NÔNG NGHIỆP VIỆT NAM — TẠP CHÍ NÔNG NGHIỆP ĐÔNG NAM Á

隻手の傷痍軍人が育てる矮性ヤシ、ドンナイ循環農園は調達候補になるか

ベトナム南部ドンナイ省の農園で、背丈の低い矮性ヤシが枝もたわわに実をつけている。この農園を営むのは、右手を失いながら半世紀にわたって畑に立ち続けてきた一人の傷痍軍人だ。地元メディア「Dân Việt」が「làm nông tử tế(誠実な農業)」と評したその経営は、ドラゴンフルーツ一本足からバナナ・養殖・ヤシの多品目へと軸足を移し、いまは小規模なエコツーリズムまで視野に入れている。ベトナム産ココナッツを原料に使う日本の食品事業者にとって、この一農園の歩みは「顔の見える生産者」を考える手がかりになる。

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右手を失った兵士が、半世紀かけて築いた畑

農園主のドアン・チュン・ゴック氏は、障害等級3/4の傷痍軍人である。11歳で解放戦線の連絡員となり、17歳で特殊部隊の兵士となった。1974年10月、爆発事故で右手を失い左脚にも重傷を負う。除隊後の1976年、わずか2サオ(約720平方メートル)の土地でウリ科の野菜づくりから農業を再開した。中古農機の修理・販売で元手を蓄えながら耕地を広げ、2010年ごろにはドラゴンフルーツへ本格転換。VietGAPとGlobalGAPの認証を取得し、輸出向けの産地へ育て上げた。

Dân Việtによれば、最盛期のドラゴンフルーツは8ヘクタールで年商30億ドン(1円=約170ドン換算で約1,760万円)を超えた。ただし主力を一品目に集中させる経営は、価格変動や病害のリスクをそのまま背負うことになる。ゴック氏はその後、栽培をバナナや養殖、そして矮性ヤシを含む多品目へと組み替えていった。過去の経歴も収量数値も本人取材に基づく報道値であり、ヤシの品種名や本数は記事に明示されていない。

一品目集中から循環型の多品目へ

現在の農園構成は、南米種バナナ4ヘクタール、養殖池と多品目果樹を含む1.2ヘクタール超という組み合わせだ。池では魚を育て、その周囲に果樹を配し、矮性ヤシもこの区画で実をつける。魚の養殖と果樹を組み合わせる設計は、水と有機物を園内で回す循環型農業の発想に近い。報道は化学資材の具体的な削減量までは伝えていないが、VietGAP・GlobalGAPという認証の下地と、単作を避けてリスクを分散する構図は読み取れる。

矮性ヤシは樹高が低く、収穫や管理の手間が通常のトールタイプより軽い。台風や強風で倒れにくく、実がなり始めるまでの年数も短いとされ、小規模な家族経営や観光農園と相性がよい。ゴック氏が「trang trại mini(ミニ農園)」のエコツーリズムを掲げるのも、この扱いやすさと無縁ではないだろう。

10億ドル品目に育ったベトナム産ココナッツ

ゴック氏の一区画にすぎないヤシだが、その背後にはベトナムのココナッツ産業全体の伸びがある。ベトナム産ココナッツはここ数年、鮮果の主要輸出国向け解禁が進み、業界では輸出額10億ドル規模をうかがう品目へと存在感を増してきた。担い手はメコンデルタの大産地だけでなく、ドンナイのような多品目農家にも広がっている。

供給側の環境は必ずしも平穏ではない。当メディアが以前伝えたとおり、干ばつと病害でベトナム産ココナッツの農家価格は1ダース18〜21万ドンまで高騰し、原料コストの読みにくさが増している。一方で加工投資は続き、メコンデルタでは2,390万ドルを投じたココナッツ加工の第2工場が動き出した。原料としての多様化も進み、香料を使わずに芳香を出すパンダンココナッツのように、品種や香りで差をつける動きも出ている。

データで見る農園の姿

報道で確認できた数値だけを、農園の輪郭として並べる。ヤシ単体の収量・収入は公表されていないため、あくまで経営全体の規模感として読んでほしい。

区画・作物 規模 備考
南米種バナナ 4ヘクタール 現在の主力作物のひとつ
養殖池+多品目果樹(矮性ヤシ含む) 1.2ヘクタール超 魚と果樹を組み合わせた循環区画
ドラゴンフルーツ(過去の主力) 8ヘクタール VietGAP・GlobalGAP取得、年商30億ドン超
再開時の耕地 2サオ(約720㎡) 1976年、ウリ科野菜から出発

1円=約170ドンで換算すると、ドラゴンフルーツ期の年商30億ドンは約1,760万円にあたる。矮性ヤシの数字は含んでいない。

現地と業界はどう見るか

ひとつは、担い手の多様化という受け止めだ。ココナッツをメコンデルタの専業大産地だけに頼るのではなく、ドンナイのような多品目農家が加わることは、産地全体のすそ野を広げる。当メディアが伝えた同じドンナイ省でヤマアラシ養殖を軌道に乗せた事例と同様、この地域には一品目に依存しない複合経営の土壌がある。

もうひとつは、認証と物語の両立という視点だ。VietGAP・GlobalGAPを取得しながら傷痍軍人の再起という背景を持つ農園は、書類上の適合と、人に語れる来歴の双方を備える。産地ブランドを組み立てる地元にとって、こうした農家は発信の核になりやすい。

三つ目は、規模の限界への冷静な見方である。矮性ヤシの区画は1.2ヘクタール超の複合区画の一部にすぎず、単独で大口の輸出量を賄える規模ではない。安定調達を求める側からは、こうした農園は「量の担い手」ではなく「質と物語の担い手」として位置づけるべき、という声が出やすい。

日本のココナッツ原料調達への示唆

日本の食品事業者がベトナム産ココナッツを原料に使う場面は、ココナッツミルクやウォーター、ドライ加工、菓子・飲料の副原料など幅広い。多くは大口の加工原料としての取引で、価格と数量の安定が最優先になる。その意味で、ゴック氏の農園を一次原料の主力サプライヤーと見るのは現実的ではない。

むしろ活きるのは、産地ストーリーを添えたい商品開発の局面だ。傷痍軍人が半世紀かけて築いた循環型農園という背景は、贈答向けやプレミアム帯のドライ製品、あるいはトレーサビリティを打ち出す商品で差別化材料になりうる。日本側が取るべき手順は明快で、量は大産地や加工工場から確保しつつ、こうした「顔の見える生産者」は限定ロットや共同開発の相手として別枠で押さえることだ。認証の有無、収穫時期、実際に出荷できる数量を、輸出可能な単位に落として一件ずつ確認する作業が前提になる。

業界への波及

この農園が示すのは、ベトナム農業が「単作で稼ぐ」段階から「組み合わせでリスクを散らす」段階へ移りつつあるという流れだ。ドラゴンフルーツの価格が振れるたびに畑ごと沈むのではなく、バナナ・養殖・ヤシへと収入源を分散させる。日本の調達側にとっては、同じ農家から複数品目を、時期をずらして引ける可能性が生まれる。ココナッツだけでなくバナナやドライフルーツまで含めて、一つの産地・一つの生産者との関係を長期で設計する発想が、今後の交渉で効いてくる。

実用情報

ベトナム産ココナッツの調達を検討する際は、次の点を押さえたい。第一に、農家価格が干ばつや病害で大きく動くため、契約時に価格改定条項を入れておくこと。第二に、鮮果とドライ・加工品では輸出手続きも検疫要件も異なるため、狙う製品形態を先に固めること。第三に、小規模農園を相手にする場合は、VietGAP・GlobalGAPなどの認証書と、直近の出荷実績を書面で確認すること。ドンナイ省はホーチミン市に近く物流の便がよいため、産地訪問やサンプル取り寄せの起点としても動きやすい。

まとめ

右手を失った傷痍軍人が半世紀をかけて築いた循環型農園は、矮性ヤシを一つの象徴に、ベトナム農業の担い手多様化を映している。ヤシ単体の数量は小さくても、認証と物語を併せ持つ生産者は、日本のプレミアム原料調達で確かな居場所を持つ。量は大産地から、物語はこうした農家から。二つの調達ルートを意識して設計することが、ベトナム産ココナッツを扱う日本の事業者にとって現実的な打ち手になる。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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