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北海道のホタテ29.8万トン見込み、大玉が少ない年の仕入れはどうする

ベトナム水産物輸出加工協会(VASEP)が2026年9月22日、日本最大のホタテ産地である北海道の生産量が今季29万8,200トンにとどまる見通しだと伝えた。前年を15%下回り、30万トンを割るのは9年ぶりになる。主漁期に入ったオホーツク海で揚がっているのは「5S」を中心とした小型で、大玉の供給は前年と同じく細い。産地の話だけで終わらないのは、財務省の貿易統計をたどると日本から出ていくホタテの数量の45%がすでにベトナム向けになっているからだ。

目次

29万8,200トンは誰がいつ出した見通しか

発表は8月27日の東京、ベトナム語で回ってきたのは9月22日

数字の出どころは北海道漁業協同組合連合会(北海道漁連)で、8月27日に東京で開かれた秋の取引をめぐる会議で示された見通しだ。起点記事はベトナム語で書かれており、日本側の会議の正式名称までは記していない。9月22日に流れてきたのは新しい調査結果ではなく、約4週間前に日本の業界内で共有された見通しがベトナム語圏に渡ったものだ。ベトナムの加工業者が同じ数字を8月末から見ていた可能性は高い。日本の買い手が初耳の情報として商談に持ち込むと、相手のほうが先に織り込んでいる。

15%減から逆算すると前年は35万トン前後だが、これは筆者の割り算で、漁連が前年実績として示した数字ではない。商談に持ち出すのは29万8,200トンと15%減の2つに絞るほうが安全だ。

主漁期に入ったオホーツクで揚がるのは5S中心

起点記事が書いているのは、オホーツク海が主漁期に入ったところで、現状の漁獲が小型の等級、とくに5Sに寄っているという点だ。5Sが何粒でいくらという粒数レンジまでは示されていない。ここで踏み外しやすいのは、小型に寄っているという記述を「大玉がまったく無い」と読み替えてしまうことだ。起点記事は大玉の供給が前年と同様に限られると書いているだけで、消えたとは書いていない。総量が15%減り、そのなかで大玉の比率が下がる。買い手が影響を受けるのは総量よりサイズ構成のほうだ。

集計範囲の違いにも注意したい。英文の水産専門メディアは8月10日付の見出しで、オホーツク海の漁獲が前年を22%下回ると伝えている。本文は有料で、どの期間の22%かは裏が取れなかった。オホーツク単独の途中経過と、北海道全体の通期見通しである15%減は同じ物差しではない。

日本のホタテは数量の45%がベトナムに渡っている

2025年は198億円・2万3,516トンでベトナムが1位

農林水産省が財務省の貿易統計を基にまとめた2025年の実績では、日本のホタテ貝(調製品を除く生鮮・冷蔵・冷凍)の輸出は905.9億円・5万1,559トンだった。金額は前年から30.4%増えている。国別の1位はベトナムで198.1億円・2万3,516トン、金額は前年比86.4%増だ。2位は米国、3位は台湾だ。

金額シェア21.9%、数量シェア45.6%のずれ

ベトナムの金額シェアは21.9%だが、数量シェアは45.6%になる。この差が、日本のホタテがベトナムで何に使われているかを示す。下表の平均単価は公表された金額を数量で割った筆者の計算で、どこかの市場で建った値ではない。貿易統計の輸出額はFOB建てなので、段階としては輸出FOBの平均単価にあたる。産地の浜値や国内卸の建値とは別の物差しで、国内の小売価格と並べて倍率を出しても意味をもたない。

輸出先 金額 数量 金額シェア 輸出FOB平均単価(筆者計算)
ベトナム 198.1億円 2万3,516トン 21.9% 約842円/kg
米国 181.8億円 3,015トン 20.1% 約6,030円/kg
台湾 133.3億円 2,484トン 14.7% 約5,366円/kg
韓国 86.4億円 9,209トン 9.5% 約938円/kg
香港 68.2億円 2,781トン 7.5% 約2,452円/kg
世界計 905.9億円 5万1,559トン 100.0% 約1,757円/kg

ベトナムと韓国の平均単価は世界計の半分前後で、米国と台湾は3倍以上になる。同じ統計品目でも、向かう国によって積まれている形が違う。単価の高い相手には売値の立つ製品が、低い相手には現地で手をかける原料が流れている。

大玉が減った年にベトナム向けの玉冷はなぜ伸びたのか

農水省が挙げた増加要因に高水温による減産が入っている

2026年1〜6月の輸出実績で、農林水産省はホタテ貝の輸出額が32億円増えた要因をこう書いている。ベトナム向けで加水加工用の玉冷(貝柱の冷凍品)の需要が高まったことに加え、2025年夏場の高水温によるオホーツク海産の減産や各国からの需要増による単価上昇があった、と。つまり減産は輸出額を押し下げる方向ではなく、単価を押し上げる方向で効いた。国・地域別でもベトナムは1〜6月で533億円・前年同期比35.4%増と6位につけ、増加額139億円の主な品目の先頭がホタテ貝だった。

買い手として読み取るべきはここだ。大玉が減っても、小型の玉冷は加水して増量する加工の原料になる。小さいことはその用途では欠点になりきらない。大玉前提の国内製品と小型前提の海外加工が、同じ浜の同じ水揚げを取り合う。

累計は+6.5%でも7月単月は8.3%減に転じた

ただし勢いは7月で変わった。1〜7月の累計は440.3億円で前年同期比6.5%増だが、7月単月は58.4億円で前年同月を8.3%下回った。1〜6月の累計が9.1%増だったので、単月の失速で累計の伸びが2.6ポイント落ちている。1〜7月のベトナム向け増加品目の並びも、さば・インスタントコーヒー・ホタテ貝の順で、1〜6月に先頭だったホタテ貝が3番目に下がった。

加工品側も見ておきたい。ホタテ貝加工品の輸出は1〜7月で39.6億円・20.8%減、7月単月は3.1億円・35.6%減と二桁のマイナスが続く。2025年通年でも118.3億円・33.2%減で、上位は香港62.4%、台湾18.6%と最終消費地に寄る。原料が伸びて加工品が縮む動きは、仕上げの工程が外に出ていく流れと重なる。

区分 ホタテ貝 前年比 ホタテ貝加工品 前年比
2026年1〜6月累計 381.9億円 +9.1% 36.5億円 19.2%減
2026年1〜7月累計 440.3億円 +6.5% 39.6億円 20.8%減
2026年7月単月 58.4億円 8.3%減 3.1億円 35.6%減
2025年通年 905.9億円 +30.4% 118.3億円 33.2%減

大玉前提の商品を持つ買い手が今季のうちに確かめる3点

仕様書からサイズ表記を外せるか

総菜やギフトで「大粒」「特大」を売り文句にした商品は、今季の水揚げ構成と正面からぶつかる。先に手を入れられるのは売り文句ではなく仕様書だ。サイズを粒数レンジで固定しているのか、1粒あたりのグラム下限なのか、総重量だけで受けているのか。総重量で受けられる仕様なら小型を多めに入れて同じ量目を満たせる。粒数とグラム下限の両方を固定した仕様が今季もっとも通しにくい。

加水品と無加水品の歩留まりを別に持てるか

加水加工用の玉冷が伸びているなら、市場に出回る加水品も増える。解凍後の重量が仕入れ時とどれだけずれるかは加水の有無で変わる。ここを1本の歩留まり係数でまとめていると、原料の切り替えが原価に出るまで1ロット遅れる。加水の有無を仕入台帳の別項目に立てて解凍歩留まりを分けて記録すれば、次の値決めの根拠が変わる。

剥き身を別の貝に振り替える余地はあるか

ホタテの剥き身で埋めていた枠を他の貝で部分的に置き換えられるかも計算しておきたい。ベトナム側を当てる場合、たとえばベトナムのバイ類養殖は年6,200トン規模で、量を一気に積める相手ではない。数万トン単位の穴を埋める供給源ではなく、小口の規格品として別の棚を作る相手になる。

ベトナム経由の玉冷が増えると日本の棚はどう動くか

小売の値上がりに家計の支出が追いついていない

原料の単価が上がっても、そのまま売価に乗せられるとは限らない。日本国内では魚介類の小売価格が前年同月比9%上がる一方で家庭の魚介支出は実質で減っているという状況が続いている。小売段階で値上げが通りにくい局面に、輸出FOBの単価上昇が重なる。国内向けに大玉を確保しようとすれば、輸出の単価と競らなければならない。今季の調達は、価格を通す交渉と量を確保する交渉を分けて設計する必要が出てくる。

完成品より原料の流れのほうが太い

日本とベトナムの水産の行き来は、完成品より原料の側で太い。日本の練り製品のベトナム向け輸出が2.2倍に伸びても絶対量は21トンという規模にとどまる一方で、同じ期間に日本はベトナムから1,844トンのすり身を買っている。ホタテでも構図は同じで、動いているのは最終製品ではなく原料だ。日本の産地が減産する年に、原料の取り合いはベトナムの加工需要と重なる。国内の仕入れ担当が見るべき相手は、国内の同業者だけではない。

今季のうちに1つだけ動かすなら、扱っているホタテ商品の仕様書を並べて、サイズの固定条件が粒数・1粒重量・総重量のどれで書かれているかを一覧にすることだ。そのうえで粒数を外しても成立する商品を切り分けておく。29万8,200トンは8月末に共有された見通しで、浜の構成はもう動いている。

参照した資料と報道

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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