GS25がテイニン省のバナナ農園を専用指定、月20万パックを囲い込む

韓国のコンビニ最大手GS25が2026年8月10日、ベトナム・テイニン省にあるデルモンテのバナナ農園を、自社専用の指定農園にしたと発表した。ホーチミン市から約50km、月に20万パック超を一定品質で仕入れる仕組みを整え、店頭では1パック1,990ウォン(約210〜220円)で売る。単なる仕入れ先の確保ではない。選果から個包装までを産地側の専用ラインに組み込み、供給網の上流を丸ごと押さえにいく「囲い込み型」の調達だ。同じテイニン産のバナナは日本へも流れており、対越青果の調達を考える日本の小売・商社にとっても、これは対岸の話にならない。

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デルモンテ農園を「GS25専用」に変えた調達設計

GS25はいきなり農園を押さえたわけではない。2026年3月から先行的に同農園のバナナを売り始め、7月末時点で累計売上が約7億ウォン(約7,700万円、約49万ドル)に達した。売れ行きが続いたのを確認してから、正式に「指定農園」に切り替えている。販売は毎月の「フレッシュウィーク」で数量限定という形をとり、需要の山に合わせて出す。

設計の肝は、農園に選果・個包装のラインを併設した点にある。ベトナム側で3〜5本の房に個包装まで仕上げるため、店舗は従来の箱単位ではなくパック単位で、自店の売れ方に合わせて発注できる。GS25はこれで店舗の在庫負担を減らし、物流と店舗運営の効率を上げるとしている。「専属契約」と一言でくくるより、GS25向けの選果・包装工程を切り出した専用ライン付きの指定農園、と捉えるのが実態に近い。

対中63万トンから、日韓の高値・固定価格市場へ

この動きは、ベトナムのバナナ輸出構造を知ると読み解きやすい。ベトナムの2024年のバナナ輸出額は約3.7億ドルで、世界の上位10カ国に入る規模へ育った。最大の相手は中国で、2024年に約63万トン・約2.6億ドルを輸入し、ベトナムはフィリピンを抜いて中国にとって最大のバナナ供給国になった。ただし対中は価格を週単位で交渉するため値動きが荒い。

一方の日本向けは、2024年に約3.3万トンを輸入。市場シェアは2019年の0.2%から2024年に3.2%へ、およそ14倍に伸びた。ベトナム産は品質と見た目に加え、フィリピン産より約1割安い価格が効いている。報道によれば、日本と韓国向けは年間の固定価格、中国向けは週次交渉という違いがある。数量では中国依存が大きいが、単価と安定性で見れば日韓向けのほうが扱いやすい市場だ。GS25が産地そのものを押さえにいったのは、この「高値で安定した」棚への供給を切らさないための布石だ。

産地の顔ぶれも重なっている。テイニンやその周辺の生産者では、収穫の5〜6割をデルモンテのブランドで韓国へ、残りを日本へ回している組合もあると報じられている。韓国と日本は、同じ農園・同じブランドを取り合う関係にある。ベトナムの主要産地と品目の全体像はベトナム産フルーツの産地ガイドにまとめている。

日本の小売・商社は「産地囲い込み」に動くべきか

GS25型の調達は、日本の量販・コンビニ・商社が取り得る選択肢としてどこまで現実的か。産地指定と個包装の内製化は、ベトナム産の「近くて安い」という強みを最大化する動きだ。品質のばらつきを抑え、物流費を圧縮し、自社ブランド(PB)化もしやすくなる。フィリピン産より約1割安い原価を、選果・包装まで囲い込むことでさらに安定させられる。

ただし裏側のコストも軽くない。単一産地への依存は、パナマ病(TR4)のような病害、天候不順、輸出政策の変化を一気に受け止めるリスクを抱える。専用ラインを維持するには最低数量のコミットが要り、円安局面では為替も重くのしかかる。分散仕入れで価格交渉力を保つ発想とは、正面からぶつかる。

だからこそ注目したいのは、GS25が全量を専用化したのではなく、フレッシュウィークという期間・数量限定の枠から入った点だ。売れる棚を先に作り、実績を見てから産地を固定する。この順番なら、日本側も既存のデルモンテ/対日流通に相乗りする形で小さく試せる。日本企業が対越調達で勝ってきた型はベトナム農業ビジネスの成功事例7選で整理しており、契約栽培や技術供与とセットで産地を押さえる手が現実的な落としどころになる。

テイニン産地に張るなら、見るべきは通年供給・個包装・価格の3点

実務で産地契約を検討するバイヤーが確認すべき点を、今回の事例から3つに絞る。

  • 通年供給の深さ:メコンデルタから東南部は乾季・雨季の二季で年間を通じて結実し、端境期が浅い。フレッシュウィークのような定期販売を支えられるかは、この供給の途切れにくさが前提になる。
  • 個包装の現地完結:箱単位から個(パック)単位へ発注最小ロットを下げられるかどうか。小型店やEC向けの品揃えでは、この一手が在庫と廃棄のコントロールを左右する。
  • 価格の枠組み:対中の週次交渉に巻き込まれず、日韓向けのような年間固定価格の枠を取れるか。原価の予見性が、PB価格の設計余地を決める。

ベトナムの主要生産物ごとの輸出競争力や産地の強弱は、米・コーヒー・エビなど主要生産物の比較ガイドで品目別に確認できる。

まとめ:農園を押さえる前に、売り切れる棚を作ったこと

GS25の事例で効いているのは、先行販売で7億ウォンを売り切ってから農園を指定した、という順番だ。産地を囲い込む前に需要を実証し、個包装まで現地に持ち込んで店舗の発注単位を下げる。対中63万トンの規模ではなく、対日3.2%の伸びしろと年間固定価格の安定に賭けた調達である。日本のバイヤーが持ち帰れる論点は、産地を押さえること自体より、その前に売り切れる棚を用意できているか、という一点に尽きる。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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