ベトナム中部ダナンで開かれた地域農産物の見本市に、5日間で180のブースと400点を超える特産品が並び、来場者への売上は約50億ドン(1万ドン≒60円換算で約3,000万円)に達した。単発の即売イベントに見えるが、日本の食品バイヤーや土産物の仕入れ担当にとっては、地方に散らばる産品を一望できる調達の入口になる。生果や乾物、加工品、手工芸まで、産地ごとに個性の異なる原料と商品が一堂に集まる場は、越の地方ブランドを商材として掘り起こすうえで見逃せない。
ダナンで起きたこと
会期は7月9日から13日までの5日間。主催はダナン市農民協会で、出展したのはダナン市に加え、ザライ、ダクラク、トゥアティエンフエ、クアンガイの各省だ。中部高原のコーヒー・胡椒産地から沿岸の水産・加工品まで、地理的にも品目的にも幅の広い顔ぶれが集まった。会場では農産物、OCOP認定品、小規模な手工芸品、地方特産が入り混じって並び、数千人規模の住民と観光客が訪れたという。
会長のLe Thi Minh Tam氏は、この見本市を「企業・協同組合・農園主・生産者が経験を交換し、長期的な協力の機会を探す出会いの場」と位置づけている。売り切ることより、作り手と買い手をつなぎ、恒常的な取引関係の芽を作ることに主眼が置かれている点が、通常の物産展との違いだ。
OCOPという「星付き」の目印
並んだ400点超の中核をなすのが、OCOP(One Commune One Product、一村一品)認定品だ。OCOPはベトナムが全国で運用する地域産品の格付け制度で、品質・パッケージ・トレーサビリティなどを審査して1つ星から5つ星を付与する。地方に無数にある小さな生産者の商品を、行政が一定の基準で仕分けしてくれる仕組みと言い換えてもいい。
この「星の数」は、日本側の調達実務でそのまま使える目印になる。無名の産地からサンプルを取り寄せて一つずつ品質を確かめるのは手間もリスクも大きいが、4つ星・5つ星の産品は書類やラベルの整備が進んでおり、輸出や小売の棚に載せる際の下地ができている。実際、ベトナム国内でも大手小売が地方OCOP品を星の数で選んで店頭に並べる動きを強めており、5つ星認定がそのまま調達の入口として機能し始めている。ダナンの見本市は、その「星付き商材」を産地横断で見比べられる場でもあった。
数字で見る見本市の実力
公表された数字を整理すると、この見本市の性格が見えてくる。
| 項目 | 数値 | 円換算・補足 |
|---|---|---|
| 会期 | 5日間(7月9〜13日) | 年次開催の常設イベント |
| ブース数 | 180 | 5省・都市が出展 |
| 展示品目 | 400点超 | 農産物・OCOP・加工品・手工芸 |
| 売上 | 約50億ドン | 約3,000万円(1万ドン≒60円) |
| 1ブース平均 | 約2,780万ドン | 約17万円(売上÷180ブース) |
1ブースあたりの5日間売上は約17万円という計算になる。小売の即売としては大きな額ではないが、この場の狙いは会場での売上そのものではない。作り手が実際の消費者の反応を確かめ、商談相手と名刺を交換し、次の取引につなげるためのショーケースとして機能している。売上50億ドンは、その集客力と商品力を測る指標として読むのが正しい。
日本の調達にどう効くか
日本の食品バイヤーや土産物の仕入れ担当がこの種の見本市に注目すべき理由は3つある。第一に、産地が分散している越の地方産品を一括で比較できること。ザライのコーヒー、ダクラクの胡椒、沿岸省の魚醤や乾物が同じ会場に並べば、品目ごとの相場感と品質のばらつきを短時間で把握できる。第二に、OCOPの星が一次スクリーニングを肩代わりしてくれること。第三に、作り手と直接つながれることだ。ダナンの生産者の中には、素材をそのまま売るのではなく産品を「物語」ごと商品化してギフト市場を狙う動きも出ており、日本の贈答・土産チャネルと相性のよい商材が育ちつつある。
一方で注意点もある。見本市に並ぶ産品の多くは小規模生産者のもので、日本の小売が求めるロットや納期、通年供給を単独で満たせるとは限らない。恒常的な取引に落とすには、複数の生産者を束ねる協同組合や、加工・輸出を担う中間事業者を挟む設計が要る。見本市は「誰が何を作っているか」を知る起点であって、そこから供給網を組み立てる工程は別に必要になる。中部5省の顔ぶれを見ても、高原の一次産品と沿岸の加工品では輸出対応の成熟度に差があり、どの産地が書類整備や規格認証まで進んでいるかを見極める目が問われる。
裏を返せば、まだ束ねられていない産地こそ、早く動いた買い手に価格と供給の余地が残る。すでに大手商社が押さえた5つ星の定番品より、これから星を上げる4つ星の作り手と関係を築くほうが、独自商材の確保という点では旨みがある。見本市はその「これから伸びる作り手」を、実物とパッケージ、そして本人の説明とともに確かめられる数少ない場だ。
年次イベントが産地の窓口に育つ
ダナンのような地方見本市が毎年開かれること自体に意味がある。回を重ねるほど出展産地が広がり、OCOP認定品の顔ぶれも更新される。日本側から見れば、越の地方産品の「今年の棚」を定点観測できる装置だ。生鮮の相場だけでなく、どの産地がブランド化と加工に投資しているか、どの品目が星を上げてきたかを追えば、生鮮の買い付けから一歩進んだ、加工品・ギフト向けの原料調達の芽が見えてくる。ダナンの50億ドンは、その芽の大きさを映す最初の数字だ。