中国の飼料・養殖大手Haid Group(広東海大集団)が、2026年4月29日にベトナム北部フートー(Phu Tho)省で年産20万トンの新飼料工場を着工した。子会社の永福海龍農牧科技(Yongfu Hailong Agricultural and Livestock Technology)が運営し、ティラピア用押出飼料(extruded feed)を主軸に、鶏・鴨・豚向け飼料も製造する。Haid Groupは2011年にベトナムに進出して以来、すでに10以上の飼料工場を運営しており、2024年の販売量は86.3万トン・市場シェア19.2%。北部進出により国内シェア20%超への到達が現実的となった。
ニュース詳細
新工場はフートー省の工業団地内に立地し、北部紅河デルタを中心とする養鶏・養豚・ティラピア養殖クラスターをカバーする。年産20万トンの内訳は、ティラピア・コイ等の水産用押出飼料を主力としつつ、鶏・鴨・豚向けの配合飼料も生産する。Haidは飼料生産から動物医薬品・育種・養殖までを統合した「バリューチェーン型」事業モデルをベトナムでも展開しており、新工場はこの体制を北部にも拡張する位置付けだ。
着工式典には、フートー省人民委員会幹部、Haid Groupの経営陣、現地パートナー企業が参加した。フートー省は外資誘致を強化しており、今回の中国系大型投資は同省の戦略にも合致する形となった。
背景: なぜ今、北部か
ベトナムの飼料市場は南部メコンデルタ(パンガシウス・エビ)が長く中心だったが、近年は北部紅河デルタでのティラピア養殖、鶏・鴨・豚畜産が急拡大している。Haidが2011年以降に建設した10以上の工場は南部・中部に偏っていたため、北部進出は自然な戦略的補完だ。ベトナム産ティラピア輸出の爆発的成長(中東2,300%・サウジ670%)を受け、ティラピア専用押出飼料の需要は急増している。
また、フートー省は中国国境に比較的近く、原料(魚粉・大豆ミール・トウモロコシ)の中国・北米からの輸入アクセスにも有利。完成飼料の供給先も北部の大規模養殖場・畜産場に集中しており、物流コストを最小化できる。
Haid Groupベトナム事業の数字
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| ベトナム進出年 | 2011年 |
| 運営工場数 | 10以上 |
| 2024年販売量 | 86.3万トン |
| 市場シェア | 19.2% |
| 新工場立地 | フートー省 |
| 新工場年産 | 20万トン |
| 新工場運営子会社 | 永福海龍農牧科技 |
| 新工場主力品 | ティラピア用押出飼料 |
| 同社事業領域 | 飼料・動物医薬・育種・養殖 |
業界・現地の反応
フートー省人民委員会は「年20万トン規模の飼料工場は地域の畜産・水産業の競争力を強化する戦略的投資」と評価。Haid Groupの経営陣は「ベトナムは中国の飼料企業にとって最重要市場の一つ。今後も北部・中部での工場新設を検討する」と述べた。
ベトナム飼料協会は「Haidの進出は競争激化と価格圧力をもたらす一方、技術移転と品質向上を促す」と評価する。一方、ベトナム系飼料メーカー(Greenfeed・Vinafeed等)はシェア防衛のため、ティラピア向け専門飼料・抗病性向上配合・カスタムブレンド等で差別化を急ぐ。VASEP(水産物輸出生産者協会)は「飼料供給能力の拡大はティラピア輸出の上限を引き上げる前提条件」とし、Haid新工場稼働後の輸出キャパ拡大に期待を示している。
日本農業関係者・輸入業者への実務情報
日本の水産輸入業者・冷凍加工メーカーにとって、北部ティラピア生産能力の拡大は朗報だ。Haid新工場が稼働すれば、北部養殖クラスターの飼料コスト・供給安定性が改善し、結果としてベトナム産ティラピアの単価競争力と数量供給力が向上する。日本の冷凍食品OEM・外食チェーンの調達戦略にも追い風となる。
日本の飼料メーカー(日清丸紅飼料・伊藤忠飼料等)にとっては、ベトナム進出時の競合環境が厳しさを増す。しかし、特殊用途(高水温対応・抗病性強化・配合最適化)での差別化、あるいは日系養殖場・日系畜産場向けの「日本基準飼料」供給という棲み分け戦略には依然として余地がある。日本のスタートアップ(昆虫タンパク・微生物タンパク・スマート給餌)には、Haid・現地大手と組んでパイロット導入する道筋がある。
業界への波及
Haidの北部進出は、ベトナム飼料市場の集中化と垂直統合の進行を象徴する。中国系大手・タイCPF・米国Cargill・ベトナム系Greenfeed等が市場を二分し、寡占化が進む。一方、ティラピア・鶏・鴨・豚の需要は今後も拡大するため、絶対量としては全プレイヤーにチャンスがある。重要なのは、特定畜種・特定地域での専門性を確立できるかだ。
飼料メーカーが垂直統合(種苗→飼料→養殖→加工→輸出)を進めると、独立系養殖業者の交渉力が低下する可能性がある。これを受け、農業環境省は「独立系生産者保護のため、契約条件の透明化と共同販売プラットフォームの整備」を検討中。日本企業がベトナム水産業に参画する場合、こうした制度動向のモニタリングも欠かせない。
実用情報まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業 | Haid Group(広東海大集団) |
| 子会社 | 永福海龍農牧科技 |
| 立地 | 北部フートー省工業団地 |
| 着工日 | 2026年4月29日 |
| 年産規模 | 20万トン |
| 主力品 | ティラピア用押出飼料・鶏・鴨・豚配合飼料 |
| 市場シェア(2024) | 19.2%(販売86.3万トン) |
| 事業統合度 | 飼料・医薬・育種・養殖を統合 |
まとめ
Haid Groupの北部ベトナム飼料工場着工は、中国系資本によるベトナム畜水産業バリューチェーン浸透の象徴だ。ティラピア輸出爆発、北部畜産クラスター拡大という需要側の追い風と、Haidの垂直統合戦略がきれいに重なる。日本の関係者は、原料調達・冷凍加工・OEM供給の各レイヤーで「中国系飼料インフラの上に乗る」ことの是非を冷静に検討する局面にある。技術差別化や認証付き調達ルートで日本企業が勝負できる領域も依然として広い。