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カナダ産の高級水産が越で2年40%増、日本の販路に何を示すか

ロブスター、ズワイガニ、カキといったカナダ産の高級水産の対ベトナム輸入が、直近2年で約40%増えた。ベトナム税関の統計では、輸入額は2023年の4400万ドルから2024年に4900万ドル、2025年には6100万ドルへ伸び、2026年も1〜8月で4320万ドルと前年同期比28.2%増で推移している。ベトナムは水産を「輸出する国」という見方が強かったが、所得の底上げで高級魚介を「買う国」へと横顔を変えつつある。この変化は、対中輸出の停滞で新しい売り先を探す日本の水産バイヤーにとって、見過ごせない材料になる。

目次

4400万ドルから6100万ドルへ、2年で何が起きたか

牽引役はカナダ産のズワイガニとロブスターだ。ノバスコシア州のジェイソン・ホレット農業水産副大臣は「ベトナムは同州にとって7番目に大きい水産輸出先」と語る。2025年のカナダ側の対越輸出はズワイガニがカナダドル3500万ドル(米ドル約2530万ドル)、ロブスターが同800万ドル(米ドル約580万ドル)に達した。輸出する側が名指しで市場の重要性を口にする段階まで、ベトナムの購買力は育っている。

背景にあるのは、価格と関税の二つの追い風だ。CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的・先進的協定)の要件を満たすカナダ産ロブスターは、ベトナム入国時の輸入関税がゼロになる。関税が消えた分、店頭価格が下がり、都市部の中間層に手が届く。安く入る高級魚介が、外食と家庭の食卓に広がっている構図だ。

店頭価格で見る「安い高級魚介」の実態

実際の小売価格を並べると、カナダ産がなぜ選ばれるかが見えてくる。為替は1円=約170ドン(2026年9月時点)で換算した。

品目(産地) ベトナム店頭価格 円換算(1円≈170ドン)
カナダ産ロブスター(1kg超) 130〜140万ドン/kg 約7,600〜8,200円
カナダ産ズワイガニ(活) 140〜150万ドン/kg 約8,200〜8,800円
カナダ産カキ 40万ドン超/kg 約2,350円〜
豪州産ロブスター 350万ドン/kg 約2万600円
フランス産カキ 100万ドン/kg 約5,880円

活ズワイガニは他の輸入ガニより約3割安く、カキはフランス産の半値以下だ。豪州産ロブスターが350万ドンなのに対し、カナダ産は1kg超でも140万ドン前後にとどまる。品質の格ではなく、関税と物流で決まる価格差が、消費者の選択を動かしている。日本の水産にとって、この価格帯の感覚は自社商材を持ち込む際の値付けの物差しになる。

日本の水産が同じ関税の恩恵を受けられる

ここで日本のバイヤーに直結するのが、カナダと同じCPTPPの枠組みだ。日本もCPTPPの加盟国であり、対象品目の対越関税は段階的に下がる。カナダ産ロブスターがゼロ関税で価格競争力を得たのと同じ土俵に、日本産のホタテ、ブリ、サバ、真牡蠣なども乗せられる。対中輸出が細った品目の新しい出口として、育ちつつあるベトナムの高級魚介市場は現実的な選択肢になる。

ベトナム自身の水産は、8ヶ月で80億ドルを輸出しカニ・貝類が伸びる 輸出大国の顔を持つ。だが養殖エビやパンガシウス中心の輸出構造と、都市中間層が求める高級魚介の需要はまるで別物だ。国産で埋まらないプレミアム帯に、輸入の高級魚介が入り込んでいる。ここは日本産の鮮度・産地ブランドが効く領域でもある。

越の中間層はどこまで高級魚介を買うのか

2026年1〜8月の輸入額4320万ドルは、前年同期を28.2%上回った。年間の伸びが2年で40%だったことを踏まえると、勢いはむしろ加速している。都市部のスーパーや高級食材店、日本食・韓国食を出す外食が主な受け皿で、活魚介の水槽を備えた小売が増えていることが需要を支える。ホーチミンやハノイの外食調達は、白身魚の逼迫が世界で進む 局面で、原料の確保に敏感になっている。日本の水産が組むなら、こうした活魚介を扱える現地の卸・外食チェーンが最初の接点になる。

ただし冷凍・活魚のコールドチェーンはまだ発展途上で、通関と鮮度保持のリスクは残る。カナダ産が伸びたのは、価格の安さに加えて安定した供給ロットと物流を組めたからだ。日本産で同じ土俵に立つには、単価の高さを鮮度と産地の物語で正当化しつつ、供給を切らさない体制が要る。

売る側・扱う側はこの伸びをどう読むか

カナダ側は市場の格上げを隠さない。ノバスコシア州のホレット副大臣がベトナムを7番目の輸出先と位置づけたのは、単なる余剰のはけ口ではなく育成すべき市場という認識の表れだ。現地の高級小売の間では、活魚介の水槽を置けば集客につながるという手応えが語られ、日本食・韓国食の外食では、関税の下がった輸入食材を使ってコースの原価を抑える動きが広がっている。

ベトナムの水産業界からは、輸出で稼ぐ一方で高付加価値の魚介は輸入に頼るという二面性を冷静に見る声もある。国産のエビやパンガシウスと、都市中間層が外食で食べたい活ロブスターやカキは、そもそも競合しない別の棚だからだ。日本の水産事業者にとっては、この「国産で埋まらない棚」こそ狙い目になる。鮮度と産地ブランドで勝負できる領域が、明確に空いている。

日本の水産バイヤーが次に確かめること

まず、自社の主力品目がCPTPPの対越関税削減の対象か、削減スケジュールのどの段階にあるかを確認したい。次に、ホーチミン・ハノイで活魚介を扱う高級小売と日本食外食チェーンをリスト化し、カナダ産・豪州産が占める価格帯に自社商材が入るかを店頭価格で検証する。産地視察付きの商談会である VietFish 2026 のような場は、輸入する側・扱う側の現地バイヤーと直接会う入口になる。輸出一辺倒でベトナムを見てきた水産事業者ほど、買い手として育つこの市場を早めに一度、自分の目で測っておく価値がある。

参照元: VnExpress International「Canadian seafood imports surge 40% as lobster, snow crab gain favor in Vietnam」

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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