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香港フードエキスポの1850社で越ロブスタの取り合いが日本の調達を試す

香港貿易発展局(HKTDC)が主催する業者向け食品見本市「Food Expo PRO 2026」が8月13日に開幕し、30を超える国・地域から1,850社以上が出展した。世界2位のコーヒー輸出国であるベトナムのロブスタは、この買い手が集中する場で新しい販路を探しに出た。長くベトナム産ロブスタを缶コーヒーやインスタント用に仕入れてきた日本のロースターと商社にとって、香港・中国本土のバイヤーが同じ豆を指名し始めた事実は、調達競争が一段と厳しくなる前触れになる。

目次

1,850社が集う香港の商談場に、越ロブスタが中国語圏の買い手と並んだ

Food Expo PRO は一般来場者向けの物産展ではなく、卸・輸入・外食・小売のバイヤーが仕入れ交渉に来る商談特化型の見本市だ。HKTDCの発表では今回の出展は1,850社超、参加は30以上の国・地域にわたる。香港は自由港として関税や検疫の手続きが軽く、中国本土・東南アジア・欧米のバイヤーが一堂に会する中継地として機能してきた。ベトナムのコーヒーがこの場に並んだということは、生豆や焙煎品の売り先を中国語圏の実需家に直接広げる動きが始まったことを意味する。

ここで押さえておきたいのは、香港の見本市が「新規の買い手を作る場」だという点だ。産地が中国・香港のルートを太くするほど、これまで安定的にベトナム産を引いてきた日本の買い手は、価格でも数量でも他国の需要と競り合う局面が増える。原料の奪い合いは、豆が余っている年ではなく、需要側の窓口が増えた年に起きる。

世界シェア2割・ロブスタ首位という越コーヒーの現在地

ベトナムのコーヒーは今、100を超える国・地域に輸出され、産業全体で約260万人の雇用を支える。世界のコーヒー市場に占めるシェアはおおむね19〜21%で、輸出量では世界2位、ロブスタ(カネフォラ種)に限れば世界最大の生産国だ。缶コーヒーやインスタント、業務用ブレンドのコクと苦みを支える原料としてロブスタは欠かせず、日本の加工向け需要はここに強く依存してきた。

項目 数値・内容
Food Expo PRO 2026 開幕 2026年8月13日(HKTDC主催)
出展者数 1,850社超
参加国・地域 30以上
ベトナムの輸出先 100を超える国・地域
コーヒー産業の雇用 約260万人
世界市場シェア 約19〜21%(輸出量で世界2位)
ロブスタ生産 世界最大の生産国

数値はVietnamPlus(8月13日付)およびHKTDCの公表値に基づく。市場シェアは年・集計機関により幅がある。

この立ち位置は、買い手にとって二つの意味を持つ。ひとつは供給の厚みで、単一産地でこれだけの量を出せる国は他にない。もうひとつは価格の連動で、ベトナムの作柄と輸出方針が世界のロブスタ相場をそのまま動かす。だからこそ、ベトナムが誰に売るかという販路の設計は、日本の調達コストに直結する。

香港・中国が買い手に回ると、日本の調達はどこで差がつくか

中国のコーヒー消費はこの数年で急速に伸び、ミルクや砂糖で飲むスタイルからブラックや高濃度の抽出へと広がっている。香港はその中国本土向け商流の玄関口だ。ベトナムの産地が香港経由で中国語圏の需要をつかめば、従来は日本や欧州に流れていた良質なロブスタの一部が、より近くて伸びしろの大きい市場へ振り向けられる。距離が近く物流費が安い中国向けは、産地から見れば利益率で優位に立ちやすい。

日本の缶コーヒーやインスタント、業務用ブレンドはロブスタの配合を前提に味を組み立てており、原料を急に別産地へ振り替えると風味の設計そのものが崩れる。だからこそ、供給の一部が中国語圏に流れる局面での取りこぼしは、単なる仕入れ値の問題では済まない。日本の買い手が競り負けないための鍵は、単価の上乗せだけではない。長期の引き取り数量を約束する複数年契約、生豆の水分値や欠点豆率といった規格の明文化、そして産地コードやトレーサビリティで裏取りできる取引履歴の3点が、産地に「日本は続けて買ってくれる相手だ」と思わせる材料になる。スポットで安値を叩く買い方は、買い手の窓口が増えた局面では最初に外される。実際、ベトナムのロブスタ産地では老朽園の改植で単収と品質を底上げする動きが進んでおり、ラムドンで進む矮性ロブスタへの改植のように、供給側は「量から質」への切り替えを始めている。品質で選ばれる豆ほど、買い手も選別される。

生豆から加工品へ、産地が付加価値を握り始めた

もうひとつ見逃せないのが、ベトナムが生豆の輸出だけで満足しなくなっている点だ。焙煎・粉砕・インスタント化まで国内で行い、完成品に近い形で輸出すれば、産地に残る利益は大きく変わる。香港のような商談見本市は、生豆のバルク取引だけでなく、袋詰めの焙煎豆やドリップ製品を小売バイヤーへ売り込む場としても使える。ダクラクで進む「粉」への加工シフトが示すように、産地は原料供給者から製品供給者へ位置を上げようとしている。

日本の輸入業者にとって、これは仕入れの入り口が変わることを意味する。生豆を買って国内で焙煎する従来型に加え、ベトナム側の焙煎・加工能力をどう使うかという選択が現実味を帯びる。品種の幅も広がっており、ロブスタ一辺倒だった産地図にソンラ高地のアラビカのような高地栽培が加わってきた。調達の相手を「ロブスタの安い産地」とだけ見ていると、加工品や品種の選択肢を先に押さえた買い手に差をつけられる。

日本のロースターが夏の商談で確認したい実務ポイント

  • 複数年の引き取り数量を提示し、スポット依存から抜ける。窓口の増えた産地では継続買いの約束が優先される。
  • 水分値・欠点豆率・スクリーンサイズを契約書に明記し、香港経由で中国向けに流れる良品と同等の規格を確保する。
  • 産地コードとトレーサビリティの提出を条件に入れる。輸出書類の電子化が進む産地ほど、後の検疫・通関でつまずきにくい。
  • 生豆に加え、焙煎豆・インスタント半製品の見積もりも取る。加工まで含めた総コストで比べると、生豆だけの比較と結論が変わることがある。
  • 収穫期(おおむね10〜12月)の作柄情報を早めに押さえ、翌年の相場が動く前に数量を仮押さえする。

香港の1850社が示すベトナム産の売り先の広がり

Food Expo PRO 2026にベトナムのロブスタが並んだことは、単なる出展のニュースではない。中国語圏という伸びる市場の玄関口で、産地が新しい買い手と直接つながり始めたという構造の変化だ。世界シェア2割・ロブスタ首位という供給力は変わらないが、その豆を誰に売るかの選択肢は確実に増えている。日本の調達担当が次にやるべきは、秋の新豆商談までに引き取り数量と規格を固め、加工品まで含めた見積もりで取引先を組み直すことだ。安値の一発勝負ではなく、続けて買う相手として選ばれる設計に切り替えた買い手だけが、来季のロブスタを予定通り確保できる。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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